2020年7月15日(水)

【論説】宇宙基本計画 利用大国への道は険しい

政府は先月末、新しい宇宙基本計画を閣議決定した。2008年に宇宙基本法ができ、翌09年に第1次計画が作られ、今回が第4次。今後20年を見据えた10年間の政策の基本方針を示している。

中身は安全保障、災害対策、宇宙科学や宇宙産業の振興と総花的。欧米や中国に後れを取っている現状への危機感を強調するものの、宇宙科学や宇宙産業の停滞を打開する決め手に欠ける。

基本計画の存在意義が問われている。新計画は日本が「自立した宇宙利用大国」となることを目指す。しかし、宇宙関連予算は米国の15分の1、欧州の3分の1でしかなく、道は険しい。

日本航空宇宙工業会によると、国内の宇宙機器関連企業90社の18年度売上高は3532億円。約20年間ほとんど成長せず、多くを内需が占める。

国産ロケットの衛星打ち上げ受注も高い費用がネックとなり、情報収集衛星など政府関連以外は不振。次期主力H3の打ち上げ費用は従来の半分の50億円を目指すが、対する欧米勢は手ごわい。厳しい状況にもかかわらず、新計画の示す方針は従来通り公共事業の強化にすぎない。そこには国際競争力をいまだ獲得できていないことへの分析も反省も見られない。

米国では政府が大手企業だけでなく、ベンチャー企業も支援して競わせ、国際競争力を持つ宇宙産業が育った。新計画もベンチャー育成を強調するが、大手中心の産業構造の中で、けん引力となり得るか疑問だ。

金星の大気を巡る謎を解いた探査機あかつき、小惑星探査機はやぶさ2で注目を浴びる宇宙科学についても新計画の目配りは不十分だ。大学共同利用機関として宇宙科学の拠点だった宇宙科学研究所は03年の宇宙航空研究開発機構(JAXA)発足で大学との関係が弱まり、基礎研究の推進や若手育成に支障を来すようになった。

宇宙科学全体の発展を図る調整機能も失われ、研究を基礎から積み上げるという基本が揺らいでいる。代わって政権に近い学者の発言力が強まった。実現可能性が乏しいとされる「宇宙太陽光発電」研究が新計画に入っているのはその一例だ。

米国と日本とでは宇宙技術に数十年の開きがある。それを埋めるには、まず大学と研究所が一体となる態勢の再構築が不可欠だ。宇宙探査に必要な海外の通信局など基盤の整備も進めるべきだ。

新計画は米国主導の月周回基地「ゲートウエー」建設に参加するとした。だが、対等な技術を持って参加するのでなければ、得られるものは少ない。約1兆円を投じ国際宇宙ステーションに参加して、金額に見合う収穫はあったのか。

安倍政権下で進んだ安全保障策としての宇宙利用にも懸念がある。新計画は「相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力」も強化するとの目標を打ち出したが、宇宙での軍拡競争に拍車を掛けることにならないか。

宇宙基本法は宇宙利用の目的に世界平和と人類の福祉向上への貢献を掲げる。国防宇宙戦略でロシアを最大の脅威とする米国も、金星探査ではロシアと協力関係にある。同盟国や友好国との関係が全て、というのではいかにも底が浅い。宇宙利用大国を目指すなら、人類の共有財産である宇宙での平和構築にどう取り組むのかを示すべきだろう。

2020 年
 7 月 15 日 (水)

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