吉行和子さん死去 知的で穏やか、茨城県民魅了


個性派俳優として舞台や映画、テレビで活躍した吉行和子(よしゆき・かずこ)さんが2日午前0時19分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。90歳。東京都出身。
吉行さんは水戸芸術館(茨城県水戸市)が開館した1990年代初頭に、同館専属劇団ACMでも活躍した。関係者が「知的で穏やかな雰囲気が印象的だった」と語るなど、多くの県民を魅了した。
吉行さんは90年3月から92年3月にかけてACMに所属し、野村万作さんや夏木マリさんらとともに地方からの演劇文化の発信に貢献。俳優人生に深く影響を与えた演出家の鈴木忠志さんが同館演劇部門の初代総監督に就任し、誘われたのがきっかけだった。
ACM劇場開館記念公演「ディオニュソス-喪失の様式をめぐって」(90年)をはじめ、「マクベス」(91年)や「イワーノフ」(92年)などの前衛作品に出演。60年代に唐十郎・寺山修司氏と共に「アングラ演劇の旗手」と称された鈴木さんの世界観を全身で表現した。
同館設立時から吉行さんをよく知る水戸市芸術振興財団常務の大津良夫さん(70)は「音楽、演劇、美術が三位一体となり自主企画を旨とする館の運営方針に深く共感され、専属劇団員として活躍された」と回想した。「地に足の着いた演技と、舞台を離れた時の知的で穏やかな雰囲気が印象的だった」と語った。
テレビ番組のロケで、茨城県を訪れることもあった。同県神栖市太田のウナギ料理店「但馬山杉澤」を営む杉沢千江子さん(77)は「ずっとにこにこしていたのが印象に残る。穏やかでとてもすてきな方だった」と2019年の来店時を懐古した。
吉行さんはうな重を注文し「おいしい」と完食したという。杉沢さんは「すごく喜んでもらい、うれしかった。もう一度会いたかった」とさみしそうに話した。