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夜空つなぐ群像劇 直木賞作家・辻村さん「この夏の星を見る」 茨城県立土浦三高を取材 コロナ禍の中高生描く

コロナ禍での県内高校生らの姿を描いた小説「この夏の星を見る」を執筆した辻村深月さん=東京都内
コロナ禍での県内高校生らの姿を描いた小説「この夏の星を見る」を執筆した辻村深月さん=東京都内
辻村深月さん作『この夏の星を見る』
辻村深月さん作『この夏の星を見る』
自作の望遠鏡を整備する生徒たち=県立土浦三高
自作の望遠鏡を整備する生徒たち=県立土浦三高


直木賞作家の辻村深月さん(43)が、新型コロナウイルス禍での茨城と東京、長崎の中高生たちを題材にした小説を出版した。生徒たちが社会や人間関係の変化に悩みながらも、オンラインの天文活動を通じて新たな仲間と出会い、同じ夜空を見上げてつながる群像劇。作中には茨城県立土浦三高発祥の天体観測競技会も登場している。

辻村さんは山梨県出身。2004年に「冷たい校舎の時は止まる」でデビュー。12年「鍵のない夢を見る」で直木賞、18年「かがみの孤城」で本屋大賞を受賞し、若い世代を中心に人気を集めている。

小説のタイトルは「この夏の星を見る」(KADOKAWA)。物語は、新型コロナが猛威を振るう20年の茨城と東京、長崎の五島列島を舞台に繰り広げられる。

主人公の一人として登場する亜紗(あさ)は「茨城県立砂浦第三高校」の2年生という設定。コロナ禍で天文部の活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、亜紗たち部員は「これをやったと胸を張れるものを。夏を迎え撃つ」と、自作の望遠鏡で制限時間内により多くの星を捕捉する催し「スターキャッチコンテスト」の開催を模索する。

このコンテストは、県立土浦三高で15年に生まれた実際の天体観測競技会。作品では、さまざまな悩みを抱えた中高生たちが、コンテストをきっかけに出会い、オンライン会議を駆使して思い出をつくっていく。

中高生の修学旅行や学校行事、スポーツ大会などが中止になったコロナ禍だが、辻村さんは「大人から子どもに使われる『失われた』という言葉に抵抗があった。18歳、14歳の彼らが過ごした1年間とその経験をなかったように言われているようで嫌だった」と執筆のきっかけを打ち明けた。

一方、完成した作品にはかつて子どもだった大人にも通じるものがあるはずと強調。「コロナ禍の天文部の話だけれど、自分の経験と似通っている部分がある小説になった。そういう部分を見つけてもらえたら」と語った。

■科学部生徒「うれしい」

辻村深月さんと茨城県との縁をつないだのは、茨城県立土浦三高教諭の岡村典夫さん(61)。辻村さんは2010年、全長10メートル超の望遠鏡を製作した同県立水戸二高の活動をテレビで見て同校へ連絡。当時、同校教諭だった岡村さんと知り合った。

ただ、予定していた取材は11年の東日本大震災で中断。辻村さんは作品執筆に当たって岡村さんと連絡を取り、土浦三高科学部の生徒にも取材したという。

物語の登場人物のように、岡村さんも科学好きの裾野を広げようと長年取り組む。水戸二高勤務時には、地学部員の生徒とともに、車いすを使用する生徒の目線に合わせた望遠鏡を製作。土浦三高でも生徒のオリジナル望遠鏡の製作を後押ししている。

作中に登場する「スターキャッチコンテスト」は15年、県内の科学系の部活動による合同冬合宿で企画され、土浦三高で始まった競技会。各校生徒が望遠鏡を自作するところから始めるユニークな大会だ。

小説に同コンテストが取り上げられたことについて、3年、野上幸杜さん(17)は「天文関連の部活動はあまり取り上げられないのでうれしい」と笑顔。同、神長澪さん(17)は「共感できるところが多く面白かった。小説の言葉に背中を押してもらえた」と声を弾ませた。



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