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茨城・神栖市、産業医育成に力 工場や病院、実地学習 研修後の地域定着期待

昨年開かれた産業医の基礎研修会=神栖市大野原(市提供)
昨年開かれた産業医の基礎研修会=神栖市大野原(市提供)


茨城県神栖市は、企業が集積する地域の特色を生かした産業医育成に力を入れている。産業医の資格を得るための基礎研修会開催を働きかけたほか、市内の病院に勤務しながら、資格取得後の実務経験を養うプログラムも用意している。病院や医師本人への手当ても充実しており、新規で就業する医師が増え、医師不足解消の一助となっている。

産業医は労働者の健康管理に対し、専門的立場から指導や助言を行い、従業員50人以上が働く事業所では産業医を選任する必要がある。医師になってから取得する資格で、医師のおおよそ3人に1人が持つ資格だが、県内ではこれまで資格を得るための研修会がほとんど開かれていなかった。

そこで、市は「多くの企業が立地したフィールドを生かした研修ができないか」と産業医養成に着目した。県医師会と地元鹿島医師会に協力を呼びかけ、2020年9月に1回目の基礎研修会を実現させた。昨年度までに計52回の開催を重ね、昨年度は全国から延べ906人が参加した。土日開催で、必要な50単位を半年で取得でき、何度も訪れることで、地域の実情を知ってもらうのも狙いの一つだ。

神栖市の基礎研修会は、実際に工場に足を運んで実地研修ができるのが大きな強みだ。市地域医療推進課は「工場が集積する市ならではの取り組み」と自負。昨年度の協力企業は12社と21年度から倍増し、定着が進んでいる。同課によると、参加者は作業環境を体験したり、有害業務をどう管理しているかなどを学び、好評を得ているという。

しかし、これだけでは医師確保にはつながらない。そのため、市は昨年度、市内の白十字総合病院と神栖済生会病院に神栖産業医トレーニングセンターを開設。市内で勤務しながら、経験豊富な指導医の下で実務研修が受けられる3年間のプログラムを用意した。

さらに、公衆衛生に関連する社会医学系専門医の資格を取得できるプログラムも用意。本年度だけで6人が新規に就業した。このほか、市は研修手当やプログラムを学ぶ専攻医の雇用経費に対する補助も手厚く行っている。

一方で、プログラム終了後の医師の地域定着も視野に入れる。同トレーニングセンターの統括指導医を務める田中完医師によると、鹿島臨海工業地帯周辺にある企業の産業医の3~4割は地域外の医師という。しかし、「企業にとっては産業医は身近にいてほしいというのが本音。地域の産業医を欲している」と実情を説明する。

産業医の役割について田中医師は「未病の時に手を打つこと」と強調する。さらに将来的には産業医が地域に定着することで、医療資源不足の解消につながることが期待される。藤枝昭司市医療対策監は「今後も、産業都市にふさわしい医療体制づくりに一層努めていきたい」としている。

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