【いばらき春秋】

その土偶を見た時、静かな衝撃を受けた。「人間は太古の昔から祈っていたのだ」。そう思うとなぜか、涙が出た

▼5年前、上野の東京国立博物館で国宝の「合掌土偶」を目にした。いわゆる体育座りの格好で、膝の上で手を合わせ指を組んでいる。青森・八戸市の縄文時代後期(約3500年前)の住居跡で発見された

▼その後、栃木・益子町の陶器店でこれを模したミニチュア土偶を見つけ、買い求めた。店主も土偶好きという。自宅居間のアップライトピアノの上に今も飾ってある。3人の娘たちが弾いていたピアノだ

▼時代は下り、那珂市瓜連の平安時代の住居跡から出土したかまどの石製支脚に、人の顔が彫られていたと本紙(今月19日付)が報じた。支脚は頭を下にした状態で使われていたという

▼県教育財団は「竈神(かまどがみ)信仰」との関連を指摘し「竈神は天に昇って家族の悪行を報告する。逆さにして天に昇らせないことで、家族の長生きを祈ったのではないか」と分析している

▼時代はさらに下って2023年、近所の神社へ遅い初詣に出向いた。3姉妹は結婚、通勤、通学のためそれぞれ家を離れた。鈴を鳴らし手を合わせた。「娘たちが健やかに暮らせますように」。時代を超えて人は祈る。(勝)