【いばらき春秋】
口はへの字、笑顔はない。明治生まれの作家、内田百閒は頑固、偏屈、奇人などと評される
▼ところが本人は至って大真面目。ひょうひょうとしてユーモアを醸す
▼「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪に行って来ようと思う」。著書「特別阿房列車」冒頭の一文は名高い。無用の旅は空き時間に観光を勧められるが「今更見聞を広めたりしては、阿房列車の標識に背くことになる」と、どこへも行かない
▼へ理屈か哲学か。あらゆることに難癖を付ける一方、東京駅一日駅長は快諾する。制服制帽をまとい、ホームで訓示を述べると、ベルが鳴る特急「はと」最後部の展望デッキにひょいと乗車。記者や見物人があっけに取られる中、発車合図の任を放り出し、去っていってしまった。「大好きなはとを漫然と見送ることなどできない」。鉄道好きの63歳は後に明かした
▼ゴールデンウイークが始まった。最長10連休というが、民間調査では国内、海外旅行に行く人の割合は昨年と変わらない。物価高騰や歴史的円安が影を落とし、予定の最多は「自宅で過ごす」だった
▼旅、食、読書、田植えに仕事…。過ごし方は人それぞれ。なんにも用事がないからどこへも行かない。それも理屈である。(拓)
▼ところが本人は至って大真面目。ひょうひょうとしてユーモアを醸す
▼「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪に行って来ようと思う」。著書「特別阿房列車」冒頭の一文は名高い。無用の旅は空き時間に観光を勧められるが「今更見聞を広めたりしては、阿房列車の標識に背くことになる」と、どこへも行かない
▼へ理屈か哲学か。あらゆることに難癖を付ける一方、東京駅一日駅長は快諾する。制服制帽をまとい、ホームで訓示を述べると、ベルが鳴る特急「はと」最後部の展望デッキにひょいと乗車。記者や見物人があっけに取られる中、発車合図の任を放り出し、去っていってしまった。「大好きなはとを漫然と見送ることなどできない」。鉄道好きの63歳は後に明かした
▼ゴールデンウイークが始まった。最長10連休というが、民間調査では国内、海外旅行に行く人の割合は昨年と変わらない。物価高騰や歴史的円安が影を落とし、予定の最多は「自宅で過ごす」だった
▼旅、食、読書、田植えに仕事…。過ごし方は人それぞれ。なんにも用事がないからどこへも行かない。それも理屈である。(拓)