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【意識調査】「大学へ行っておけばよかった…」コンプレックス抱く親、子どもをどう導く?

半数近くが子どもの「最終学歴」にこだわる(C)oricon ME inc.(オリコン)


 多くの業種で専門性が求められる部署や職種が増えているなか、企業内でも能力を発揮して成果を残す“実力重視”の傾向はより強まっている印象だ。しかし一方で、採用企業の選考差別とされる「学歴フィルター」問題が話題となるなど、有名大学出身であることのブランド価値は根強く残る現状があり、学歴コンプレックスを抱く学生の声も散見される。グローバル化が進み、実力本位の傾向が高まっているなかで、子どもの将来を想う親世代は「学歴」についてどんな考えを持っているのか。子をもつ親に調査した。



【グラフ】自身の最終学歴に“後悔”、「恥ずかしい」「印象がよくない」ほか…コンプレックス抱く理由



■若者たちは「最終学歴」に固執しない? 世代で異なる意識



 子を持つ親に、最終学歴についてコンプレックスの有無を聞くと、「ある」は33.6%、「ない」は65.1%、「答えたくない」が1.3%だった。全体の半数以上が「ない」とし、学歴コンプレックスを持つ親は3割強となった。男女別では「ある」と答えた男性が35.9%、女性が31.3%とほぼ同じ割合となり、性別による違いはないことがわかった。



 しかし、「ある」とする親を性別年代別に見ると、やや意識が異なってくることがわかる。男性では、40代は40.0%、50代は44.4%と4割以上の高い割合となり、逆に20~30代男性では20.9%で2割程度と低くなる。高度経済成長期~就職氷河期の時代に受験戦争を乗り越え就職した40代以上と、バブル景気以降のゆとり教育を受けて育った20〜30代では、学歴に対する感じ方、考え方が異なるのかもしれない。



 一方、女性では20~30代が30.3%、40代が32.6%、50代が35.6%、60代が26.7%。男性とは異なり、世代別の差がほとんどなかった。この背景には、日本社会の特性が考えられそうだ。



 今の時代、男女による雇用機会や仕事内容の差は少ないといえる。しかし、上場企業の役員数で見ると女性の割合は7.5%にとどまり(東洋経済新報社『役員四季報』調べ/2021年7末時点)、男性が圧倒的に多いのが現実だ。そうした社会のなかで、男性のほうが学歴による不遇や不利益を目の当たりにする機会が多くなっていることがうかがえる。



■有名大学出身=人生で得? 学歴コンプレックスを持つ親の半数以上が抱く“ホンネ”



 また調査では、学歴コンプレックスが「ある」とする親の半数近い45.5%が「大学へ行っておけばよかったと後悔している」と回答していた。大学名のブランド力で「有名でない学校だから恥ずかしい」(25.3%)という実体験からか、「希望の大学に入れなかった」(23.5%)といったことが負い目になっているのがわかる。



 とはいえ、学歴コンプレックスが「ない」と答える親が全体の6割以上となる多数派だ。その半数近くが「今の生活(仕事の報酬など)に満足」(44.1%)としており、その背景には「学歴より実力重視の傾向」(32.4%)、「就職や転職、昇進で困ったことがないから」(30.9%)といった実生活や社会において学歴差別を受けていない事実がある。



 企業が実力重視になるのは、利益を追求する事業体である以上当然だろう。とくに外資系企業やスタートアップなどのベンチャー系企業ではその傾向が強い。それは業績至上主義のなかで人を偏重し実績を重んじるからであり、「学歴=人の価値や生産性」ではないことはすでに誰もが知っている。「ない」とする親の割合が高いのは、そういう企業が一般的になっていることを示しているのかもしれない。



 一方、新卒採用の学歴フィルターや大企業内の大学派閥もいまだゼロではないだろう。そこにある種の価値や利益を見出す企業文化や社会は、時代を問わずあるということ。社会のどこに属するかで、学歴コンプレックスの有無は変わってくるといえそうだ。



■子の学歴にはこだわり、「職場でバカにされた…」親の実体験も影響



 では、子どもの学歴に対する親の意識はどうか。調査結果によると、「最終学歴にこだわる」が45.1%となり、「どちらともいえない」の28.8%、「こだわらない」の26.1%を大きく上回った。男女別にみると、「こだわる」と回答した親の割合は、男性が48.0%、女性は42.3%となり、男性のほうがやや高くなる。



「こだわる」の理由でもっとも多かったのが、「印象がいい、信頼してもらえる」(56.1%)。そのほか「有名企業に入社しやすくなる」(41.5%)、「有名学校出身のほうが、人生で得をする」(39.5%)、「自分が無名学校出身だから」(14.9%)と続く。



 性別年代別で見て特徴的だったのが、40代と50代の男性だ。「有名学校出身のほうが、人生で得をする」が、それぞれ46.7%、44.7%と比較的他の年代と比べて高い割合になる(他年代は3~4割程度)。終身雇用が当たり前だった時代の人生をかけた就職活動において、学歴が大きく影響したことが意識の根底にありそうだ。



 また、子どもの学歴に「強くこだわる」と回答した親のコメントを見ると、「たとえ社会常識がなくとも有名大学を卒業したというだけで有利」、「私立大出身だが、職場でバカにされた経験がある」、「世界をみても学歴社会が重要視されている」など、就職時のほか入社後にも学歴で嫌な思いや不遇な扱いを受けた自身の実体験を挙げている。



 一方、「まったくこだわらない」と回答した親からは、「有名大学出身でないことで苦労したことがない」、「学歴がいいからといって将来の生活が豊かになるわけではない」、「自分の人生は自分で切り開くもの」といった声が集まっている。やはりこちらも自身の経験やそれに基づく信念からの言葉であり、子どもの意志を尊重する自由奔放な人間性の形成を重視するタイプの親が多いようだ。



 なかには、学歴による人物査定に一定の理解を示す声もある。「学歴フィルターなどと言われるが、企業からすれば、最終選考まで絶対に残りそうにない人に応募の労力をかけさせないのもある種のやさしさ」とするのは、子どもの学歴に「こだわる」親。たしかに学歴には、その人の努力や知識、学力が紐づいている。熾烈な競争社会にさらされる企業にとって学歴は、より優秀な人材を確保するためのひとつの指標にもなるだろう。それも社会の現実だ。



■「本人の人生のプラスになる」親の想い、子どもの反応は?



 では、子どもたちの意識はどうか。親に聞いた調査結果では、学歴に「こだわる」25.8%、「どちらともいえない」48.6%、「こだわらない」25.6%。親に比べて「こだわる」子どもの割合が大きく下がり、もちろん年齢によって上下するものの全体としては学歴意識が低い印象だ。



 ここで注視したいのが小学生を持つ親と子どもの関係性だ。親も子も学歴に「こだわる」割合は、子どもが大学生の場合32.1%、高校生の場合27.8%といった高割合の年代に続き、小学生の場合が24.2%と3番手となった。これは、子どもが小学生のときに中学受験を意識する親子が、大学入試や就職時と同等に多いことを示している。



 小学生の親からのアンケートでは、「学力レベルの高い学校の方が、向上意識もモチベーションもレベルが高い生徒が集まっているため、本人の人生に必ずプラスになる」など、子どもの学力向上や人間形成のための環境として有名私立中学を選び、その受験を目指す多くの親子の姿が浮かび上がる。また、学歴至上の親にとっては、エスカレーター式の有名大学に入学するために、早い時期から付属中学を受験するほうが、チャンスが広がると考えているのだろう。



 加えて、小学生から学歴にこだわる親に共通するのが、やはり現実社会への意識だ。「学歴社会ではないと言われてはいるが、実際はまだまだ学歴重視」、「実力主義とはいえ、職歴や実績が無い場合には出身校で判断される」といった声も多数寄せられている。



 前述のさまざまなデータからは、学歴にこだわる親たちの多くが、年代は違ってもなにかしらの学歴差別的な経験をしてきたこともうかがえた。それがコンプレックスとなり、子どもにはそんな思いをさせたくないと考えるのはごく自然なことだろう。また、自身のコンプレックスになっていなくとも、厳しい現実社会を踏まえて、競争社会で少しでも優位に立ち、順風満帆な人生を送ってほしいとの思いから、子どもの学歴にこだわる親が多くなることもわかる。



 一方でこんな声もある。「レベルの高い学校を出ていたほうが、そこに行き着くまでの過程があるから、人として信頼できる気がする。ただ、だからといって全員がタフではない。成功とは必ずしも連動していないと思う」。学歴はたしかにひとつの指標にはなるが、学力や能力は人それぞれによって異なる。それは個人次第と考える人も少なくないようだ。



 実力主義がうたわれる日本社会だが、人々の意識や社会の一部にはいまだ学歴指標や派閥意識が

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