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「この症状は一体どれ!?」マイコプラズマ、コロナ、インフル、溶連菌…秋冬流行の感染症、重症化前に知りたい判別や受診の目安を医師が解説
夏が終わり、気温も低下。空気も徐々に乾燥していく季節になった。そうなってくると気になるのは、風邪などの感染症だ。新型コロナウイルスやインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、RSウィルスなどさまざまな感染症が次々に流行している今年。種類が多かったり、症状が似ていたり、「一体なににどうやって気をつければいいの!?」と、混乱する人も多いだろう。この秋冬に注意すべき感染症について、クリニックフォア内科専門医に聞いた。
【一覧】「この咳ってどの感染症?」一目で判別、感染症一覧
■マイコプラズマ? 風邪? インフル?それとも…感染症の判別と対策
――寒くなってくると急増する感染症。代表的な風邪のほか、風邪とよく似た症状の感染症も多いですが、それぞれの特徴や予防法について教えてください。
【風邪】
「皆さんご存知のとおり、10月~3月にかけて流行しやすく、主な症状としては鼻水、喉の痛み、咳、くしゃみなどがあります。特徴は、軽度の症状が多いということでしょう。予防策としては手洗いやうがい、マスク着用が効果的です」
【インフルエンザ】
「インフルエンザが流行りやすいのは11月~3月頃。高熱、咳、喉の痛み、筋肉痛などが起こり、流行期に急激な高熱が出たらインフルエンザを疑ってよいかもしれません。今夏は流行しませんでしたが、そのぶん今後に備えたほうがいいですし、ワクチン接種も10月から始まります。大人も子どもも同様の症状が出るので、注意が必要です。予防策はワクチン接種、手洗い、マスク着用も効果的です」
【新型コロナウイルス】
「ウイルスは空気が乾燥する時期に広がりやすいので、10月~2月に流行が予想されます。昨年も冬にかけてピークがあったので、今年も注意が必要です。今年は夏前にも流行ったように、波はいつでも起こり得ます。味覚・嗅覚障害など特徴的な症状もありますが、他の風邪やインフルエンザとの区別は症状だけでは難しいです。新しいワクチン接種も始まるので、可能ならば打つことをお勧めします。予防策はこれまでと同様、手洗いや手指消毒、マスク着用は今ももちろん有効です」
【マイコプラズマ肺炎】
「10月~3月に流行りやすく、咳、発熱、倦怠感などが起こります。特徴としては乾いた咳が出ることで、手洗いやうがい、マスク着用が予防策となります。注意点は合併症による重症化があることで、まれですが髄膜炎など重い症状が発症することも。症状が重たい場合などは抗生物質などが用いられますが、基本的には時間が経てば治る病気でもありますので、対処療法がほとんどです。風邪のような症状の上で疑いがあれば、周囲に感染している人がいないか確認してみてください」
【RSウィルス】
「RSウィルスは夏前に流行ることもありますが、多くは秋冬、10月~3月頃と言われています。主な症状は鼻水、咳。そして最も特徴的なのは呼吸困難です。これも予防策は手洗い、うがい、マスク着用。また今は高齢者向けのワクチンも出ているので、予防のためにワクチン接種するのも良いと思います」
【咽頭結膜熱】
「秋冬だけというわけではないのですが、昨年イレギュラーな秋冬感染が起こり、アラートも出ていました。今年も注意するに越したことはないでしょう。発熱、喉の痛みが起こる感染症で、特徴的なのは結膜の充血です。そもそもはプール熱というぐらいで、夏の病気。アデノウィルスが要因で起こり、お子さんに目やに、結膜炎などがあればその疑いがあります。タオルや食器の共有は避けるのが無難です。罹患したお子さんが学校へ行くとそこから流行が起こる可能性があるので、受診と検査は急いで行うことが大事です」
【溶連菌感染症】
「昨年後半から増えており、この夏はだいぶ下がりましたが、直近の東京都の報告ではまた上り調子の傾向。危ないサインが出ています。一般的には10月~4月に流行り、喉の痛み、発熱、発疹が出ます。特徴的な症状としては、扁桃や首のリンパ節の腫れ、舌が赤く腫れる“いちご舌”。抗生物質で適切な治療ができるので、疑わしい時はすぐに受診したほうが良いでしょう」
――どの感染症も、手洗いやうがい、マスク着用などコロナ禍での予防策とよく似ていますね。
「そうですね。コロナ対策自体が接触感染対策、飛沫感染対策なので、ここに挙げた感染症のほぼすべてに役立ちます。違いで言えば、咽頭結膜熱は目やになどから感染率が上がるので、タオルの共有を避けること。溶連菌は皮膚から入ると喉の症状とはまた別の症状を引き起こすので、肌を清潔に保つことも大事です。インフルエンザと新型コロナ感染症はご存じの通り、ワクチンが有効です。また、これら複数の感染症に同時に罹患することもあるので、心配な症状が出た場合は医師の指示に従ってください」
――ただ、あまりに皆が不安になりすぎて病院へ殺到すると、コロナ禍の教訓として、医療崩壊のような事態も起こると思います。何か患者自身ができることは?
「どれも風邪に似た症状が出るので、市販薬で様子を見てみるのが一つの方法。そこから、目やにがひどければ咽頭結膜熱かもしれないですし、喉の痛みが強いと溶連菌の可能性もある…と判断していくことです。ただ、とくにインフルやコロナは高熱が出るため、ご心配になることもあると思います。糖尿病などの持病がある方は合併症を起こす可能性もあり、重症化は避けなければなりません。そういったこともあるので、無理をせずに医師に相談してほしいと思います」
――オンライン診療で相談してみるのはどうでしょう?
「医師に相談だけでもしたい、自宅から出るのがつらい場合はオンライン診療を利用してみてください。とはいえオンラインだと、溶連菌が疑われるときに喉の奥がしっかり見られない、マイコプラズマが疑われるときに胸の音が聞けない…など十分な検査や身体診察ができない場合もあります。オンライン診療で処方された薬をまずは服用し、その後経過に応じて対面診療で相談へ移行するなど、臨機応変に活用していただければと思います」
【監修】
日本内科学会認定医。東京都済生会中央病院で研修後、同院にて糖尿病をはじめとした総合診療や医学教育に従事。現在は、若い世代の糖尿病など慢性疾患管理の向上などのため、質の高く、アクセスの良いプライマリーケアクリニックの実現や医療情報の提供を行っている。