2021年4月23日(金)

【論説】元従軍慰安婦判決 日韓合意土台に解決模索を

元従軍慰安婦の女性や遺族が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は日本の「主権免除」の主張を認め、訴えを却下する判断を下した。妥当な判決といえよう。さらに判決は2015年の元慰安婦問題に関する日韓合意も評価する踏み込んだ認識も示した。今後、日韓両政府がこの合意を土台に問題解決を模索することが唯一の決着につながる道だ。

1月には、同地裁の別の判事チームが、日本の「主権免除」を認定せず原告の主張を認め、日本政府に対する損害賠償を求める判決を出し、確定している。韓国司法界が、日本に「主権免除」を適用するかどうかを巡り、混乱していることをうかがわせる。

だが、「主権免除」は元慰安婦問題で日本が有罪か無罪かを問うレベルの話ではなく、国家は外国の裁判権に服さないとされる国際的に認められたルールだ。このルールに沿って、国際司法界での秩序も保たれている。この「主権免除」原則を無視した1月の判決は、慰安婦問題で日本に厳しい視線を向ける国内世論を過度に意識したものだろう。

こうした韓国司法界の混乱ぶりは、文在寅(ムンジェイン)政権が招いたともいえる。文政権は、当初、15年の日韓合意は元慰安婦の立場を考慮していない政治的取引だとして否定する立場を見せていた。事実、合意によって設立された「和解・癒やし財団」を解散させ、合意を白紙化させてしまった。

しかし、この間に外交努力をしたのかといえば、皆無だった。ところが、東京五輪を契機に南北対話を再開するため日本の協力が必要となるや、態度を一変させ始めた。

1月の原告勝訴の判決後に行われた年頭記者会見で文大統領は、判決結果に「困惑している」と、日本の立場に配慮するような発言をしたのだ。また、15年の日韓合意が国家間の正式な合意であるとの認識も示した。

この会見が、今回の判決に影響を与えた可能性もある。司法も大統領の意向に逆らうことはできないのだろう。今回の判決で、15年の日韓合意が、日本の「謝罪と反省の内容」が含まれた政府レベルの「権利救済」だったと認定、同合意は現在も有効との立場を見せたのだ。

この点は評価できると同時に、日本政府にも課題を突きつけている。なぜなら、同合意は「日韓両政府が協力し、元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷を癒やすための事業を行う」としているからだ。

日本は「元慰安婦問題は不可逆的に解決した」との突き放すような態度ではなく、引き続き「心の傷を癒やす」姿勢を示すべきだろう。また、姜(カン)昌(チャン)一(イル)新駐日大使と菅義偉首相や茂木敏充外相との会談が実現しておらず、茂木外相と韓国の鄭(チョン)義(ウィ)溶(ヨン)新外相との電話会談すら実現させていない姿勢はそろそろ考え直すべきタイミングに来ているのではないか。

中国の軍事的台頭、北朝鮮の核ミサイル開発を巡る現状を考えれば、日米韓が足並みをそろえることが今ほど求められている時はない。

日韓関係が冷え込んだままでは、激変する北東アジアの安全保障への対応もおぼつかない。バイデン米政権も日韓関係修復の重要性について何度も言及している。今回の判決は外交努力をせよとのメッセージでもある。

2021 年
 4 月 23 日 (金)

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