茨城・日立市が代替避難路 原発事故 計画で渋滞想定
茨城県日立市は、日本原子力発電東海第2原発(同県東海村白方)の重大事故に備えた避難計画づくりで、高速道路を使う基本の避難ルートとは別に、地区ごとに複数の代替経路を設定する。国道6号などで慢性的な渋滞が発生している市特有の交通事情を踏まえた対応。3月に策定予定の計画に、具体的な代替ルートの路線を盛り込む。
同市は市域全体が原発から半径30キロ圏に収まり、計画では福島県の17市町村に避難する。市人口の約17万人のうち、5キロ圏内(PAZ)の約2万3500人は即時避難し、5~30キロ圏内(UPZ)の約14万4500人はまず屋内退避する。
移動手段は原則マイカーで、避難経路は常磐自動車道が基本。市西部を除く各地区の住民は、日立南太田インターチェンジ(IC)や日立中央IC、日立北IC、高萩ICから、地区別に定められた福島県内の「避難中継所」へ向かう。
一方、計画に関して市が昨年実施した住民アンケートでは、最も多い5割強が渋滞対策を最も重要な課題に挙げ、住民を交えた市原子力安全対策懇談会でも、「円滑に避難できるのか最大の懸念」と不安の声が上がっていた。
このため市は、渋滞緩和や地震などで道路が損壊した場合に備え、避難の単位である市内23地区ごとに複数の代替経路を定める。幹線道路を中心に、津波を避ける山側ルートなどの路線名を3月に策定する計画の資料編に盛り込む。
すでに公表済みの計画の骨子では、5キロ圏内の坂下地区について、西側に迂回(うかい)して茨城県常陸太田市や福島県矢祭町を通る国道349号ルートのほか、国道6号や県道日立いわき線の3路線を示している。
市は「災害によっては代替経路も使えない可能性があり、その際は計画外のルートで避難中継所を目指してほしい」としている。
原発に近い日立市では、事故が起きた際に同じ市内でも距離に応じて避難行動が異なるのが特徴だが、十分に周知が進んでいない。市は計画策定後、説明会や訓練を通して周知を図るとしている。