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聴覚障害者、画面で「会話」 電話リレーサービス 茨城でも好評 手話通訳者サポート

電話リレーサービスを利用する今井利幸さん=水戸市内
電話リレーサービスを利用する今井利幸さん=水戸市内


聴覚障害者などがテレビ電話と通訳者を介して健常者と通話できる「電話リレーサービス」が利用者に好評だ。2020年12月に施行された電話リレー法に基づき始まった公的インフラで、全国で1万2千人余りが登録。意思疎通の時間短縮に役立っているが、サービス内容が十分に知られていないなど課題も少なくない。

同サービスは、聴覚や発話に困難のある人と健常者との会話を、通訳オペレーターがつなげる。24時間利用可能で、警察や消防など緊急時の連絡もできる。国から指定を受けた一般財団法人「日本財団電話リレーサービス」(東京)が事業を実施している。

県聴覚障害者協会(水戸市)などによると、サービス導入前の連絡手段は、メールやファクスが中心。返信に時間がかかり、代理人に電話を頼む場合は予定の調整が必要だったという。

サービス利用時は、スマートフォンなどにインストールしたアプリを起動し、画面を通じて通訳者と手話で対話。通訳者は健常者と音声通話し、聴覚障害者と「会話」する仕組みだ。

茨城県神栖市の高木茂晴さん(53)は「すぐに返事をもらえるし、会話できるのが便利」と利便性向上を実感。義父が体調不良で倒れた際は、同サービスの緊急通報機能を使って救急車を呼んだという。

同県ひたちなか市の今井利幸さん(54)は、勤務先への連絡や市役所への相談、飲食店の予約で利用している。「既に生活に欠かせないツール。導入前は手話のできる人に電話をお願いしていたが、今はいつでも連絡ができるようになった」と笑顔を見せる。

開始から約2年が経過し、聴覚障害者などの生活インフラとして定着しつつあるサービスだが、最大の課題は、サービスそのものの認知不足だ。

今井さんが、サービスを利用して病院に連絡したところ、相手がサービスを知らなかったとみられ、「すぐに電話を切られてしまった」と明かす。また、同協会によると、経験のない電話利用に心理的な負担があるためか、サービス利用者は県内の聴覚障害者約8千人の半数以下にとどまっているという。

認知不足の一方、現在の利用者からは、世代や地域で異なる手話に対応する地域別窓口の開設や通訳者数の充実などサービス向上を求める声が上がる。

同協会の吉沢馨会長は「周囲に繰り返し説明していく必要がある」として理解促進を図りたい考え。ただ、サービス向上については、専門性の高い手話通訳が不足しているため「解決には時間がかかる」との認識を示した。

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