【エンタメ総合】
太郎次郎、“反省ポーズ”も6代目 伝統芸存続の危機も、“近代猿まわし”で挑む新たなエンタメ「夢はラスベガス」

おなじみ”反省ポーズ”をする太郎次郎


 猿まわし師の村崎太郎が主宰する「日光さる軍団」が来夏、日本一の動物エンタテインメント施設をオープンするべく走り出している。一昨年からのコロナ禍の影響で、70%以上の集客減・収入減となり、存続が危ぶまれる中、「千年の歴史を誇る日本の“猿まわし”芸を絶えさせないためにも新たな挑戦でこの危機を乗り越えたい」という思いがその原動力だった。村崎の“猿まわし”へのこだわり、そして、氏が目指す“自分たちにしかできない”動物エンタテインメントとは?



【写真】「反省ポーズ」を生み出した初代”次郎”から現在の六代目まで、44年にわたる太郎次郎の勇姿



■コロナ禍で7割以上減収の危機も、猿まわし再興のきっかけに転換「新たな挑戦を」



 ミュージシャンを目指していた1978年、17歳のときに、父親からの誘いを受け、"猿まわし"の世界に飛び込んだ村崎。おさるの次郎とコンビを組み、大道芸を皮切りに人気を集めると、80年代には次郎の「反省」ポーズが一世を風靡。テレビやイベントに引っ張りだこになるだけでなく、海外からもオファーが殺到。劇場を作れば最高時で年間、100万人以上を集客するほどの人気となり、父親とともに日本に途絶えていた"猿まわし"芸を見事復活、エンタテインメントとして昇華させた。2015年4月からは「日光さる軍団」を引き継ぎ、さらなる芸の進化に挑戦し、今年で太郎次郎として実に44年。村崎は近代“猿まわし”芸の普及に努め続けてきた。



 そんな中、「さるだけでなく、他の動物にも会える」をコンセプトに、新たなエンタテインメント施設の新設に乗り出したのは、コロナ禍がきっかけだった。栃木県日光市の「おさるランド」を拠点に全国で芸を伝え続けてきたものの、集客・収入が70%以上も減少。存続が危ぶまれる中、クラウドファンディングを利用して「新たな挑戦で、この危機を乗り越えていこう」と再興を決意。と同時に、陰りがさし始めていたおサルの人気復活も、村崎が新たな挑戦に賭ける大きな目的だった。



「以前は動物の人気ランキングでおさるさんは10位以内に入っていたんですが、今は20位にも入らない。おそらくテレビなどでいろいろな動物が紹介されるようになったからだと思うのですが、人気が落ちている中、もう1回、みなさんに振り向いてもらうためにはどうしたらいいか。考えた結果、日光にはいろいろな動物と触れ合う施設がありませんし、広くたくさんの動物たちを仲間に入れて、いろいろな動物と接する楽しさを味わっていただきながら、おさるさんの魅力も再発見していただけるようなエンタテインメント施設が作れればと考えました」(村崎太郎/以下同)



 その根底には、「千年の歴史を誇る日本の"猿まわし"芸を絶えさせないため」という強い思いもあった。



■猿まわしは動物虐待? 動物エンタメにつきまとう愛護の視点「より深く考えなければならない」



 “猿まわし”の起源は古く、3000年以上前、エジプトの王からインド、中国に伝わり、日本には約千年前に仏教とともに入って来たと伝えられている。今もインドでは、路上でさるのダンスを見せたり、中国ではさるが曲芸を披露するなど、その文化は残っているが、村崎のように、漫才からコント、芝居と高度な芸にまで成長させているのは日本だけ。その理由を、村崎は「日本のさるは尻尾が短くて、短足で、立った姿勢がわりと日本人の体形に似ていたことから、擬人化しやすい動物だった」と説明する。



 その特徴を活かして、日本の“猿まわし”芸をストーリー性のあるショーとして発展させ、舞台芸術にまで昇華させた村崎。その功績は、文化庁芸術祭賞を動物芸で初めて受賞、アメリカ連邦議会から「日本伝統芸」の称号を授与されるなど称えられた。



 猿まわし師として、さると共にエンタテインメント性の高い芸を追求し、常に新しい話題を生み出し、道を切り開いてきて40年以上。そんな村崎だからこそ、新たな施設づくりでこだわっているのは「今までの動物園にないことをやる」だ。



「ただ動物を観るだけでなく、うちならではの発想を加えて、お笑いも含めた何かしらのエンタテインメントを混ぜ、ショーとして展開したいと考えています」



 そのために、今は、様々な動物について勉強中なのだという。



「それぞれがどういう動物かをきちんと把握していなければ、エンタメは考えられませんからね。例えば、カビパラは暖かいのが好きで、水が好きと知ったので、ならば、お客さんに温水シャワーをかけてもらうのはどうだろうとか、その動物について知れば、その動物が喜ぶことは何かがわかり、アイデアがどんどん湧いてきます。動物を観るだけでなく、触れ合いたいというお客さんも多いと思うので、そういう場もたくさん作りたいと考えています。都内と違って、日光なら、広大な敷地の中でそれができますからね」



 この発言からもわかるとおり、村崎が動物エンタメを考えるうえで大事にしているのは、常に動物の視点で、動物が喜ぶことをすることだ。昨今、動物を使ったアトラクションや動物を観光の道具に使うことが、動物虐待として海外を中心に激しい批判の対象になるケースが増えているが、村崎の芸の土台あるのは、動物の立場を尊重すること。村崎を支えるモンキーエンタープライズの笹井温隆氏は言う。



「動物エンタメというと、動物に対してちょっとまずいことをするのではないかとよく言われますが、村崎の場合はそれは一度もありません。というのも、村崎は、基本的に、自分が動物の世界に入るというやり方。おさるのルールで、常におさるの立場を尊重して考えているので、嫌がることは絶対しませんからね」



 村崎も、「例えば、おさるさんは集団の規律に背いた相手に対して噛みつくんです。なので、私もそのシステムに乗って、おさるさんに制裁を加えるときには噛みつきますし、彼らは私の行為を理解してくれています。でも、見る人によっては人間がおさるさんを噛むなんてけしからん、ということになりますよね。果たして、それを虐待と言うのか。これからの時代、動物福祉に関しては、より深く、しっかりと考えていかなければならないと思っています」と話す。



■シェイクスピアにM-1まで猿まわしで実現「世界の人が度肝を抜くようなショーを」



 



 そして今、新たな動物エンタメ施設の新設に力を注ぐ中、村崎はさらに大きな目標も立てている。



「1992年にアメリカで公演した際、世界で戦うべく、またここに戻って来るぞと誓ったんですが、おさるさんだけでなく、他の動物たちも仲間に加えることでもっと広くダイナミックなショーが作れ、エンタテインメントとして世界に提示できると思っています。ですから、ラスベガスで、世界の人が観たことがない、度肝を抜くようなショーがやりたいですね。私が健在である限り、いつか実現したいと考えています」



 19年には、太郎次郎40周年を記念して、悲劇なのに笑いが起こる『さる軍団のハムレット』の公演も成功させている。コロナが終息した後、さる軍団が演じるシェイクスピアを世界で見られる日も近い。



 これまで育ててきた弟子は100人以上、今は15人の門下生を抱えている村崎。次郎も現在6代目だが、「“太郎次郎”の名を受け継ぐ弟子はいまだ見つかっていない」と言うので、どんな人材がいいかと聞いたところ……。



「動物が好きな子より、どちらかというとM-1グランプリで優勝できなかったとか、芸人で売れなかった子に、相方変えてうちでお猿さんとやらないか? って言いたいので、そう書いておいてください(笑)」



 実は昨年のM-1グランプリには、日光さる軍団から「ともきりき」という人間とさるのコンビが出場しており、2年連続で1回戦を突破している。今年優勝した錦鯉の決勝は、さるに長谷川が翻弄されるネタであったが、近い将来、本物のさるがM-1グランプリをかき乱す瞬間が来るかもしれない。



(取材・文/河上いつ子)

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