【論説】韓国総選挙 関係改善の流れ止めるな

韓国総選挙は、最大野党「共に民主党」が議席の半数以上を獲得する圧倒的勝利を収め、尹錫悦(ユンソンニョル)政権の保守系与党「国民の力」が惨敗する結果となった。尹氏の政権運営がさらに厳しくなり、野党は対日政策にも批判を強めることが予想される。関係改善の流れを止めないためにも、今こそ日本は積極的な努力をすべきだ。

大統領就任から2年となる尹氏にとって、今回の総選挙は「中間評価」の意味合いを持つ。尹政権を支える与党は少数派で、国会での対応に苦慮してきたことから、政権と議会のねじれを解消し、安定した基盤で残り3年の任期を送ることをもくろんでいた。

しかし、共に民主党は議席を増やし、文在寅(ムンジェイン)政権で法相を務めた曺国(チョグク)氏の率いる革新系新党「祖国革新党」も躍進した。迅速な法案採決が可能となる5分の3以上の議席を野党勢力が占め、与党の自由度はさらに狭まることとなる。

こうした結果を招いた最大の原因は、尹氏の独善的な政治手法にある。批判に耳を傾けず、過去に自らがトップを務めた検察出身者を政権で厚遇し、妻の不正疑惑では特別検察官が捜査する法案に拒否権を行使した。物価高騰などで庶民の生活が苦しさを増す中で、身内に甘い姿勢は「不公正」と映り、政権審判を訴える野党の主張が支持を集めた。

2022年3月の大統領選で、尹氏は共に民主党の李在明(イジェミョン)代表を破って当選したが、その票差はわずか0・7ポイントで、民意が分断された中での船出だった。それだけに、尹氏には謙虚な姿勢が求められていたが、トップダウン形式で進めるワンマンな手法に、当初は様子見だった有権者も、次第に批判を強めてきたと考えられる。

もっとも、そうした尹氏のスタイルによって、事態が進展したものもある。

その一つが、日本との関係改善だ。歴史問題を巡って文政権下では日韓関係が冷え込み、その水準は戦後最悪とも言われた。だが、最大の懸案だった元徴用工訴訟問題の解決策を昨年3月に発表し、シャトル外交の復活など日韓関係は急速に改善した。

日本重視の姿勢には、韓国世論から「一方的に譲歩しすぎだ」との批判を浴びた。

だが、日韓関係の改善は尹政権にとって成果であり、総選挙での敗北を受けて、その方向性が揺らぐとは考えにくい。むしろ、米国との連携強化や、北朝鮮への強硬策と並び、対日政策も政権のカラーとして強化していく可能性もある。

一方で、野党は外交面でも尹氏に対して批判を強めるとみられ、日本との関係もその対象となることは確実だ。

李氏は日韓の歴史問題に関する尹氏の姿勢を強く非難してきただけに、対日政策の見直しを迫ってくるだろう。その背景に、歴史問題について日本からの積極的な対応がない、という韓国での根強い不満があることを見逃してはならない。

27年の次期大統領選を見据え、与野党内での権力抗争が高まっていく中で、日本との関係が政争の渦に巻き込まれることも予想される。尹氏は世論への丁寧な対応が求められるが、日本も長期的な関係維持に向け、歴史問題で韓国にくすぶり続ける不満を和らげるための、より一歩踏み込んだ対応をとっていく必要がある。