カッパ伝説、地域の宝 土浦・佐野子地区 公民館に石像、毎年祭り 茨城


茨城県土浦市佐野子地区にはカッパにまつわる伝説が残っている。「カッパの手」とされるミイラが地元の寺で発見され、住民らは長い間大切に守り抜いてきた。現在ではカッパの石像を祭った堂が建てられ、毎年祭りが開かれるなど、地域のシンボルとして愛される存在になっている。
カッパの手は、満蔵寺(同市佐野子)で供養され、大切に保存されていた。その後、焼失した寺の境内に建てられた佐野子公民館で保管されている。
言い伝えはこうだ。霞ケ浦に流れ込む桜川にいたずら好きなカッパがすみ着いていた。ある時、農民が畑仕事で汚れた馬を洗っていたところ、馬の尾をつかんで水に引きずり込もうとした。捕まえて村に戻り「殺してしまおう」と騒いだが、満蔵寺の住職が「命だけは助けてやれ」と説得。いたずらできないようにと、右手を引き抜いて逃がしたという。
保存活動に携わってきた阿部守男さん(83)によると、小学1~2年の頃、寺の押し入れからミイラが見つかり騒ぎになった。何枚もの絹の布にくるまれ、漆塗りの木箱に入っていた。「ミイラが土地を離れると、持ち出した先で大雨が降る」とされ、大人たちからは「いたずらするな」と厳命された。以前、青森県での催しに貸し出すと、現地が大雨に見舞われたことがあったという。
住民たちはカッパの存在を後世に伝えるとともに、地域活性化に役立てようと、市制70周年を迎えた2010年11月、同公民館の敷地内に石像と「佐野子のかっぱ堂」を建てた。建立の目的や経緯を記す看板には「『河童(かっぱ)の手のミイラ』と共に、『河童の石像』も町内の守護神として引き継がれていくことを祈願する」と刻まれている。
翌年には地域を元気づけようと「佐野子のかっぱ祭り」が始まった。6月の第1土曜に開かれ、住民によるおはやしや農産物の即売会、金魚すくいでにぎわう。祭りの日にのみ、カッパの手を透明のケースに移して公開している。
水辺の妖怪として恐れられたカッパは、今や「守護神」とあがめられている。阿部さんは木箱から取り出したカッパの手を見詰めて「全国を探しても佐野子にしかない」と誇らしげだ。