【論説】予算委審議 コロナ対策の方向見えず

通常国会は衆院予算委員会で本格論戦がスタートし、立憲民主党の泉健太代表らが、新型コロナウイルスの「オミクロン株」対策などを巡り岸田文雄首相を追及した。

政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長らは先に「人流抑制ではなく人数制限が有効」「若者は医療機関を受診せず自宅療養も可能とする」と方針転換を提言。しかし首相は、医療体制確保と社会経済活動を両立させることなど従来の立場を繰り返すのみで、提言との齟齬(そご)については明確に説明しなかった。

今後の対策の方向は見えないままで、国民には「どっちが正しいのか」という疑問、不安が残ったと言わざるを得ない。

コロナ対策として18歳以下の子どもへの10万円相当給付を巡り立民は、離婚などで実際の養育者が受け取れない事態解消を主張してきた。これを受け首相は「不公平があってはならない」と給付方法の見直し検討を表明。「一度決めた方針でもちゅうちょなく改める」という「聞く力」の実践は前向き評価もできる。だがそのほかでは、首相の柔軟姿勢は明らかに後退した。従来の方針を述べるばかりで、野党の質問に答弁がかみ合わず、終始ちぐはぐなまま議論は深まらなかった。

尾身氏らの提言について立民は「政府の基本的対処方針と異なる。専門家の意見を聞くのはいいが、最後は首相が国民に『これをお願いします』と言うべきだ」と批判。首相は「尾身会長はその後発言を訂正した」とする一方、不要不急の旅行の自粛要請を続けるのか否かも明確にできず、結局は「政府の統一見解を示すのは重要だ」と認めざるを得なくなった。

予算委に出席した尾身氏は「感染リスクを下げるため人々に納得して協力してもらうことが以前に増して重要」と強調した。専門家は政府に政策を提言し、その決定と実行は政治の責任であることは自明だ。専門家との意思疎通不足から混乱を招いたことを政府は重く受け止める必要がある。

立民は、感染者への濃厚接触者について保健所が十分な連絡も疫学調査もできない逼迫(ひっぱく)状況を招いた現状に関し「これは首相が備えるとした『最悪の事態』の想定内なのか」と対応の遅れも追及。しかし首相は「用意した態勢をしっかり機能させたい」とかわし失策と認めることはなかった。

また、病床確保のために行政権限を強化する感染症法改正、感染症対策の司令塔となる新組織設置などを今国会では見送る方針を政府与党が決めたことを、立民は強く批判した。これも首相は「今の法律の中で何ができるか追求する」とするのみで正面から答えず不誠実と言うべきだ。

そのほか、沖縄などの在日米軍基地で集団感染が発生したことで浮上した、日本の検疫を受けずに済む日米地位協定の見直し論についても、首相は「案件によって補足協定で対応する」などとしてかたくなに協定改定を否定。加えて、米軍に外出制限を要請するなど迅速に対応したことを強調したが、なぜ協定改定を避けるのか国民が十分理解できただろうか。

コロナ対策以外でも、「敵基地攻撃能力」の検討とは何を目指すのか、「新しい資本主義」では成長の分配と好循環をいかに実現させるのか、いずれも首相答弁は具体策を欠き、充実審議とは程遠いと言わざるを得ない。

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