
【映画】
ポン・ジュノ監督、宮崎駿作品からの影響を語る 最新作に王蟲みたいなクリーチャーが登場

映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)で映画史を塗り替えたポン・ジュノ監督が、アカデミー賞受賞後初めて手がけた最新作『ミッキー17』(3月28日公開)。本作より、主人公ミッキー(ロバート・パティンソン)が謎のモンスター“クリーパー”に引きずられ、絶体絶命に陥る本編映像が解禁された。
【動画】王蟲みたいなクリーチャーが登場する本編映像
■ “クリーパー”に連れ去られるミッキー、その目的は?
解禁された映像は、落下事故に遭ったミッキーが巨大なクリーパーに引きずられながら、目を覚ますシーン。「ここはどこだ?何が起きた?なぜ俺を食べない?気絶してたのに…」と戸惑うミッキー。自分を引きずる大きなクリーパーの背中を見て、「そうか、子どもに食べさせる気だな。優しいママだ」と状況を分析すると、小さなクリーパーが近づいてくる。
顔をなめられたり、手袋をくわえられたりして、「早いとこ終わらせてくれ、ほらガブリとかじれよ」と観念したミッキー。だが、クリーパーたちは一向に襲う様子を見せないまま進んでいく。「どこに連れて行くんだ?」と困惑するミッキーを、大クリーパーが尻尾で持ち上げると、中小のクリーパーたちが総出で雪原へと押し出してしまう。
「リプリントされた肉はまずいのか? 俺はおいしいぞ、新鮮な肉だ、味は保証する」と叫ぶミッキー。しかし、大中小といるクリーパーたちは、彼を見つめるだけで――。
■ 『風の谷のナウシカ』の“王蟲”を彷彿とさせるクリーパー、そのデザインのルーツは?
この“クリーパー”という謎のモンスター、その姿はどこか*『風の谷のナウシカ』(1984年)の王蟲(オーム)を思わせる。ポン・ジュノ監督に宮崎駿(※崎=たつさき)作品からの影響について尋ねると、こう語った。
「『Okja/オクジャ』(2017年)では、主人公ミジャがオクジャのお腹の上で昼寝をするシーンを描きましたが、あれはまさに『となりのトトロ』(1988年)からインスピレーションを受けました」と明かしつつ、「クリーパーはもっと複雑な存在で、さまざまな要素が混ざっています」と説明。
「デザインの出発点はクロワッサンでした。パンからインスピレーションを得たんです(笑)。動きに関しては、さまざまなアイデアが組み合わさっています」
■クリーパーの動きは“ネコバス”がヒントに
ポン・ジュノ監督によると、クリーパーにはジュニアクリーパー、ベイビークリーパー、そして、女王バチのように一匹だけのママクリーパーの3種類が存在するという。
「ジュニアクリーパーはボールのように丸まりながら転がるんですが、これはアルマジロの動きを参考にしました。完成したものを見ると、『ダンゴムシみたいだ』と言う方もいましたが(笑)。また、『風の谷のナウシカ』で王蟲の群れが突進するシーンも大きなインスピレーションの一つでした」
さらに、クリーパーが群れになって絡み合う動きは、アラスカのトナカイの行動パターンをモチーフにしているという。
「トナカイは、子どもを群れの中心に置きながら、反時計回りにらせん状を描くように移動するんです。その荘厳な動きが、クリーパーのアクションのベースになりました」
また、ポン・ジュノ監督は『となりのトトロ』の“ネコバス”がクリーパーの動きのヒントになったとも語る。
「すべてのクリーパーが、ウルレーションと呼ばれる直立して鳴き声を発する姿を見ると、多くの脚があることがわかります。複数の脚を持つ生物は、走るときにとても不思議な動きをします。専門用語ではウォークサイクルといいますが、これを作るのが、クリーチャーを表現するうえで最も重要な基本です。ジュニアクリーパーが勢いよく走るシーンを作る際、CGチームから『となりのトトロ』のネコバスを参考にしてはどうかという提案がありました。ネコバスは足が何本もあり、リズムよく動く姿が見事に描かれています」
■ 宮崎駿作品は尽きないインスピレーションの源
ポン・ジュノ監督は、宮崎駿監督の作品が自身に与えた影響について、こう語る。
「宮崎駿監督は、生態系や自然、環境をテーマにした作品を数多く描いています。私自身もこれらのテーマには大きな関心を持っているので、宮崎監督の作品は常にインスピレーションの源になっています」
また、イギリス・ロンドンで行われたワールドプレミアで主演のロバート・パティンソンが「アニメを参考にしてミッキーの役作りをした」と発言したことについても触れ、「彼はアニメをたくさん観ていて、かなりマニアックな性格ですね」と笑いながらコメントしていた。
スタジオジブリ作品からの影響を色濃く受けた、謎多きモンスター“クリーパー”が物語にどう関わってくるのかにも注目だ。
■役所広司のコメント入り特別映像も解禁
日本を代表する俳優・役所広司のコメントから始まる特別映像も公開。役所が主演した『すばらしき世界』(2021年公開、西川美和監督)を鑑賞したポン・ジュノ監督が、「実に深く、遥か先まで進んだ映画だ」「表情や目つき、わずかな手の動きや仕草で 主人公の人生の履歴を余すところなく表現してしまう 役所広司の驚くべき説得力にあらためて感服した」と讃える書簡を役所に送ったことがあったという。この時のポン・ジュノ監督からのメッセージへの返信として、役所は「劇場は、独特のブラックユーモアで笑い声に包まれるだろう。そして、我々は見たこともない世界に連れて行かれる」とコメントを贈っている。