【いばらき春秋】

「もののあわれは秋こそまされ」と古人は言い、そこには衰えるような意味もあったらしい。しかし、錦秋という言葉があるように秋の紅葉は錦の織物に例えられ、むしろ山々の盛りを思わせる

▼今年は残暑の影響で紅葉の見頃の時期が遅れているようだ。錦の山を求めて旅をしたいと思うが、交通渋滞を思うとつい二の足を踏んでしまう。思い悩む季節でもある

▼それでも交通渋滞を苦ともせずに短い秋を求めて旅する人は多い。そのためなのか。11月は高速道路での事故が多い。この10年間に県内の高速道路では751件の事故が発生し、そのうち11月は98件を数え、やはり行楽客の多い5月(85件)や、8月(84件)を上回る

▼事故の6割以上が追突で、亡くなる割合も比較的高い。県警は「サービスエリアやパーキングエリアで小まめに休憩を取り、緊張感を持って運転してほしい」と呼びかけている▼気軽に旅ができる時代ではなかった江戸の人々にとって相模の国・大山の阿夫利神社へのお参りは人生の一大イベントだった。「お江戸日本橋七ツ立ち」と言い、午前4時ごろには出発し、宿も計画的に設けていたようだ

▼今も昔も旅の無事を願うなら、時間と心の余裕が何よりも大切である。(智)