【デスク日誌】肉筆伝える時代の空気
日記を書いたのは、小学校の夏休みの宿題が思い浮かぶくらい遠い記憶だ。自分で書くのは面倒でも、文学作品や歴史的史料の日記は読んでみたい
▼先日、東京の日本近代文学館を訪ねた。作家たちの直筆の日記や原稿などを通し、二・二六事件から敗戦、朝鮮戦争の開始までをたどる特別展「滅亡を体験する 戦渦と文学」が開かれていた
▼印象的だったのは作家、高見順の日記。茨城県知事を務めたこともある内務官僚の義兄・古井喜実から広島への原爆投下を耳打ちされ、動揺する心を「…」と表現した
▼終戦直前、空襲警報に慣れた人々の意識が変化。「『一機が危ない』みんながこう言い出した」と記す。新聞が「新型爆弾」を「原子爆弾」と報じるようになり、一機から落とされた原爆の情報が広まった様子を描写。肉筆から伝わる時代の空気が生々しい。(整理部・赤城弘徳)










