【エンタメ総合】
ラップ、高学歴、キャスター…アイドルの新境地を切り開いてきた櫻井翔 紡ぎ出す“言葉”が応援の原動力に

『ベストアーティスト2024』では、m-floと櫻井翔のコラボが話題となった


 現在『ARASHI FILM CONCERT TOUR 2024-2025』が開催中の嵐。25周年企画として、公式YouTubeでは過去のMVを公開。デビューから現在まで、メンバーの魅力あふれる映像を観たファンからはその時々の“推し”にまつわるエピソードが話題となり、特に櫻井翔に関するコメントがSNSで拡散。その名前がトレンド入りするなど盛り上がりを見せた。櫻井翔は、アイドルという枠組みをいかに広げていったのか? “報道キャスター”としての立ち位置、“完璧なアイドル”ではなく、あえて“不完全さをもさらけ出す”数多のキャラクターをいかに展開してきたか、あらためて考察する。



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■25周年企画・FILM CONCERTで起きた「#櫻井翔を見て」現象



 嵐デビュー25周年およびLIVE DVDのBlu-ray化を記念して、11月3日から2025年3月下旬にかけ、嵐ファンクラブ会員限定のライブ上映イベント「ARASHI FILM CONCERT TOUR 2024-2025」が開催。また25周年企画の一環として、イベント同時期に嵐YouTube公式チャンネルにて、Music Video合計71曲が公開されている。



 “嵐あるある”といえば、嵐メンバー主演のドラマ主題歌で、主演を務めるメンバーがMVのセンターになるという流れがあるが、それもあいまって、MVやパフォーマンスの感想と同時に、当時のドラマの話題、バラエティでの活躍、メンバー間の関係性までエピソードが波及している。そのなかでも、キーワードがXでトレンド入りするほど突出して拡散されていたのが、櫻井翔にまつわるエピソードだった。



 まず目を引いたのは、「国民の初恋」「とにかく顔が良い」というコメント。ファン心理としては、「顔がいいから応援していると安易に思われたくない」ということもあるはずだが、もはや脊髄反射といってもいいのだろうか。「Troublemaker」をはじめ、「Endless Game」「明日の記憶」など、当時のビジュアルについて言及するコメントが、まるでPCやスマホ画面からあふれ落ちるのではないかと思うほど、ズラリ。



 さらに引用コメントでは、それぞれが推す、その曲ごと、時代ごとの櫻井翔のリンクが貼られ、「~の櫻井翔くん見て」と、瞬間的なネットミームとして皆がこぞって同じフレーズを多用する。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とは、ビートたけしによる初期の名言、名ギャグだが、「櫻井翔の顔、みんなで褒めたっていいじゃない」的にここぞとばかりにファンたちの“櫻井愛”が噴火しており、その熱さもまさにマグマ級であった。



■「大卒」「HIPHOP」「選挙番組キャスター」…アイドルの幅をさらに広げた先駆者



 2006年から『NEWS ZERO』(日本テレビ系)のニュースキャスターとして個人活動の幅を広げた櫻井。現在、選挙特番でも活躍。20年前では、アイドルが選挙特番にまで出演すること自体が考えられなかったことだが、そのポジションを切り開いたのはまぎれもなく櫻井だ。学歴や知的さがアイドルに求められていなかったなかで、学歴を兼ね備えるからこそ可能な仕事を提示した。



 またSTARTO勢のライブにおいて、初めてコール&レスポンスを導入したのは櫻井ではないかと言われている。当初は櫻井からコールしてもファンからのレスポンスはなかった。だが続けていくうちに徐々にレスポンスが来るようになり、現在のSTARTO 系アイドルによるライブでのコール&レスポンスが定着。



 HIP HOPをアイドルシーンに根付かせた点おいても櫻井の功績は大きい。嵐による多くの楽曲にはラップが挿入されているが、当時は「アイドルがラップなんて…」と相当なネガティブな意見も散見された。対して櫻井は批判に臆せず「我が道を行く」スタンス。それはリリックからも垣間見ることができる。例えば「Anti-Anti」(2004年)。「(嵐?いや、興味ないすね。 ジャニーズでHip‐hopって言うのもねぇ) ならアイドルがどれほどか見せてやるよ」からはじまり、“アイドル”というワードで韻を踏んでいく痛快なリリックは、当時の櫻井にしか書けないものだった。



 今では、グループに1人はいるイメージの“ラップ担当”や“高学歴キャラ”。それをアイドル業と巧みに両立させながら、エンタメとして、文化としてお茶の間に馴染ませたパイオニアだったと言える。



■“素”や“余白”をいかに解禁するか、嵐メンバーとの関係性が要に



 バラエティの活躍を見ていくと、アイドルとして先輩グループ・SMAPが成し遂げた功績は大きい。その土壌を引き継ぎ、グループとしての連携技やバランス感覚を研ぎ澄ませ、魅せていったのが嵐というイメージ。過去に二宮和也がラジオで5人の役割について言及した際、二宮自身を“ツッコミとアドリブ対応”、櫻井は“進行とフォロー”、大野智と相葉雅紀は“ボケ”、松本潤は“MJ”と説明していたことも。



 司会進行、キャスター、俳優、バラエティ、作詞まで。なんでも対応する今の姿からなかなか想像がつかないが、当時櫻井が背負っていた立ち位置は、順当なアイドルのイメージとは相反するものもあったように感じる。冠番組『ひみつの嵐ちゃん!』(TBS系)のコーナー「マネキンファイブ」で認識された“ダブルパーカー”や“迷彩好き”キャラ。『VS嵐』(フジテレビ系)で露になった運動苦手キャラ…。今思えば、高学歴で完璧なアイドルというスタンスから、敢えて距離を置くように“不完全さ”を強調していた。これは櫻井であったからうまく立ち回れたが、それでも“カッコいい”を成立させていたことは、驚異というべき立ち居振る舞いといえる。実際、FILM CONCERTをフックに広がったファンの感想には、当時の櫻井を想うコメントも多い。



「嵐の中でイケメン王道キャラといえば松本潤さんでした。その松本さんが“2006年から嵐としての手応えを感じ始めた”と話していたのですが、櫻井さんもその辺りからファンのみならず一般でも頭角を現してきたのではないか」と語るのはテレビ誌などで長く嵐の取材を続けてきたメディア研究家の衣輪晋一氏。「ドラマファンの間では、大きな転機は2002年『木更津キャッツアイ』ではないかと思います。さらに2006年に、『news zero』キャスター、『ハチミツとクローバー』で映画単独初主演と、一気にその活躍の幅が一般層に広がったように見えます」(同氏)



 『ハチミツとクローバー』では、みんなが憧れる“大学生の青春”を表現。『山田太郎ものがたり』(2007年)で完璧な男子高校生役を演じさらにイメージを定着した。「さまざまな紆余曲折の末、アジアツアー開催の2008年以降には、今に近い“櫻井翔”というジャンルを確立させていたように思います。この頃から『VS嵐』もスタートしていますが、これがゴールデンに昇格したことから、さらにその番組回しに磨きがかかるように。洗練されたイメージが定着し、今となっては“好きなMC”ランキングでも常連クラスになりました」(衣輪氏)



 「大卒アイドル」「慶應ボーイ(幼稚舎から)」「キラキラアイドル」の文字面だけ見ると、あまりにも“スキがなさすぎる”。いかに嫌味なく、“櫻井翔”を成立させることができたのか。前出の衣輪氏は「嵐で話のオチをつける(イジられる)のは、それまでおおむね、相葉雅紀さんや大野智さんでしたが、櫻井さんも『山田太郎ものがたり』(TBS系)あたりからフレンドリーでイジられOKな雰囲気に。的確なツッコミが得意だった二宮和也さんとの現場での印象に引っ張っていかれた印象です。これにより、他者が入り込めるスキが解錠した。ここ10年ぐらいは一般の人々にも、バク転ができない、ファッションセンスが壊滅的など、その愛すべき“ポンコツ”ぶりが認知され、ついには“櫻井翔”ブランドが天下を取ったのです」と解説する。



 そのほか同氏は大野や松本が常に櫻井を“かっこいい”と言っていたことにも言及。相葉は櫻井を「翔ちゃん」と尊敬と親しみを込めて呼び、グループの構図としてメンバーたちが櫻井へのイジリに同調しすぎず、グループ全体でキャラが育まれるのを見守っている空気感があった。さらには「取材での嵐での座談会でも、まとめ役は櫻井さんになることが多く、そうしたマスコミからの期待に応える形、報道された形からも、櫻井さんのイメージは作られていったように見えました」と話す。



■櫻井が紡ぐ“言葉”に寄せられる期待「推す活力にもなるし、原動力になる」



 そんな個の武器を研鑽していった櫻井の強みの一つに“言葉”がある。今年春には「櫻井翔 未来への言葉展 PLAYFUL!」を開催。母校の慶応幼稚舎150周年の記念式典では、披露された合唱曲「ペンの指す方へ」の作詞をしたことも報じられた。



 そもそも櫻井は嵐のラップ担当。グループが駆け上がる前から、ファンと

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