2019年9月23日(月)

【いばらき春秋】

1枚の写真に目を奪われた。春の花が咲く野原で神輿(みこし)を担ぐ人たち。福島県飯舘村で昨年あった祭りの場面だが、背後に見えるのはシートに覆われた放射能の汚染土だ。地域の伝統行事と、身近な汚染土。その対比がいまだ終わらぬ被害の現実を照らし出す

▼今月中旬、土浦市民ギャラリーでフォトジャーナリスト、豊田直巳さんの写真展「フクシマ〜尊厳の記録と記憶」を見た。主題は「叫びと囁(ささや)き」だ

▼福島第1原発事故から8年半。今も5万人以上が避難を強いられ、本県にも約3千人が避難する。変わり果てた町や村の姿、故郷を追われた人たちの写真に接し、改めてこの過酷事故への怒りが湧く

▼写真展のパンフレットに豊田さんはこう書いた。〈海外の「戦場」で出会った難民のように、ふるさとの町や村を追われた人々は、今も彷徨(さまよ)っています。ときに叫び、ときに囁きながら。その声に私たちが耳を傾けようと、傾けまいと、です〉

▼東京電力の旧経営陣3人が強制起訴された裁判で、東京地裁は無罪判決を言い渡した。誰も刑事責任を負わない。遺族にとって到底受け入れられるものではないだろう

▼事故の風化が懸念される。関心を持ち続けることが大切だ。二度と事故を起こさせないために。(菊)

2019 年
 9 月 24 日 (火)

メニュー
投稿・読者参加
サービス