2021年6月17日(木)

【論説】入試採点ミス問題 再発防止で終わらせるな

県立高入試で昨春と今春、合わせて953件の採点ミスが判明し3人が追加合格となった問題は、採点に関与した1100人を超える管理職や教員が減給や懲戒処分を受けるという前代未聞の事態で節目を迎えた。県教育委員会は第三者委員会の提言を受け再発防止策を決めたが、この問題を「採点ミス防止」だけに終わらせず、戦後70年にわたって続いてきた「高校入試の在り方」を議論する契機にしたい。

県教委が2月に発表した今春の県立高入学志願状況によると、全日制の志願倍率は0.97倍で、記録が残る1981年以降で初めて1倍を割った。全88校、155学科中、59校、92学科で定員割れが生じているのである。大きな原因は少子化によるもので、県教委はピーク時で111校あった県立高を、統廃合などで現在の88校まで圧縮した。しかし少子化は今後さらに進むことが予測され、志願倍率の低下は避けられそうもない見通しだ。

高校入試は、63(昭和38)年の「公立高等学校入学者選抜要綱」(文部省初等中等教育局長通知)で、「高等学校の教育課程を履修できる見込みのないものを入学させることは適当ではない」という適格者主義の下、「高等学校の入学者の選抜は高等学校教育を受けるに足る資質と能力を判定して行うものとする」という考え方を採ってきた。

しかし高校進学率が100%に近づくにつれて同省の考え方は変わり、高等学校が国民的教育機関と認知される中で公立高校の授業料無償化や私立高校への就学支援金制度拡充を図っている。高校進学の意思がある生徒の教育費用を社会全体で負担し、学びを支援しようという趣旨である。

県立高入試の志願倍率が1倍を切っている学科が増える中で、茨城大学教育学部の生越達(おごせとおる)教授は「入試制度を見直すいい機会。倍率が1倍前後の高校は、希望者全員、入学させていいと思う」とし、「入学後にどのような教育をしていくかが重要。子どもたちが多様性の中で学び、生活すれば物事を見極める目が養われる」と話す。「内申書と入試によって中学校は息苦しくなっている。世界的には高校入試を行っている国が少数であることを見れば、入試はデメリットの方が大きいのではないか」と指摘する。

しかし現状を見れば、高倍率の高校もあり入試全廃は難しい、というのが現場の声だ。ただ社会状況が激変していることを考えれば新しい時代の高校入試を考える時期であろう。

採点者の負担を軽減するためにもマークシート方式などによる全校共通の試験を行い、2次試験は各校独自で実施してもいい。共通試験と内申書だけで合否を判断する学校があってもいいし、2次試験を実施する高校は面接や論文、筆記などそれぞれの学校ごとに個性を出すことも可能だろう。

中学校は、高校入試を目標に学習計画を立てて授業を進めるため、「目標がなくなれば、現場は混乱する。中学3年間の学習達成度を測る共通試験は、そのためにも必要」というのが中学校現場の声だ。

採点ミス問題は、再発防止策の決定で終わらせず、高校教育の現状や少子・高齢化の進行状況を踏まえた上で、入試の在り方を考える機会にしてもらいたい。

2021 年
 6 月 17 日 (木)

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