【論説】関電疑惑「起訴相当」 丁寧に再捜査尽くせ

刑事責任の追及に消極的だった検察の姿勢を、11人の市民が厳しく批判した。

カットした役員報酬の補塡(ほてん)や金品受領など関西電力を巡る一連の疑惑で、旧経営陣9人に対する会社法違反などの告発容疑を全て不起訴(嫌疑不十分)とした大阪地検特捜部の刑事処分を、大阪第2検察審査会がことごとく否定した。

森詳介元会長、八木誠前会長ら3人は「起訴相当」、残る6人は「不起訴不当」と議決された。いずれも地検が再捜査する。不起訴判断を追認する「不起訴相当」は1件もなかった。

11人の検察審査員は、くじで選ばれた有権者だ。議決書は公益性が高い電力会社に透明性、公正性を強く求める市民感覚であふれており、うなずける内容が多い。

「不起訴不当」など通常の議決は過半数で行われるが「起訴相当」は8人以上の多数が必要だ。この場合のみ、地検が再捜査の結果再び不起訴にしても、検審が2度目の起訴議決をすれば強制起訴されることになる。

地検は捜査に1年以上かけたが、関電の家宅捜索は行わなかった。議決は強制捜査やメールなどの電子鑑識を含む徹底した再捜査を求めている。市民の納得が得られる説明ができるように、地検は丁寧に再捜査を尽くさねばならない。

森元会長らを「起訴相当」としたのは、東日本大震災後の赤字を受け、カットした役員報酬を、ひそかに補塡していたとされる疑惑(会社法の特別背任容疑)が中心だ。役員退任後に嘱託として再契約した18人に計2億5900万円を支払っていた。

嘱託業務の実態があったか否かが最大の焦点で、地検は「実態がなかったことの立証は困難」との理由で不起訴としたが、議決は「業務内容はあやふやで、実態がほとんどない者もいた。口止めも行われた」と指摘。

電気料金値上げの際、役員報酬の減額を約束していたことに触れ「補塡は電気利用者への裏切り行為。公共性の高い企業トップが、身内だけに利益を図っていたことは強い非難に値する」と厳しく指弾した。当然だ。

この疑惑は地検の捜査段階から、法律家の間で「立件可能」の声が根強かった。検察内部にも「(検審から)戻ってくるなら報酬補塡だ」との本音が漏れていた。議決は地検にとって痛い指摘だったのではないか。

一連の疑惑発覚の発端となった福井県高浜町の元助役(故人)の関連会社に不適切な工事発注をし、役員らが金品を受け取ったとされる疑惑(会社法の収賄、特別背任容疑など)については「不起訴不当」にとどめたものの、同様に手厳しい。

「元助役の関連会社は関電の工事受注を主な収入源としており、金品受領は電気利用者からの電気料金を懐に入れたに等しい」と強い調子で批判している。

疑惑の性質上、追及されるのは旧経営陣個人の刑事責任だが、根底には関電のガバナンス(企業統治)が欠如し、組織として旧経営陣の暴走を許した事実があることを忘れてはならない。

それなのに議決を受けた関電のコメントは、「当社は当事者ではなく、お答えする立場にない」と人ごとのようだった。「自分ごと」そのものであり、市民の声に真摯(しんし)に耳を傾けなければならない。