【デスク日誌】心の隙、突かれぬ注意を

日が暮れ始めた多忙な時間帯。どこからともなく現れ、家の中に入り込む。勝手に座敷に上がり込んでお茶を飲み、たばこを吸う。「誰か家族がいるのだろう」。家人は気にも止めない

▼妖怪の総大将とも言われる「ぬらりひょん」は、人の心理の隙間を突いた悪行を得意とする。県天心記念五浦美術館(北茨城市)で、26日まで開催中の「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」を通し、学んだ

▼人の心につけ込んだ、悪質な犯罪が後を絶たない。SNS(交流サイト)を使った投資・ロマンス詐欺や警察官を語ったニセ電話詐欺の被害は、連日のように紙面で報じている

▼水木さんは先達の絵師の作品や資料、文字情報などをよりどころにし、伝承を尊重した妖怪画を描いてきた。ぬらりひょんの登場は、心の隙間を突かれぬよう、注意を促すためだったのかもしれない。(報道部・前島智仁)