2019年5月22日(水)

【論説】米中対立激化 まず貿易協議で合意を

トランプ米政権は米中貿易摩擦を巡り、制裁措置の第4弾として中国からのほぼ全ての輸入品に最大25%の追加関税を課すと発表したほか、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の製品排除や同社への禁輸措置を打ち出した。トランプ大統領は中国に完全勝利を収め、自身の再選につなげたい。中国の習近平国家主席は威信にかけて主権を損なう譲歩はできない。両者の思惑の中で、米中対立は激化し、昨年来の貿易摩擦は露骨な技術覇権争いに発展した形だ。

米中首脳は世界経済への悪影響の広がりを避けるため、早急に対立を収拾する責任を負う。安全保障が絡み解決が難しいファーウェイ問題を切り離し、まず貿易協議について冷静で柔軟な交渉を通じ合意を図るべきだ。

5月のワシントンでの閣僚級協議は不調に終わり、米政権は中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)に対する追加関税率を10%から25%に引き上げる措置を発動。続いて3千億ドル分に最大25%の追加関税を課す第4弾の制裁措置を発表した。米国は中国に(1)貿易不均衡の是正(2)知的財産権の保護(3)外国企業に対する技術移転強要の停止(4)市場の開放(5)国有企業への補助金廃止-などを要求。中国側もこれに応じて構造改革に取り組む姿勢を示していたが、合意文書を詰める最終段階で暗礁に乗り上げた。

中国は知的財産権の保護などのための法改正を盛り込んだ文書案の修正を要求。中国の協議代表、劉鶴副首相は「国家の尊厳に関わる」と強調した。習氏は米国の圧力で法改正をするのは「主権侵害」とみて修正を指示した可能性がある。

世界首位と第2位の経済大国、米中の対立激化は、両国だけでなく日本を含む世界の実体経済や株価に大きなマイナスの影響を及ぼしてきた。米中両国は今後も協議を続け、両首脳は6月下旬に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合の際に会談する見通し。国益や自分の利益だけを追ったり、メンツにこだわったりせず、世界全体の利益を考慮し、柔軟さを発揮して最終決着を目指すべきだ。

一方、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの開発で優位に立つファーウェイの問題は深刻だ。トランプ氏は同社製品を標的に「安全保障上の脅威」がある通信機器の使用を米企業に禁じる大統領令に署名。米商務省は制裁対象のイランとの金融取引に関わったとして、ファーウェイと68の関連会社に対し、米企業が政府の許可なく製品を輸出することを禁じると発表した。この措置を受け、米グーグルがファーウェイへのスマートフォン向けソフトの提供を停止。米企業が電子部品の供給を停止する動きも広がり、ファーウェイの経営に影響が出始めた。中国の王毅外相はポンペオ米国務長官との電話会談で「米国は政治的な手段で中国企業の正常な経営を抑圧している」と抗議した。

米政権はファーウェイ製品を通じた中国側の情報窃取を警戒しているもようだが、「安全保障上の脅威」を言うなら、きちんと証拠を示して改善を求めるべきだ。そうしないなら、米国の技術覇権を守るため中国企業を追い落とそうとしていると批判されても仕方がない。ファーウェイ問題についても対話を通じた公正な解決を期待したい。

2019 年
 5 月 23 日 (木)

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