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【エンタメ総合】
『ガッチャード』湊陽祐プロデューサー×『ガヴ』瀧島南美プロデューサー対談 プロデューサーが考えるプロデューサーの仕事とは?
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昨年8月まで放送された『仮面ライダーガッチャード』、21日から期間限定上映するVシネクスト『仮面ライダーガッチャード GRADUATIONS/ホッパー1のはるやすみ』の湊陽祐プロデューサー、『仮面ライダーガヴ』の瀧島南美プロデューサーという東映特撮を支える若手プロデューサーの2人。現在、東映では特撮作品のプロデューサーの募集を開始している。共に転職組である2人に特撮作品のプロデューサーとは、海外展開についてなど、ORICON NEWSがさまざま聞いた。
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■プロデューサーの仕事とは? 転職のきっかけも
湊陽祐プロデューサーは、2014年にアニメ制作会社へ就職。制作進行から制作デスクとして5年間勤務し、東映の「特撮専任プロデューサー募集」に応募し、2019年に東映へ入社。『仮面ライダーゼロワン』、『仮面ライダーセイバー』、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』にプロデューサー補として参加し、『仮面ライダーガッチャード』でプロデューサーを務める。瀧島南美プロデューサーは、2017年にディスプレイ業の会社へ就職。東映の「特撮専任プロデューサー募集」に応募し、2019年に東映へ入社。『魔進戦隊キラメイジャー』、『機界戦隊ゼンカイジャー』、『仮面ライダーギーツ』、東映ムビ×ステ『仁義なき幕末』にプロデューサー補として参加し、『忍者戦隊カクレンジャー 第三部・中年奮闘編』『仮面ライダーガヴ』でプロデューサーを務める。
――東映のプロデューサーになる前は、どんな仕事を?
【湊氏】前職はアニメ制作会社に新卒で入社しました。そこで制作進行という仕事からスタートして、まずは1クールのテレビ作品で各話の進行を担当しました。その後、劇場作品や、2クールのテレビ作品で制作デスクという役割に。制作進行を統括しながら全体スケジュールを管理する立場になり、仕事漬けのなかなか大変な生活をしていました。そして、今は法改正されましたが、当時は作品中の代休を作品終わりにまとめて取ることができたので、「9月から12月までまるっと休みです」という時期があったんです(笑)。そしたら、ちょうどその時期に前回の特撮プロデューサー募集で白倉伸一郎さんのインタビューが出た。暇だし、記念に受けてみようか、ということで書類を出しました。その後、1月から別作品の制作デスクが決まっていたんですが、東映に受かってしまったので、転職することになりました。そのアニメは引き継ぎもあり、3話まで関わらせていただき、その納品をし切って、5月1日の令和になった当日に入社して『仮面ライダーゼロワン』に携わることになりました。
【瀧島氏】私は店舗の内装の現場監督をやっていました。社会人になってからの通勤時間で、Amazon Prime Videoで『電磁戦隊メガレンジャー』があるのを見かけて、「当時好きだったな」と思って見直していたんです。「特撮って大人になってもこんなに面白いんだ」と衝撃を受けて、日々の楽しみになっていきました。例えば地方の仕事での長期出張中は、毎日現場を終えて、1話ずつ『特捜戦隊デカレンジャー』を見るというのを日課にしたりして。『ルパパト』開始をきっかけに現行も見始めて、少しずつ特撮を見る生活を続けていた時に、ちょうどツイッターで特撮プロデューサーの募集を見かけたんです。社内でもエンタメに近い部署に異動したいなと思っていた時期で。でも、まだ2年目ということもあって、異動が受理されなそうだというのも悟って、記念受験的に、今後あるかわからない募集だから応募してみようと思って書類を出したのがきっかけです。
――いざ転職してみて、特撮のプロデューサーとは、どんな仕事でしたか?
【湊氏】クランクインを1か月後に控えた『仮面ライダーゼロワン』のAP(アシスタントプロデューサー)に配属されました。入社翌日にオーディションの3次審査でした。そのままあわただしく、クランクインを迎えました『ゼロワン』はAPとして1年間担当し、番組が終了するころに、『仮面ライダーセイバー』の立ち上げからAPとして参加しました。『セイバー』はテレビシリーズとともに、最後に撮影したVシネクストまで関わらせてもらいました。その後、スーパー戦隊シリーズの『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』を担当して、次の『王様戦隊キングオージャー』を準備すると思っていたところに「次の仮面ライダーをチーフでやってくれ」ということで『仮面ライダーガッチャード』を担当することになりました。今回の『ガッチャード』Vシネクストの仕上げ以降は、一緒にやってた同僚たちが『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の担当が決まり、孤軍奮闘頑張ってます(笑)。
【瀧島氏】私も入った当日ぐらいに「次のスーパー戦隊のキックオフがあるので参加してね」ということを聞いて(笑)。『魔進戦隊キラメイジャー』立案の会議に入れてもらいました。湊と、もう1人の同期は業界人だったので、ゼロワンに合流していきなり実践に。私は業界未経験だったので、ちょっとスローに、いちから入れてもらった感じでした。そこから『キラメイジャー』が終わって『機界戦隊ゼンカイジャー』の担当となりました。その後、『ゼンカイジャー』が終わったら今度は『仮面ライダーギーツ』で仮面ライダーの担当に。『忍者戦隊カクレンジャー 第三部・中年奮闘編』もありつつ、今は『仮面ライダーガヴ』をやっています。
――どんなスケジュールで動いているのでしょうか?
【湊氏】作品のステータスによって全然変わってしまいます。放送と撮影が同時並行してるぐらいの時期は、基本的に毎週、本の打ち合わせ、オールラッシュというつながった映像のチェック、初号試写だったり、それに関わって本編集とか。さらに現場の撮影などが並行してあります。僕の場合は結婚して子どもがいるというのもありまして、週に1日、できれば土日で必ず休む、家にいる、というのを約束ごとにしています。それ以外は基本仕事しつつ、夜早く帰れる日とか、ちょっと仕事が遅い日の朝とかに家事をしています。それだけ決めて、あとは全部仕事入れるみたいな感じです。1つのシリーズを担当するとそれが大体1年半程度続きます。
【瀧島氏】私は(湊さんのような)家庭生活がないので、何か別のことをしている以外は何らかの仕事に取り組んでいるイメージです。この仕事は会社にいなければできないということが少なくて、パソコンとスマホがあればできてしまうことが多いから、無限に仕事をしようと思えばできてしまうんですよね。だから、メリハリをつけないとダメだと感じています。
――アシスタントプロデューサーを経て、今はプロデューサーとして活躍しています。仕事の違いとは?
【湊氏】大きくプロデューサーの仕事は、本作りから放送して宣伝するところまで全部に仕事がある。その仕事をどう割り振るのかも含めて、チーフプロデューサーはどこまで自分がやるかを決めるのが違うところですね。みんなと一緒に周りを見ながら、人がやっていないところとか、自分が一番得意だなと思えるところを手伝ったりしながらやる。だから普通の管理職の仕事というか、人に仕事を振る作業がチーフの一番難しかったところですかね。
【瀧島氏】私は『仮面ライダーガヴ』でプロデューサーという肩書きでやらせてもらってるんですけれども、チーフは武部(直美)プロデューサーが立っていて、業務内容自体はAP時代と変わらないところもありつつ…。でも、塚田(英明/東映プロデューサー)さんの教えで「チーフのつもりでやれ」とはAPの最初のころから言われていましたね。プロデューサーになったら、いろんな経験に裏打ちされる納得感というか、より深度のある言葉を持たないといけないなと思っています。『忍者戦隊カクレンジャー第三部・中年奮闘編』の時はチーフPを担当したのですが、チーフのカラーがある程度そのチームのカラーにもなる気がしていて。『ガッチャード』は湊(陽祐)の名前の通り“陽”な雰囲気が、現場にも伝播するんですよね。それを醸成できるように、というのは特に気をつけていました。
■最初の仕事は『Over Quartzer』 歴史の1ページを目撃
――もともと特撮作品とは、どんな関わり方を?
【湊氏】ちょうど2000年が小6なんです。『仮面ライダークウガ』が小6で放送されて、中1から『仮面ライダーアギト』を見始めているんです。もうそこからは付き合い方がまるっと変わってしまいましたね。子どもとして見ていた1990年代のヒーロー作品も好きでしたが、自分が中学生になると見なくなる友だちが増えて、見てるのはオタク的な友だちばかりになりました。そんな中、放送された『仮面ライダー』シリーズや『特捜戦隊デカレンジャー』が本当に面白くて。自分も一オタクとして、インタビューを漁るように読んだりしました。だから2~3歳に観た『地球戦隊ファイブマン』、『鳥人戦隊ジェットマン』、『特救指令ソルブレイン』から離れる時期がなかったまま大人になりました。アニメ会社に入って、本当に忙しすぎて見られてない時期が『仮面ライダードライブ』、『仮面ライダーゴースト』あたりでありましたが、