【映画】
ハンガリーの映画監督タル・ベーラ、観客に「目を見開いて、心を開いて」とメッセージ
1994年に手がけた全150カット、上映時間7時間18分の伝説的傑作『サタンタンゴ』や、56歳という若さで映画監督からの引退を表明した最後の作品『ニーチェの馬』などで知られるハンガリーのタル・ベーラ監督による初期傑作群3作品を、4Kデジタル・レストア版で特集上映する「タル・ベーラ 伝説前夜」が29日より、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかにてスタートする。
【動画】「タル・ベーラ 伝説前夜」予告編+『ファミリー・ネスト』本編映像
上映されるのは、『ダムネーション/天罰』、『ファミリー・ネスト』、『アウトサイダー』の3作品。いずれも日本で初めて劇場公開される。タル・ベーラ監督のオンラインインタビューが到着した。
――今回、22歳で手がけたデビュー作『ファミリー・ネスト』が45年の時を経て、日本で初めて劇場公開されます。そのお気持ちをお聞かせください。
【タル・ベーラ】製作当時は、ただ怒りに満ちていました。社会全体に対して、人々の置かれている最悪な状況に対して憎んでいました。映画づくりについてはほとんど何も知りませんでしたが、映画が大好きだったから、お金も何もなかったけど、当時の人々が置かれているリアルな生活を見せられるものを、ただシンプルに作りたかった。
映画製作をはじめたきっかけは、船舶工場で働いていて、いつもみじめな労働者階級の人たちと身近に接していたことです。私は彼らの日常や、よりよい生活を求めて努力する姿を描きたかったのです。
『ファミリー・ネスト』は、5日間で撮影し、1万ドル程度の予算でした。キャスティングしたのは映画を始める前から知っている人たちです。こういう人たちが身近にいたのです。
――社会問題を扱う初期の作風からスタイルが変化していったのは何故でしょうか?
【タル・ベーラ】映画を撮り始めた当初は、社会的な怒りに満ちていました。社会がいかに酷いかを伝えたかったのです。その後、問題は社会的なものだけでなく、もっと深いところにあるのだと理解するようになりました。それは存在論的な問題、さらには宇宙論的な問題なのです。それが、私が理解しなければならなかったことであり、映画のスタイルが変化した大きな理由です。
――あなたの初期傑作群を初めて劇場でみる観客に一言いただけますか?
【タル・ベーラ】目を見開いて、心を開いて、この作品を見ていただきたい。そしてできれば、楽しんでください。
■上映作品
『ダムネーション/天罰』(1988年/121分/モノクロ)
『サタンタンゴ』原作者であり、本作以降すべての作品で共同作業を行う作家クラスナホルカイ・ラースローがはじめて脚本を手がけた。さらに「秋の暦」から音楽を手がけるヴィーグ・ミハーイが本作にも携わり、”タル・ベーラ スタイル”が確立された記念碑的作品。罪に絡めとられていく人々の姿を「映画史上最も素晴らしいモノクロームショット」(Village Voice)で捉えている。
『ファミリー・ネスト』(1977年/105分/モノクロ)
わずか22歳で手がけた鮮烈な監督デビュー作。住宅難のブダペストで夫の両親と同居する若い夫婦の姿を、16ミリカメラを用いてドキュメンタリータッチで撮影した。不法占拠している労働者を追い立てる警察官の暴力を撮影して逮捕されたタル・ベーラ自身の経験を基にしている。ハンガリー批評家賞の新人監督賞、さらにマンハイム国際映画祭でグランプリを獲得した。
『アウトサイダー』(1981年/128分/カラー)
ブダペストの映画芸術アカデミーに在籍中に製作された長編2作目。社会に適合できないミュージシャンの姿を描いた、珍しいカラー作品。タル・ベーラは本作に対し、「当時のハンガリー映画に映っているのは嘘ばかりだった。本当の人々の姿を撮りたかった。これは映画に対するアンチテーゼだ」と語っている。
【動画】「タル・ベーラ 伝説前夜」予告編+『ファミリー・ネスト』本編映像
上映されるのは、『ダムネーション/天罰』、『ファミリー・ネスト』、『アウトサイダー』の3作品。いずれも日本で初めて劇場公開される。タル・ベーラ監督のオンラインインタビューが到着した。
――今回、22歳で手がけたデビュー作『ファミリー・ネスト』が45年の時を経て、日本で初めて劇場公開されます。そのお気持ちをお聞かせください。
【タル・ベーラ】製作当時は、ただ怒りに満ちていました。社会全体に対して、人々の置かれている最悪な状況に対して憎んでいました。映画づくりについてはほとんど何も知りませんでしたが、映画が大好きだったから、お金も何もなかったけど、当時の人々が置かれているリアルな生活を見せられるものを、ただシンプルに作りたかった。
映画製作をはじめたきっかけは、船舶工場で働いていて、いつもみじめな労働者階級の人たちと身近に接していたことです。私は彼らの日常や、よりよい生活を求めて努力する姿を描きたかったのです。
『ファミリー・ネスト』は、5日間で撮影し、1万ドル程度の予算でした。キャスティングしたのは映画を始める前から知っている人たちです。こういう人たちが身近にいたのです。
――社会問題を扱う初期の作風からスタイルが変化していったのは何故でしょうか?
【タル・ベーラ】映画を撮り始めた当初は、社会的な怒りに満ちていました。社会がいかに酷いかを伝えたかったのです。その後、問題は社会的なものだけでなく、もっと深いところにあるのだと理解するようになりました。それは存在論的な問題、さらには宇宙論的な問題なのです。それが、私が理解しなければならなかったことであり、映画のスタイルが変化した大きな理由です。
――あなたの初期傑作群を初めて劇場でみる観客に一言いただけますか?
【タル・ベーラ】目を見開いて、心を開いて、この作品を見ていただきたい。そしてできれば、楽しんでください。
■上映作品
『ダムネーション/天罰』(1988年/121分/モノクロ)
『サタンタンゴ』原作者であり、本作以降すべての作品で共同作業を行う作家クラスナホルカイ・ラースローがはじめて脚本を手がけた。さらに「秋の暦」から音楽を手がけるヴィーグ・ミハーイが本作にも携わり、”タル・ベーラ スタイル”が確立された記念碑的作品。罪に絡めとられていく人々の姿を「映画史上最も素晴らしいモノクロームショット」(Village Voice)で捉えている。
『ファミリー・ネスト』(1977年/105分/モノクロ)
わずか22歳で手がけた鮮烈な監督デビュー作。住宅難のブダペストで夫の両親と同居する若い夫婦の姿を、16ミリカメラを用いてドキュメンタリータッチで撮影した。不法占拠している労働者を追い立てる警察官の暴力を撮影して逮捕されたタル・ベーラ自身の経験を基にしている。ハンガリー批評家賞の新人監督賞、さらにマンハイム国際映画祭でグランプリを獲得した。
『アウトサイダー』(1981年/128分/カラー)
ブダペストの映画芸術アカデミーに在籍中に製作された長編2作目。社会に適合できないミュージシャンの姿を描いた、珍しいカラー作品。タル・ベーラは本作に対し、「当時のハンガリー映画に映っているのは嘘ばかりだった。本当の人々の姿を撮りたかった。これは映画に対するアンチテーゼだ」と語っている。