安野さん絵本の世界紹介 13日から茨城県近代美術館 遊び心、時間割で150点

緻密で温かみのある描写の中に、遊び心に富んだ仕掛けをほどこしたユニークな作品で知られる画家、絵本作家の安野光雅さん(1926~2020年)の画業をたどる企画展「安野先生のふしぎな学校」が13日、茨城県水戸市千波町の県近代美術館で開幕する。安野さんが画家として独立する前の教員時代に着目し、「こくご」や「さんすう」など学校の時間割と教科に見立てたコーナーに分け、絵本や装丁デザインの原画など約150点を紹介している。11月16日まで。
安野さんは島根県津和野町生まれ。戦争から復員後、小学校教員を務める傍らで、本の装丁やイラストを手がけ、1961年に絵描きとして独立した。68年に文章のない絵本「ふしぎなえ」で絵本作家としてデビューを果たし、国際アンデルセン賞などを受賞。絵本、デザイン、文筆など幅広い分野で活躍した。
展示品は、町立安野光雅美術館のコレクション。21年から京都や広島などで展示された。関東での巡回展は今回が初めて。
「さんすう」のコーナーでは、数字をテーマにした絵本「かぞえてみよう」と原画を展示。田園風景の四季を描いた「0」~「12」の13枚の絵からなり、動物や家、乗り物を数えて、数字を楽しく学べる仕組みになっている。
安野さんは日本やヨーロッパなど世界を旅し、各地の風景を叙情豊かにスケッチした。「ずこう・おんがく」のコーナーでは、森の景色にさまざまな動物が隠された「もりのえほん」、国内外の唱歌に着想を得た「歌の絵本」シリーズなどを見ることができる。
展示の最後では「自由研究」として、井上ひさしさんが旗揚げした「劇団こまつ座」のポスターや和歌を記した書などが飾られている。
安野光雅美術館の丹波菜月学芸員(27)は「多彩な手法や題材に挑戦していた、クリエイターとしての安野光雅を見ることができる。解説に頼らず、自分の目で(仕掛けを)楽しんでほしい」と話した。