【論説】東京都の太陽光パネル義務づけ 自治体が脱炭素の先頭に

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東京都の環境審議会が、一戸建て住宅を含む新築建物への太陽光パネル設置を原則義務化する制度を小池百合子知事に答申した。都は今後、都議会への関連条例改正案の提出に向け作業を進める。気候危機が深刻化する中で、国の政策を超える思い切った地球温暖化対策として評価できる。

2050年に温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする目標を掲げたものの、排出に応じて課税をする炭素税の本格導入など、国の温暖化対策は他の先進国に比べて大きく見劣りする。対策の鍵となる太陽光などの再生可能エネルギーの導入も遅れている。

今回の東京都のように地方自治体が思い切った政策を導入しない限り、気候危機対策は進まないというのが日本の現状だ。東京都は条例化を急ぐべきだし、各地の自治体も野心的かつ独自の排出削減対策導入を進め、脱炭素社会形成の先頭に立ってほしい。

都の審議会の答申によると、延べ床面積2千平方メートル未満の中小規模の建物は、施主や購入者ではなく、住宅メーカーに設置を義務付ける。マンションなど2千平方メートル以上の新築建物については、建築主に義務を課す。

エネルギー消費が増加傾向にある家庭部門の排出削減は急務だが、東京都の場合、太陽光発電の設置率は4%強と極めて低い。今後、多くの建築物が建て替え時期を迎えていく中、設置義務化は温室効果ガスの削減に大きく貢献する。

ロシアのウクライナ侵攻で化石燃料価格が高騰し、電気料金も上昇しているので、燃料費がかからない太陽光発電のメリットは大きいし、災害対策にもなる。

大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設に使われる太陽光パネルと違って、住宅用パネルのシェアは日本企業が約7割を占めるので、経済効果も小さくない。

炭素税や排出規制など大枠の気候変動対策を決めるのは国の仕事だが、排出削減の「現場」となる地方自治体の重要性は高く、国際的にも注目されている。

日本国内でも「50年排出ゼロ宣言」を行う自治体が増え、環境省によれば、その数は7月29日時点で758の都道府県や市町村に上る。だが、目標達成に向けた具体的な政策やビジョンを持つ自治体は多くはない。

環境省は、国内の少なくとも100カ所の自治体を「脱炭素先行地域」に指定し、交付金を出して、地域からの脱炭素社会づくりを支援することにしている。

太陽光や風力、温泉熱、木材資源など地域の特性を生かし、住民の受容度も高い再生可能エネルギー事業を実施することが重要だ。プラスチックごみの発生と焼却の抑制、森林や湿地などを保全、再生することで二酸化炭素の吸収量を増やすなど、自治体が実現できる温暖化対策は多い。農山漁村、離島など地域が抱える過疎化といった問題の同時解決につなげることも可能だ。

小さな自治体にできることは限られても、複数の自治体がネットワークや連合体をつくれば対策の選択肢は広がる。

今回の東京の取り組みは、自治体が主体性を持って気候危機に立ち向かうことの重要性を示している。環境省も国政レベルで思い切った政策を実行する力がないのなら、自治体支援に、より一層の力を注ぐべきだ。

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