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子どもの早期英語教育は「日本語に悪影響ない?」、親世代の不安に『シナぷしゅ』監修の東大大学院教授が見解

子どもの英語教育に悩む親は多い(C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ


 小学校の英語教育が必修化され、全国で3年生から外国語活動が実施されている(自治体により変動)。eltha(エルザ)by ORICON NEWSによるモニター調査でも、実に73.0%の親が、子どもに「未就学期から英語に触れさせている」と回答。その一方で、ネットやSNSでは「早くから英語を学ばせて、日本語まで不自由にならないか?」と懸念する声もある。親世代が感じる早期英語教育への葛藤について、乳幼児番組『シナぷしゅ』(テレビ東京系)を監修し、「赤ちゃん学」「発達認知神経科学」の第一人者である東京大学大学院・開一夫教授に見解を聞いた。



【調査結果】親「一体なにが正解なのか…」英会話教室?教材? 未就学の子どもの英語体験1位



■ネットやSNSの都市伝説? 「日本語まで不完全になり学習に影響が…」



 英語の早期教育がさかんになる中で、「いつから何を始めたらいいのか?」は親世代の大きな関心ごとの一つ。eltha by ORICON NEWSが高校生以下の子どもがいる男女 947名のモニターに実施した調査(2022年6月実施)では、「英語教育は早いほどよい」という親が多数派を占めたが、一方で「ネットやSNSで『赤ちゃんのうちから英語を学ばせたら日本語まで不完全になり、その後の学習に影響が出る』という意見も聞いた」といった不安の声も上がっている。



 英語の早期教育にデメリットはあるのか、ないのか。乳幼児番組『シナぷしゅ』(テレビ東京系)を監修し、「赤ちゃん学」「発達認知神経科学」の第一人者である東京大学大学院・開一夫教授はこのような見解を示す。



 「世界全体ではモノリンガル(単一言語)の国のほうが少なく、特にヨーロッパでは多くの子どもが2ヵ国語、3ヵ国語が周りにある環境で育ちます。かといって、ヨーロッパの子どもが勉強が苦手というわけではないですよね」



 開教授は東京大学大学院で、一般の赤ちゃんや子どもの協力のもと、さまざまな研究調査を行う「赤ちゃんラボ」を運営。ここでは、赤ちゃんが言語を獲得していくプロセスにおける「一事物一名称の制約 」についての研究を行ったこともあった。



 「『一事物一名称の制約』とは、『1つのモノには同一カテゴリーに属する名称しかつかない』という制約を指します。たとえば『犬』を『猫』とは呼ばないと、赤ちゃんは成長の中で習得してくわけですね。では『Dog』はどうか。『犬』という言語を認識している赤ちゃんに犬を指して『Dog』と呼んだら混乱するか? まだ研究を継続する必要がありますが、今のところ『日本語と英語の音韻体系は非常にかけ離れているため、混乱は少ない』という仮説を支持しています」



 開教授が監修を務める乳幼児番組『シナぷしゅ』にも、英語に触れられるコーナーがある。



 「意外なことに、乳幼児番組の中で英語が出てくると赤ちゃんはけっこう反応するんですよね。普段、パパやママが話しかけてくれる言葉(=日本語)とは異なる音韻体系に、『面白い』と興味を持つのかもしれません。もちろん短いコーナーだけで英語を習得できるとは思っていませんが、『日本語以外にも言語がある』ことを赤ちゃんが体感するのは十分意義のあることです」



 現在は、小学3・4年生が「外国語活動」、5・6年生が「教科」として、英語と触れ合う機会が持たれている。しかし、中学から英語を学んだものの習得できなかった親世代としては、「小3からでも遅いのでは」という懸念もある。



 「個人的には、小学校から中途半端に学ぶよりも、幼稚園や保育園から始めたほうが習得の効果はあると思います。特に音韻学習、つまり耳で音を聞き取って習得する能力は幼ければ幼いほど高く、たとえば6ヵ月の赤ちゃんのほうが大人よりも明確にLとRの発音を識別するという研究結果があります」



 とはいえ、前述の調査では「少し上の子を育てているお母さんたちが『結局、幼少期の英語教育は全部忘れる』と言っていて悩む」(東京都・40代女性)という声もあった。実際はどうなのか。



 「英語にまったく触れない環境に育っていれば忘れてしまうかもしれませんが、今は小学校で英語の授業があります。ただし、幼児期に習得した英語をその先も継続して生かせるかどうかは、お子さん自身が『英語は楽しい』と感じているかどうかが重要です」



 未就学児の英語教育の実施状況としては、「テレビの英語番組」が46.1%、「英語の絵本や教材」が27.5%などが上位を占めた。これらに効果はあるのか。



 「重要なのは内容です。たとえば映像で英語を学ばせようとしても、子どもが理解できないシーンやシチュエーションではなかなか習得につながりません。子どもは、生活や遊びの中で言語を習得していきます。朝起きたら『おはよう/Good morning.』、ご飯を食べる前には『手を洗いましょう/Wash your hands!』など、いわば実生活やなじみのあるシーンと組み合わせて英語を学んでいくのが理想的ではないでしょうか」



■単に動画を見せるだけでは効果薄、大事なのは子ども の興味と映像の作り方



 研究活動を通して多くの赤ちゃんや子どもと触れ合ってきた開教授は、早期教育について「親の押し付けはやめてほしい。子どもが楽しいのなら大賛成」と見解を示す。そして、こうした子ども側に立った視点、「赤ちゃん学」「発達認知神経科学」の観点から、実際に幼児向け英語教材のアドバイザーを務めるに至った。



 開教授がアドバイザーを務めた『Sanrio English Master』は、0~8歳から始められるの幼児向け英語教材であり、「英語を学ぶ」だけでなく「英語で学ぶ」をコンセプトにしているという。開教授が指摘しているように、他人と積極的にコミュニケーションする力や、個性の発露、子どもの自己肯定感を育むなど、知育の側面も盛り込む。



 これを開発したサンリオといえば、ハローキティをはじめとするキャラクターでおなじみだが、ここでは本教材のために開発されたオリジナルキャラクター・BUDDYEDDY(バディエディ) が採用されている。一見、広く愛されているハローキティやシナモロールのようなキャラクターをメインに据えたほうが良さそうに見えるが、オリジナルキャラクターを起用するには理由があるそうだ。



 「子どもがどんなものに興味を示し、目で追うか。オリジナルキャラクターであるBUDDYEDDY のデザインには、私の研究室で得られた知見を取り入れてもらいました。学びでも遊びでも保護者の好みを押し付けるのではなく、子ども自身が好きになれないと継続には結びつきません」



 教材の中には映像もあるが、ただ音声付きの動画を見せれば子どもが英語を理解するようになるのかといえば、そんなことはないという。前述のとおり、知育との組み合わせが大事なのはもちろん、もう一つポイントがある。それが“リップシンク”だ。



 「口の動きと声が連動するリップシンクは、言語の認識と習得に非常に重要です。世にキャラクターを使った英語教材はたくさんありますが、リップシンクがちゃんとできていないものがほとんど。サンリオ教材の中には英語をしゃべるぬいぐるみもあるのですが、それもちゃんとリップシンクさせています。これらはオリジナルキャラクターだから成せたワザで、ここはサンリオさん、頑張ってくれたなと思いましたね(笑)」



 とはいえ、赤ちゃんや子どもにとことん向き合い、研究を重ねる開教授だけに、今後への期待も大きい。



 「キャラクターがしゃべったことに対して子どもがどう返すかといった、“インタラクティブ性”(相互対話)があればもっといい。ぜひ一緒にアップデートさせていけたらいいですね。ただし現時点でもサンリオさんの得意分野である子どもを夢中にさせる工夫が随所に盛り込まれており、本教材で学んだ子どもたちがどのように英語を習得していくか私も期待して見守りたいと思います」



 子どもの将来を考え、早い段階から英語に触れさせたいと思う親心は当然だし、そこに不安が付きまとうのも子どもを思うがゆえ。ただ、せっかく学ぶための“投資”をしたならば、それが実を結ぶことを祈ってしまうのも親の本音だろう。



 「親御さんたちは『でも、すぐ飽きちゃうんじゃ…』と不安に思うかもしれません。たしかに子どもは飽きやすいものですが、月齢によって興味はどんどん変わるのでそれは仕方ないこと。一度飽きても、また少しすると興味が戻ってくることもあるので、そこはあまりやきもきしなくて大丈夫です。本教材は子どもの発達に合わせて、実生活で経験するシーンや好奇心を刺激するような内容で子供の興味を惹きつける工夫が入れ込まれています。子どもが学ぶのを放っておくのではなく、注意を向けて褒めたり一緒に喜んだりして、親子のコミュニケーションも意識してください」



(C)2023 SANRIO CO.,LTD.

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