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アリエル・ベル・ジャスミン・ムーラン…ディズニー第二黄金期の伝説のアニメーターが語る100年続く秘けつ
ウォルト・ディズニーがアニメーション・スタジオを立ち上げてから今年で100年。これまで世に送り出してきた長編アニメーションは全61作。その中でも、1989年公開の『リトル・マーメイド』からの約10年間は、多くの作品が高評価・好成績を挙げ、“第二黄金期”と称される。
【動画】ディズニー100(読み:ワンハンドレッド)特別映像
その当時から活躍し、アリエル(『リトル・マーメイド』)、ベル(『美女と野獣』)、ジャスミン(『アラジン』)、ムーラン(『ムーラン』)など、人気のディズニープリンセスのアニメーションを監修し、ディズニー・アニメーションの歴史を築いてきたアニメーターのマーク・ヘン氏が来日。時代や国境を超えて愛される物語とキャラクターが生まれた秘話、さらには次の100年に向けた思いを語ってくれた。
マーク・ヘン氏は、7歳の時にディズニー・アニメーションの名作 『シンデレラ』 に触発され、アニメーターになりたいと宣言。1980年、カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)のキャラクターアニメーション学科を卒業し、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで伝説のアニメーター、エリック・ラーソンの指導を受けながらキャリアをスタートさせた。最初に携わった作品は『キツネと猟犬』(80年)。
83年に、ミッキーマウスが30年ぶりにスクリーンに登場する作品となった『ミッキーのクリスマス・キャロル』で、ミッキーマウスのアニメーションも担当した。多数のプロジェクトでその才能を発揮し、社内のみならず、業界で最も多作で尊敬を集めるアニメーターの一人となる。2013年にはアニー賞でアニメーション界の生涯功労者として「ウィンザー・マッケイ賞」を授与。18年には、ミッキーのスクリーンデビュー90周年を記念して、ミッキーマウスの公式肖像画家も務めた。
■学び続け、作り続けて次の100年へ
ウォルト・ディズニーが兄のロイ・ディズニーとアニメーション・スタジオ(当初はディズニー・ブラザース・カートゥーン・スタジオ)を設立して100年。2Dの手描きアニメーションから1980年代にCGを導入し、2Dと3Dを組み合わせた作品制作を経て、2000年代初頭から本格的にCGアニメーションへと移行。時代が変わっても、受け継がれていく何かがあるから、常に最高峰のクオリティで作品を生み出し続けることができるのだろう。
「そのように見えているということであればとても幸いなことです。鉛筆で描いたキャラクターに命を吹き込み、生き生きと動かす。まさにウォルトから始まったレガシーは、今も受け継がれていると思います」と、マーク・ヘン氏は話す。
「ウォルトと彼が自ら集めたアニメーター仲間がいて、1930年代以降のスタジオをけん引したアニメーターたち(“ナイン・オールド・メン”と呼ばれる9人の伝説的アニメーターが有名)がいて、その歴代のアニメーターたちからたくさんのことを教わった私たちの世代がいて…。先輩から『次はあなたが伝えていく番だ』と、言われたこともあります。次の世代にバトンを渡す、そのために私も学び続けてきました。後輩たちに、『あの時、マークが言っていたこと覚えている?』と、思い出してもらえるような、役に立つ何かを伝えることができていたら幸いです。知識・経験、レガシーというのは、私たちの場合、作品を作ることではじめて生きてきます。ディズニーは100年、時代の要請にも応え得る物語やキャラクターを生み出し、最高峰のアニメーション作品を作り続けてきました。次の100年もきっと、作りながら継承されていくと思っています」
■『美女と野獣』ベル
ベルは、私たちのプリンセスの中では年長で、落ち着いている女性。ディズニープリンセスは皆、それぞれ強さを持っていますが、その中でもベルは勇敢な女性です。野獣に対してもひるむことなく、自分が城に残る代わりに最愛の父を解放するよう、交渉するんです。ベルにとっては、自分のことよりも自分を理解してくれた父親の方が大切だったんです。そんな彼女の心の美しさは本当に尊敬に値する。誰もが憧れるようなキャラクターをアニメーションで表現していくのは、とても楽しい作業でした。
【MEMO】1991年公開。魔女の魔法によって醜い野獣の姿に変えられてしまった王子。魔法を解く方法はただひとつ、「真実の愛」を知ること。そんな野獣の住む城に捕らわれたベルは、徐々に野獣の優しさに気づき、次第に2人は心を通わせていく。二人だけの晩餐会とダンスのシーンは、複雑なカメラワークを2次元のアニメーションで実現し、『リトル・マーメイド』と同じアラン・メンケンが音楽を担当。アニメーション映画史上初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされた。
■『アラジン』ジャスミン
ジャスミンは、プリンセスとしての役目を果たすことには前向きですが、次の誕生日までに結婚をしなければならず、自由に身動きがとれないことに不満を募らせていました。それで、ついに城を抜け出して、街でアラジンと出会うんですね。そこから彼女の個性が解放されていく冒険が始まります。
『アラジン』といえば、魔法のじゅうたんに乗って、満月の夜空へ飛び出していく「ホール・ニュー・ワールド」のシーンが有名ですが、私が大好きなシーンは、アラジンがジャスミンを自分の隠れ家に案内し、そこから見える王宮を見ながら夢を語る場面。彼女はアラジンと反対のことを思っていて、目を背けてしまいます。対照的な二人を描いていてとても面白いと思います。
【MEMO】1992年公開。貧しくも清らかな青年アラジンはジャスミン姫と出会って一目惚れ。ランプの魔人・ジーニーと出会って王子にしてもらうが、邪悪な魔人ジャファーに命とランプを狙われる。「ホール・ニュー・ワールド」は世界的ヒットを記録し、アカデミー歌曲賞やグラミー賞ソング・オブ・ザ・イヤーなどを受賞。ジーニーが歌うコミカルな「フレンド・ライク・ミー」など名シーン満載。
■『ムーラン』ムーラン
ムーランもとても個性的なキャラクターです。両親想いの優しい女の子ですが、二人が望む理想的な娘になれない事に苦悩していました。古いしきたりにとらわれず、のびのびと過ごしたいけれど、由緒正しい家柄を誇るファ家を守りたいという思いも人一倍で、父に代わって戦地へ行くことを決め、黒く艶やかに伸びた髪を切り落として、少年になりすまし、軍へ入隊します。その覚悟は並大抵のことではありません。
また、ムーランは、王子様との出会いを待っていたわけでもなければ、それを望んでもいません。軍に入隊して、自分を鍛えてくれるシャン隊長に淡い憧れを抱くという、とてもユニークなキャラクターでした。軍隊の仲間、ヤオ、チェン・ポー、リンらに女装をさせるという策を思いつくなど、とても機知に富み、機転が利くすてきなキャラクターです。
【MEMO】1998年公開。病気の父に代わって従軍して各地の戦いに身を投じ、勝利を収めるという中国の伝説「花木蘭」をモデルとした、ディズニーのアニメ史上初めてアジア人女性が主人公になった作品。主題歌の「Reflection」はクリスティーナ・アギレラが歌唱。ムーランを護るファ家の守護竜の声優をエディ・マーフィが担当したことも話題になった。
■ディズニー100(ワン・ハンドレッド)フィルム・フェスティバル、10月開催
創立100周年を迎えるディズニーの長編アニメーション作品は、世界初の長編カラーアニメーション『白雪姫』から始まり、全61作品。その中から厳選された8作品を全国100ヶ所の映画館で上映する特別イベントの開催が決定。上映作品、開催日、会場、チケット発売などの詳細は、今後順次発表される。











