次の記事:大井川知事「記憶一切ない」

納豆菌 コイの夏バテ予防 茨城県とタカノフーズ共同研究 ストレス軽減効果確認

コイの飼育試験の様子(県水産試験場内水面支場提供)
コイの飼育試験の様子(県水産試験場内水面支場提供)
凍結・乾燥した納豆菌「S-903株」(右)とコイの餌(県水産試験場内水面支場提供)
凍結・乾燥した納豆菌「S-903株」(右)とコイの餌(県水産試験場内水面支場提供)


茨城県水産試験場内水面支場(行方市)と納豆メーカー大手のタカノフーズ(本社同県小美玉市)の共同研究で、納豆菌が水温上昇によるコイのストレスを緩和させる働きを持つことが分かった。茨城県はコイの生産量全国1位を誇るが、近年、地球温暖化による高水温化で成長不良などが確認されている。実用化されれば〝夏バテ〟の予防・改善が期待される。

ストレス軽減効果が確認されたのは、同社が特許を持つ納豆菌「S-903株」。同支場での実験で、コイにとって快適な状態から、水温を少しずつ上げてストレスを与えた場合、事前に納豆菌株を入れたかどうかで成長などに差が出るかを調べた。

研究では、コイを6匹ずつ入れた水槽10個を用意。まず全ての水温を23度に設定し、半数の5個に凍結・乾燥したごく少量の菌株を混ぜた餌を7日間与えた。残りは通常の餌を与えた。その後、菌株を投与した水槽と投与していない水槽をペアとし、それぞれ23度、26度、28度、30度、32度に設定して5日間飼育した。最後に体重を測ったところ、菌株を投与されたコイは、生存が危惧される28度や30度の高水温下でも、体重減少が抑制されることが分かった。

特に差が顕著だったのは、水温28度。菌株を与えられなかったコイが計22・49グラム増だったのに対し、与えられたコイは計47・25グラム増と、成長差は約2・1倍になった。さらに高温の30度では、菌株を与えられなかった水槽のコイは計2・33グラム減ったが、与えられたコイは計6・12グラム増え、体重を保った。

ストレスを感じた際に分泌されるホルモンの一種「コルチゾール」の血中濃度も、菌株を与えられたコイの方が低かった。エネルギー代謝に関係する遺伝子因子が多く発現しており、ストレス軽減に寄与していた可能性があるという。

実用化へ向け、研究責任者の丹羽晋太郎同支場増養殖部長は「夏バテの原因の一つが明らかになった。コイ養殖発展のため引き続き研究していく」と語った。タカノフーズ経営企画部門の古川牧雄新規事業リーダーは「納豆菌のポテンシャルの高さに驚いている。さらなる活用方法を模索している」と話した。

研究は1月に開かれた、筑波研究学園都市の研究者らが最新の研究を披露する「SATテクノロジー・ショーケース」で総合得点賞を受賞した。

茨城県は霞ケ浦や北浦での養殖が盛ん。2021年の生産量は全国1位の749トンで、国内生産量の約36・3%を占める。近年は夏季の霞ケ浦の表層水温が35度を超える日が増えており、コイの餌の食いつきが悪くなるなど生産が不安定になっていた。

最近の記事

茨城の求人情報

全国・世界のニュース