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【映画】
福山雅治、新作『ブラック・ショーマン』で語る――「今日で最後かもしれない」人生観

映画『ブラック・ショーマン』(公開中)主演の福山雅治(撮影:山崎美蔓※崎=たつさき) (C)ORICON NewS inc.


アーティストとしても俳優としても第一線で活躍し続け、静と動、天才物理学者から幕末の志士まで幅広く表現できる唯一無二の存在・福山雅治。そんな彼が新たに挑んだのは、「ありえないこと」を見せることで驚きや感動を与えるマジシャン。東野圭吾原作の映画『ブラック・ショーマン』で演じた主人公・神尾武史は、長く演じてきた「ガリレオ」シリーズの“湯川学”からつながるある種のダークヒーロー。東野圭吾作品との縁や、有村架純との初共演を通じて感じたこと、そして、人生観を垣間見るようなエピソードまで語ってくれた。



東野圭吾による小説「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」(光文社文庫)を原作とする映画『ブラック・ショーマン』は、かつてラスベガスで名を馳せた元マジシャンの神尾武史(福山)が、卓越したマジックと巧みな人間観察&誘導尋問を武器にして、姪・真世(有村架純)と共に、大切な家族が殺された殺人事件の謎に挑む。



――本作の作品づくりのうえで意識されたことはありますか?



【福山】『ブラック・ショーマン』というタイトルに“ショー”という言葉が入っています。「イッツ・ショータイム(It's Showtime.)」という言葉もあるし、観てくださる皆さんに“ショー”として楽しんでもらえる作品にしたいなと。自然とそういう方向になっていったことで、見応えのある見せ場が、ふんだんに盛り込まれている作品になったと思います。



――劇中では実際にマジックの技も披露されていますね。どのように取り入れていったのでしょうか?



【福山】マジックの手技も、合成やカット割りじゃなくて、本物を入れたいですねと。最初は「まあ1つ2つできればいいかな」くらいに思ってたんですけど、やってみると「これもできますか?」と、監督やプロデューサー、マジック監修のKiLaさんから次々と出てくるんですよ。で、どんどん増えて、結局いろんなことをやることになっちゃいました(笑)。監修の先生から火がついたままのタバコを口に入れて舌を出して見せるマジックを提案されて、さすがに難易度が高くて断念しましたが(笑)、「口から何かが出てくる」って、すごくインパクトあるなと思ったので取り入れたのが予告編でも使われている免許証を見せる場面につながりました。マジックに限らず、今回は初めて挑戦したことがすごく多かったです。ちょっとした立ち回りとか、座禅とか。



――座禅は初めてだったんですか?



【福山】あぐらはありますが、座禅の足の組み方は初めてだったので、できるかな?足首折れるんじゃないかな?と不安はありましたけど、できました(笑)。ちゃんと組むとすごくきれいだなと、画としても見どころになったと思います。



――今回「ダークヒーローを演じてみたい」というお話を、東野圭吾さんとされていたと伺いました。その経緯や、作品作りの中で東野さんとのやりとりから生まれた神尾武史というキャラクターについて、どのように考えられていますか?



【福山】厚かましくも先生にお願いしてしまいました。読後感は“天才的に口の達者な人”。小説の構造が大変面白く「武史は何言ってるんだろう?」という導入から入っていって、「あ、このことを聞きたかったんだ」ということが幾重にも積み重なっていく手品的な会話術がある人なのだと。マジックには仕掛けは必ずあるけれど、ネタバレしないように手品のようなトークをするキャラクターが面白くもあり怖くもあり、と魅了されました。



 東野先生原作の「ガリレオ」シリーズを長くやらせていただいていて、湯川学という天才物理学者の存在がもし悪の心を持ってしまったら、それこそマッドサイエンティストとしてそれはもう世界が大変なことになっちゃうなと密かに想像していたんです。大量破壊兵器、細菌兵器、世界を滅亡させる程の高い知能を持っている人。もちろんすべては僕の空想です。ただ「もし湯川さんが悪の側の人だったらどうなるんだろう?」と思いながら。もちろん湯川さんは善の人なので絶対に悪にはいきませんが、僕と湯川さんとの付き合いの中で、「もし東野先生が湯川さんとは異なるダークなキャラクターを描くとしたらどんな作品になるんですかね?」みたいな会話の流れからだったんじゃないかなと思います。



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――有村架純さんとの初共演はいかがでしたか?



【福山】非常に力のある俳優さんです。引き出しの豊富さはもちろんですが、何よりも心でお芝居をされる方。まずは気持ちで動いていくという、表現者としてそこをすごく大事にされている方だと感じました。

本当によく受け止めてくださいます。お芝居はもちろん、撮影現場のさまざまな状況に対しても。有村さんをはじめ、共演者の皆様の懐の深さで、僕も自由度の高いアプローチができたと思っています。



――俳優業だけでなく、音楽活動、楽曲提供、写真、ラジオパーソナリティと、本当に幅広く活動を続けるなかで、〈広げる〉と〈続ける〉のバランスをどう考えていますか?



【福山】あくまで持論ですが、人生というものは自分が思った通りの物語りにはならないと思うんです。上手くいってると思われている人も、そうじゃない人も。更に言うと、良くも悪くもない毎日が1番多いのかもしれません。なので、「こうなったらいいな」と思っていたことの2割も叶えば上等じゃないですかね。僕自身も、10代の頃に「こうなりたい」と思っていたものになれたかといえば、全然違います。ま、当時の自分のなりたいイメージがすごく漠然としたものだったので。「お金の心配をせずにご飯が食べられるようになりたい」「ギターを弾いて生きていければいいな」くらいのイメージでした。だから、今の自分がこうなっているのはまったく想像していなかったです。やってみないとわからないし、やってみたらまた変わる。目の前にあるものを、無理でも何でもなんとか対応してきただけで、思い描いた通りに、なんて余力はありませんでした。恐らく、この先もそうだと思います。



――東野圭吾さんの作品は謎解きが魅力ですが、謎解きというのは結局“人の知られざる一面に気づいていくこと”なのかなと思いました。今回の『ブラック・ショーマン』のストーリーを観客にどう届けたいと感じていますか?



【福山】常にそうありたいと思っているんですが、なかなかできないのが“他者への想像力”です。言い換えれば“思いやり”。そうありたいと思っていても、正直、できていないことのほうが多い。人の行動原理や動機に気付いていくというのは、つまり「この人は何を考えていたんだろう」「どう思っていたんだろう」と想像を巡らせることですよね。それが事件とともに少しずつカードをめくるように明らかになっていく。そこで「ああ、自分は想像力が及んでいなかった」と後悔する。それがミステリーにおける人間ドラマの醍醐味だと思います。



 僕が東野先生の作品が好きなのは、先生ご自身がとても“情に厚い方”で、その人情が登場人物のそれぞれに描かれているからなのでは。『沈黙のパレード』では草薙との友情、『容疑者Xへの献身』でも石神に対する友情が描かれていた。今回の『ブラック・ショーマン』の神尾武史も、兄貴に対する恩と義理が根っこにある。先生が描こうとしているのは常に“人に対する思いやり”や“情”だと解釈しています。その情は、人にも自分にも正しきものだけに変換されていくわけではない。結果として残酷な事件に発展する場合もある。そこが作品の奥深さだと思います。



 ただ、それだけではなく『ブラック・ショーマン』は“イッツ・ショータイム”という言葉に象徴されるように360度型のエンタメ作品です。派手な仕掛けやエンターテインメント性もふんだんに盛り込まれています。でも最後に残る読後感は、「人に思いやりを持つこと」「人に想像力を働かせること」――それがテーマなんだと感じてもらえる作品になっていると思います。

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