【いばらき春秋】
桜前線が北上している。都内は先月30日に既に満開になった。寒の戻りの中、傘を差しながら花見に興じる人たちの姿が報じられた。水戸市や日立市でも27日に開花が観測され、満開を待つばかりである
▼きょうから4月、新年度。スタートの春である。新入生や新社会人は今、不安もあるが新しい学校、環境に向け、どきどき、わくわくの心持ちであろうか
▼思い起こさせる風景がある。前日の風雨で散った花びらがピンクのじゅうたんのように道路一面に広がっている。その上を、長靴を履いた小さな女の子が母親と手をつないで歩いてゆく
▼入学式の帰りだろうか。喜びを表すかのように、女の子の足は少し跳びはねている。記者時代、そんな一枚を撮れないかと駆け回ったが、ついぞ目当ての瞬間に巡り合えなかった
▼希望湧く一こまをつい思い浮かべてしまうのは、時代の厳しい「風雨」のせいであろう。値上げの春である。今月も食料品に加え、ティッシュやトイレットペーパー、電気・ガスといった生活必需品の値上げが相次ぐ
▼「休眠打破」。厳しい寒さを経て咲く桜のように耐えて良くなる日を待つ。物価高騰に「仕方ない」という世の声を聞いて久しい。「春よ、来い」と願わずにはいられない。(島)