【いばらき春秋】
枯れたようにひっそりとしていた庭がようやく彩りを取り戻してきた
▼ピンク色のサクラソウが群生し、フクジュソウの黄色い花がひときわ目立つ。道端ではオオイヌノフグリの小さな花が風に揺れていた
▼13年前の3月は野辺の花に目を向ける余裕はとてもなかった。それまでの日常は失われ、自宅の壁にはひびが入り、本棚は倒れて散乱した本の山の上を歩いて過ごした。わずかなガソリンを求めて一晩中並びもした
▼食料品店には長い列ができた。停電で信号も消えて街は光を失い、静まりかえっていた。何よりも制御を失った原発の恐怖におののいたことは忘れることができない
▼能登半島の人々もいま、つらい日々を過ごしているに違いない。春間近とはいえ、冷たい風が吹く。睡眠は十分に取れているだろうか。温かい食べ物は取れているだろうか。惨状を目にするたびに、東日本大震災時に凍えるような夜を過ごした記憶がよみがえる
▼この国に生きている以上、地震という宿命から逃れることはできないことは分かりつつも、災禍の記憶はおぼろげになっている。やはり大地震は忘れたころにやってくるのだろう。備えの大切さを嫌というほど思い知ったあの日ことを長く心にとどめたい。(智)
▼ピンク色のサクラソウが群生し、フクジュソウの黄色い花がひときわ目立つ。道端ではオオイヌノフグリの小さな花が風に揺れていた
▼13年前の3月は野辺の花に目を向ける余裕はとてもなかった。それまでの日常は失われ、自宅の壁にはひびが入り、本棚は倒れて散乱した本の山の上を歩いて過ごした。わずかなガソリンを求めて一晩中並びもした
▼食料品店には長い列ができた。停電で信号も消えて街は光を失い、静まりかえっていた。何よりも制御を失った原発の恐怖におののいたことは忘れることができない
▼能登半島の人々もいま、つらい日々を過ごしているに違いない。春間近とはいえ、冷たい風が吹く。睡眠は十分に取れているだろうか。温かい食べ物は取れているだろうか。惨状を目にするたびに、東日本大震災時に凍えるような夜を過ごした記憶がよみがえる
▼この国に生きている以上、地震という宿命から逃れることはできないことは分かりつつも、災禍の記憶はおぼろげになっている。やはり大地震は忘れたころにやってくるのだろう。備えの大切さを嫌というほど思い知ったあの日ことを長く心にとどめたい。(智)