【その他】
ワキガやワキ汗が原因で“いじめ”の対象に…遺伝や若年層でも発症する腋臭症&多汗症 適切な治療を医師に聞く

共立美容外科大阪本院の院長・川上勉先生


 夏が近づくと“ニオイ”に関する悩みが顕在化してくる。その代表例が腋臭症(以下ワキガ)や多汗症だ。ニオイはいじめやコンプレックスの原因になりやすく、対人関係やメンタルへの影響も軽視できない。一方で体臭には個人差もある。そもそも人間は汗をかくのが当たり前で、「“症”と付くが果たして病気なのか?」という議論も。ワキガ・多汗症についての正しい知識と対処法について、共立美容外科の川上勉先生に話を聞いた。



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◆欧米にワキガ治療の概念は無い? 異性を惹きつける目的としてのニオイ「体臭は悪ではない」



──まず、ワキガと多汗症の定義を教えてください。



【川上勉さん】 どちらも汗が由来の悩みですが、汗の種類が異なります。ワキガの原因となるのはアポクリン腺から分泌される汗で、この汗には脂質などが含まれるため独特のニオイがあります。洗濯しても落ちにくいシャツの黄ばみはこの汗が原因です。一方で多汗症はエクリン腺から汗が過剰に分泌される状態を言います。この汗の成分は主に水で、ニオイもほとんどありません。



──何歳くらいから発症することが多いのですか?



【川上勉さん】 多汗症は神経の乱れなど原因が複合的なので、発症年齢もさまざまです。一方でワキガは第二次性徴期を迎える10~12歳頃から気になり出すケースが多いです。そもそもアポクリン腺は異性を惹きつける目的でニオイを発する機能とされているため、性ホルモンと密接な関係にあるんです。



──ワキガは“症”と付きますが、病気なのでしょうか?



【川上勉さん】 厳密には難しいですね。実はワキガの治療を行なっているのは、世界でも日本を始め東アジア圏だけなんです。体質的に欧米人のほうが体臭が強い傾向にあるのですが、“ワキガ=セクシー”みたいな価値観すらあります。一方で日本人は、清潔意識が高く、人のニオイも自分のニオイも気にしがちなところがあります。



──最近は、「スメルハラスメント」という言葉もよく聞きます。



【川上勉さん】 そうですね。体臭の捉え方にはそうした文化の違いによるところが大きいので、医療者の間でも「ワキガの治療は必要か否か?」という議論はあります。私もカウンセリングでは必ず「体臭は悪ではない」とお伝えするようにしています。



◆過剰な清潔意識が招く危険性、「自分はクサイ」と“自己臭症”に陥る人も



──医療者としてワキガの治療を提供する意義をどのようにお考えですか?



【川上勉さん】 なかには体臭がそれほど強くないのに「自分はクサイ」と深刻な悩みに陥ってしまう自己臭症という症状もあります。その場合はメンタルクリニックの領域になりますが、私たち美容医療の役割はコンプレックスを解き放つこと。治療によってニオイは確実に改善できるので、思い悩んでいるのであれば、まずは相談していただきたいと思います。



──ワキガは思春期頃から気になるケースが多いとのことですが、来院されるのも若年層が多いのでしょうか?



【川上勉さん】 男女比率はほぼ半々ですが、最も多いのが、母親が中高生の息子さんを伴って来院されるケースです。洗濯物のニオイなどで察し、子どものことを思い来院する方もいます。また、自分あるいはパートナーがワキガで悩んでいたから「子どもに同じ思いをさせたくない」という親御さんは多いですね。



──ワキガは遺伝するのでしょうか?



【川上勉さん】 これはイエスでもありノーでもあります。体質や皮膚の性質、毛深さといった体臭にリンクする遺伝要因はありますが、人間のニオイは多様なので、ワキガが100%遺伝するとは言い切れないんです。また両親がワキガでなくても、突発的に発症する場合もあります。ただ親御さんに連れられてきたお子さんに話を聞くと、意外と「別に気にしてない」と答えることも多いです。特に男の子は「部活で汗臭くなるのは当たり前」とあっけらかんと言う子もいますね。



──自分のニオイを自覚していないということでしょうか。



【川上勉さん】 そもそもすべての人間には体臭があり、自分のニオイには気づきにくいものなんです。また自分が気にしていなかったり、生活に支障がなければ治療する必要もないので、親御さんには「もう一度、お子さんと話し合ってから来院してください」とお伝えしています。



── 一方では、生活に支障のあるケースもあります。



【川上勉さん】 若い方は「いじめの原因=ワキガ」と考えてしまうケースが多い印象にあります。特に女の子は深く思い悩んでしまっている方を散見します。ただ人間には必ず体臭がありますし、またそのニオイの感じ方は人それぞれなので、その方のニオイが本当に不快なものなのかどうかは判断が難しいところです。



──「クサイ」「汚い」というのは、いじめの典型的な暴言です。実際に不快な体臭を放っていなくても、この言葉で傷つけられているケースも多いのではないかと考えられますが、いかがでしょうか。



【川上勉さん】 その通りなんです。ですから治療によってニオイが改善したからと言って、いじめがなくなるかどうかは、また別の話になってしまいます。ただ、それもあってか若年層は、中学から高校、大学に上がる時期などの環境が変わるタイミングに治療される方が多いです。若年層に関しては、見極めが必要です。



◆“終わりなき治療”を繰り返す人も…「改善の道を示すのが医療従事者の役割であり、同時に倫理観も問われる」



──ワキガの治療は何歳から可能ですか?



【川上勉さん】 何歳でも可能です。ただ再発率は若ければ若いほど高くなります。というのも、アポクリン腺は体の成長と共に作られていきます。数年後にまたニオイが気になって再手術となると、身体も費用面でも負担が大きい。個人的には、成長が終わった20代前半以降がベストだと思います。それでもどうしてもいまの状況が耐えられないという方には、再発の可能性をご説明した上で最善の治療を行います。治療を求める事情は人それぞれですが、その事情にことさら同情や介入をするのではなく、改善の道を示すのが医療従事者の役割だと思っています。不要な施術もそうですが、常に医師個人の倫理観が問われます。



──ワキガは切らない治療もできますか?



【川上勉さん】 切らない治療は主に2つ。まず汗の分泌を抑えるボトックス注射があります。ただし効果は約半年と限定的です。もう1つが汗腺をマイクロ波の照射で焼き切るミラドライという方法があります。こちらはアメリカで開発された機械で、日本でも厚生労働省に認可されています。ただしミラドライはニオイも多少は抑えられますが、あくまで多汗症の治療を目的に開発された機械です。冒頭で申し上げた通り、そもそも欧米ではワキガを治療するという概念がないんですよ。



──“切らないワキガ治療”だけをメニューにしている美容外科クリニックもあります。広告で低価格や手軽さをうたうクリニックも多く、トラブルも耐えません。



【川上勉さん】 そこは注意が必要ですね。ワキガの原因であるアポクリン腺はマイクロ波の届かない皮膚の深い部分にもたくさんあるので、ミラドライによる治療では残ってしまうことも多い。ミラドライを明確にワキガ治療とうたっているクリニックは、ちょっと不誠実かなと思ってしまいます。



──ニオイの改善にはやはり外科手術が効果的なのでしょうか。



【川上勉さん】 根本的な改善にはアポクリン腺を除去する手術が最も効果があります。ワキガの外科手術を提供している美容外科クリニックは少ないのですが、いま申し上げた3つの治療法は目的も異なり、メリット/デメリットもあります。クリニックを選ぶ際には、注射・照射・手術の選択肢を用意しているところがいいのではないかと思います。



──ワキガの治療を検討するにあたって、知っておいてほしいことはありますか?



【川上勉さん】 治療によってニオイを限りなく抑えることはできます。それでも生きている以上、体臭がゼロになることはないんです。なかには無臭になりたいと“終わりなき治療”を繰り返してしまう方もいますが、体が成長しきった方なら手術は1回で十分です。体臭は決して悪ではないこと、そしてゼロにならないことを覚えておいていただけたらと思います。



(文/児玉澄子)



1999年、田辺製薬株式会に社入社。2008年、大分大学医学部医学科を卒業。2008年、八戸市立市民病院に入職。2012年、神奈川県・日本鋼管(にほんこうかん)病院・整形外科に入職。2015年、共立美容外科に入職。2018年、共立美容外科神戸三宮院の院長に就任。2

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