【未来は拓けるか 茨城県鹿嶋市長選を前に】 (下) 《連載:未来は拓けるか 茨城県鹿嶋市長選を前に》(下) 洋上風力発電の拠点化

■トップセールスが鍵 鹿島港に産業集積図る
原油や鉄鉱石を積載した大型タンカーが行き交う茨城県の鹿島港の北側で、岸壁を整備するつち音が響く。洋上風力関連施設の拠点化に向けた準備が進む外港地区だ。
洋上風力発電は欧州などで導入が進んでおり、日本も2040年までに3千万~4500万キロワットを導入する目標を掲げる。鹿島港に近い千葉県銚子沖では、大型風車31基が28年にも稼働する予定となっており、外港地区はこの海域などで始まる洋上風力発電を支える「基地港湾」。市幹部は、洋上風力発電産業の集積を「第二の鹿島開発」と意気込む。
市が目指すのは、①風車の資機材や関連パーツの輸入②仮組み立てや海上輸送③地元企業参入や風車メーカーの新規立地④設備の維持管理-など八つの機能を併せ持った総合拠点。中でも、市が産業集積を図る上で重視するのは、発電機や制御機器を搭載する心臓部「ナセル」だ。
ナセルには、風車1基を製造するために必要な部品数万点の多くが集中。市港湾振興課の担当者は「サプライチェーンを構築する上で(ナセルは)欠かせない」と力を込める。
ただ、8機能を構成するための用地が十分に確保されているかは見通せない状況だ。外港地区は総面積150ヘクタール超と広大ではあるものの、地区内には別分野の事業者が既に立地。新たに誘致する企業の求めに応えるため、市は、同地区に隣接する事業者の保有地を含めた調整を迫られそうだ。
一方、地元企業が、洋上風力発電産業にどこまで参画できるかは未知数。鹿島臨海工業地帯は鉄鋼など素材を製造する企業が多く、今後は地元企業が洋上風力発電事業へ参入しやすい環境づくりに期待が集まる。
市は3月下旬に公表した「洋上風力発電事業推進ビジョン」素案で、セミナー開催や地元企業参入時の設備投資への支援などを提案。市は「積極的に地元企業との仲介を務めたい」(同課)とするものの、初期の誘致活動や地元企業とのマッチングでは、国や県を巻き込んだトップセールスが重要な鍵を握りそうだ。
50年のカーボンニュートラル実現に向けた政府の「グリーン成長戦略」で、重要14分野の一つに掲げられた洋上風力。産業集積に向けた動きが銚子市側でも活発化しつつある中、鹿嶋市がどこまで先行できるのかが注目される。