2020年9月19日(土)

【論説】ジャパンライフ事件 首相推薦枠巡り説明を

3年前に破綻した「ジャパンライフ」による高額な磁気ネックレスなどの預託商法を巡り、警視庁などは詐欺の疑いで創業者の元会長、山口隆祥容疑者や元幹部らを逮捕した。客が購入した商品を会社に預けて貸し出せば、預金より高い利回りの配当を受け取れるという「レンタルオーナー制度」を展開し、高齢者を中心に契約を伸ばした。

しかし実際には客が購入したはずの商品は存在せず、新規の客からの代金を配当に回す自転車操業に陥り、行き詰まったとされる。山口容疑者らは配当の見込みがないのに客の勧誘を続け、代金をだまし取った疑いが持たれている。被害は約7千人、総額約2千億円に上り、70歳以上の契約が全体の7割を占める。

ジャパンライフは2015年に安倍晋三前首相主催の「桜を見る会」に山口容疑者が招かれた際の招待状をチラシにするなど客の勧誘に利用。さらに山口容疑者が「首相推薦枠」で招待された疑惑が浮上した。野党の追及に、政府は当時の招待者名簿を廃棄したため分からないとし、名簿の存否などを含めて調査に応じようとしなかった。事件の全容解明と被害回復を急がなければならない。加えて、桜を見る会が大々的に預託商法の宣伝に利用され、被害拡大の一因となったことを踏まえ、政府は首相推薦枠など山口容疑者が招待された経緯を巡り調査と説明を尽くすべきだ。

ジャパンライフは磁石を埋め込んだ100万〜600万円のネックレスやベストなどを扱い、購入した商品を会社に預けレンタルオーナーになれば、年6%の配当が入ると宣伝。客が知人を勧誘すると報酬を得られるマルチ商法も取り入れ、44都道府県の高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたと捜査当局はみている。購入した繁殖牛から生まれた子牛を預けると、飼育・販売で出た利益が配分される和牛預託商法を手掛け、破綻した「安愚楽牧場」の約7万3千人、約4300億円に次ぐ被害規模となった。

解約妨害などで消費者庁から4回の業務停止命令を受け17年12月、破綻。昨年4月には多くの被害者を抱える警視庁や秋田、愛知、岡山など5県警が債務超過の事実を告げず契約したとして特定商取引法違反容疑で、山口容疑者の自宅や代理店などを家宅捜索した。

桜を見る会を巡っては15年の開催時、山口容疑者宛ての招待状に招待区分の「60」が付され、野党は過去の例からみて、首相の推薦枠だった疑いがあると追及。内閣府は昨年分は「官邸や与党の枠だった」としたが、招待者名簿が廃棄されており、15年もそうだったかは答えられないとした。

安倍氏は「桜を見る会が企業や個人の不当な活動に利用されることは決して容認できない」としながら「個々の招待者やその推薦元は個人情報のため回答を差し控えている」と答弁。野党が調査を要求しても「考えていない」と突っぱねた。

しかし招待状はチラシに印刷され、各地の顧客勧誘セミナーでプロジェクターに映し出すなど宣伝にフルに使われた。「初めて来た人でも信用した」と元社員は証言。1人で1億円以上をつぎ込んだ高齢者もいた。なぜ山口容疑者のような人物が桜を見る会に招待されたのか。それをうやむやにしては、政治不信が尾を引くことになろう。

2020 年
 9 月 19 日 (土)

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