ライドシェア、定着いかに 運転手不足対応 4月解禁 茨城県内 タクシー業界は反対
一般ドライバーが自家用車を使って有償で客を運ぶ「日本版ライドシェア」が4月に部分解禁される。タクシーや運転手不足に対応するのが狙いだ。需要の多い観光地や都市部が主な想定エリアだが、地方でも地域や時期、時間帯に限って認められる。茨城県内では交通空白地で一般運転の輸送サービスが導入された例がある。一方、タクシー会社からは安全面などを理由に導入反対を表明する動きも出ており、定着へ向けた課題は多い。
■高齢者の足
常陸太田市国安町の歯科医院前。外出支援サービスのワゴン車が到着し、運転手の男性が高齢男性を助手席に乗せ、自宅に向かって出発した。道路運送法上は、同市高倉地区の有志「高倉地域づくりの会」が運行主体となる「公共交通空白地有償運送」。高齢者を支援するため、同会が2017年に始めた。
講習を受けた地元住民6人が、1種免許で運転。開始から6年半の間、無事故無違反を続けている。週1回の運行で、運賃は1回片道300円。多い時は1日8件の予約が入る。
制度は交通の便が悪い地域で、移動手段確保のため国が認めている。タクシー会社の管理下で進める日本版ライドシェアの先取りとも言えるが、佐川憲一郎会長は「地元の足、高齢者の足になっている」と話し、定着に自信を見せる。
■安全面懸念
「白タク」行為として原則禁止されているライドシェアの解禁について、国交省は審議会に制度案を示し、議論を進めている。背景にあるのは地域交通の担い手不足だ。制度案では、タクシー会社の管理を条件とし、2年ごとに更新が必要な国の許可制、原則キャッシュレス決済などが明らかにされた。
ただ県ハイヤー・タクシー協会は、安全面の懸念を理由に導入に反対する。プロ運転手と一般ドライバーの間に運転の質の差が出るためという。
つくば市にある大曽根タクシーの塚本一也社長は政府の進め方について「急ぎすぎている。もっと効率的な配車を考えた方がいい」と運転手不足に対応する考えを示す。同協会の服部透専務理事は「タクシー会社でライドシェアの乗務員を管理する場合、研修などはどうすればいいのか」と不安を口にする。
■地域ごとの仕組み
政府は、管理をタクシー会社以外も可能とする全面解禁についても議論を続け、6月までに方針を決める。服部専務理事は「全面解禁したら乗客の安全を確保できない」と危惧する。
交通計画などに詳しい筑波大システム情報系、岡本直久教授は「一番大事なのは、タクシー乗務員と同等の安全性」とし、「また、東京と地方では状況が違う。都市型とローカル型、それぞれに合ったシステムが必要だ。そのための検証をするべき」と提言する。