【論説】緊急事態宣言解除 冬の第6波へ備えよ

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政府は本県など19都道府県に出している新型コロナウイルス緊急事態宣言、8県へのまん延防止等重点措置を30日までの期限で全面解除すると決めた。飲食店の時短営業やイベント人数制限は1カ月をめどに段階的に緩和する。

医療現場の負担解消が十分でない地域もあり、専門家の中には全面解除に慎重意見があった。近く退任する菅義偉首相が任期中の解除を急いだことも否定できない。だとしても今の最優先課題は次への備えだ。冬には「第6波」が来る可能性が高い。全面解除に気を緩めず、医療・検査体制の強化、ワクチン接種推進に改めて注力すべきだ。

夏からの第5波は、国内の1日当たり新規感染者数が8月20日に2万5867人になったのをピークに減少へ転じ、1カ月余りで10分の1以下に減った。9月上旬に2223人まで増えた重症者数も約半分となった。26日時点の「病床使用率」と「重症者用病床使用率」は、宣言発令中の19都道府県全てで解除の目安となる50%を下回った。

ワクチン接種の進捗(しんちょく)を踏まえ医療現場の負荷軽減を重視するようにした9月からの新基準では、解除の方向は妥当だろう。ただ従来の指標で見れば、19都道府県中、16都府県の病床使用率、11都府県の重症者用病床使用率が2番目に深刻な「ステージ3(感染急増)」以上だ。東京や沖縄は、まん延防止措置に移行するなどより慎重な判断もあり得たのではないか。

感染力の強いデルタ株はワクチンを2回打った人への感染例も相次ぐが、ワクチンが感染者の重症化を抑える効果は大きい。そのため政府はワクチン普及を前提に宣言解除基準を見直したのに続き、宣言発令中の行動制限緩和も検討する。新政権で迎える次の衆院選でコロナ対策の成果をアピールしたい狙いだろう。

しかし大事なのは危機突破の「形」を整えることではなく、平時も対策を継続し第6波を防止ないし極小化することだ。「選挙さえ乗り切れば」という考えだとすれば「政権維持あって国民なし」と断じざるを得ない。

政府が今やるべきことは、臨時医療施設も含むコロナ患者向けの病床と医療人材の確保、まだ30%程度にとどまる20〜30代のワクチン2回接種率の向上、そして海外に比べてなお遅れている早期検査から早期治療へつなげる仕組みの整備だ。

人出抑制も引き続き課題だ。1年前は飲み会や県境を越えた移動が増える年末年始に感染が拡大し、年明けの緊急事態宣言に至った。その轍(てつ)を踏まないためにも、人々に3密回避などの自衛措置を再徹底させるべきだ。

希望者へのワクチン接種が完了する11月ごろ、政府は社会経済活動の本格化に向け行動制限を緩和する方針だ。接種・陰性証明を条件に緊急事態宣言下でも県境を越える旅行や出張、大規模イベントの開催、飲食店の酒類提供などを認めていくという。だが宣言下の緩和には専門家から異論もある。実証実験を踏まえ慎重に対応してほしい。

また政府はワクチンの3回目接種を、医療従事者は年内、高齢者は来年初めから開始する考えだ。ただこれも優先順位を間違えてはいけない。2回接種率を全人口の8〜9割まで上げることにまずは全力を挙げるべきだ。

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