
【エンタメ総合】
自分は転職して通用するのか?意識したい3つの「他」 “イメージ”することで高める流動性

総務省が今年2月に発表した労働力調査によれば、2024年の転職者数は約331万人(前年比0.9%増)と3年連続で増加した。かつては同じ会社に定年まで勤め上げる人が多かったが、今や若い世代ほど転職への心理的ハードルは下がり、珍しいことではなくなっている。
【画像】元『リクナビNEXT』編集長!黒田真行『いつでも会社を辞められる自分になる』
もちろん一度も転職をしたことがない人も多い。特に中高年のミドル世代ほどその傾向がある。ただ、IT化の進展、AIの普及などによって仕事を奪われる人が増えているうえ、安定しているとみられた企業でもリストラに追い込まれる例もあり、望むと望まざるとにかかわらず、こうした人たちも転職・独立に動かざるをえない局面も出てくるかもしれない。
もしもある日突然、転職を迫られることになったら、自分は「社外で通用するのか?」。ミドル世代専門転職コンサルタントの黒田真行氏の著書『いつでも会社を辞められる自分になる』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成して届ける。
■会社の「外の世界」が怖くなってしまう理由
キャリアについて不安を感じる人の多くは、「同じ会社で同じ仕事をすることしかできない」と思い込んでいるケースが多いのではないかと考えています。
その会社、その仕事でしか活躍できない自分しか描けない。そう思うと、気持ちが萎縮し、外の世界が怖くなってしまったり、外で本当に自分が通用するのかわからなくなってしまったりします。心理的に宙ぶらりんな状態になってしまって、余計に不安になる。
こういう心理状態は一般的に30代あたりから始まり、40代、さらには45歳を超えたあたりから、どんどん大きくなっていきます。年齢が上がるほど、その不安は増していくような構造になっているのです。
だからこそ、自分自身が、この会社、この仕事でしか価値を発揮できない自分になっていないかどうか、常に問い続けることは大事になると思います。そして、同じ会社、同じ仕事以外でいかに通用するかを考えるとき、3つの「他」を意識すればいいと思います。
一つ目の「他」は、「同業他社で自分は活躍できるだろうか」ということです。業界が同じなので、これまでやってきた経験やスキルが最も活かせます。場合によっては、競合企業になったりするかもしれませんが、今持っているスキルを活かしやすい環境でしょう。
そこで通用しないかもしれない、となると汎用的なスキルが弱いということになるので、そのイメージを膨らませて想像することが大事になると思います。
■「自分の流動性」をより高めていくきっかけ
2つ目の「他」は、「他業界で自分がやっていけるだろうか」と自問することです。たとえば、建築業界にいた人が商社に行く、製造業にいた人が情報サービスの世界に行く。
業界が変わると、これまでやってきた経験やスキルがストレートには活かせなくなります。逆に、何を持っていけば、他業界でもやっていけそうなのか、より意識するようになります。
これがポータブルスキルです。自分の中に、持ち運びができるスキルはどのくらい溜まっているのか。逆に、持ち運びができない、この業界とかこの会社でしか使えないスキルは何か、と仕分けができるようになっていく。
それは、他の業界でいかに通用するか、自分は通用するのか、という問いを立てるからこそ、できることなのです。
3つ目の「他」は、「他の職種で活躍できるだろうか」と考えることです。おそらく最もリスクが高く、言ってみればゼロリセットです。営業をやっていた人が人事をやる。研究開発をしていた人がマーケティングをやる。まったく違う領域の職種に挑戦することです。
問うてみたいのは、「やってみたい職種があるのか」ということ。あったとして、「そこに挑んでいく勇気はあるのか」、あるいは「キャッチアップして勉強してスキルを身につけていく覚悟はあるのか」ということです。
それをイメージすることは、自分の流動性をより高めていくきっかけになる。同じ会社で同じ仕事をするという思い込みから逃れることにつながります。
同じ会社、同じ仕事、「この会社のこの仕事しかできない自分」という思い込みは、精神的にあまり健康的でない状況に追い込むリスクが高くなります。
定年から自分の年齢を引いて、残りの10年、20年をどう過ごしていくのか。どう自信を持って働いていくのか。思い込みを捨て、それを考える一つのきっかけにしてもらえたら、と思います。
■著者・黒田真行(くろだ・まさゆき)
ミドル世代専門転職コンサルタント
1965年兵庫県生まれ、関西大学法学部卒業。1988年、リクルート入社。以降、30年以上転職サービスの企画・開発の業務に関わり、『リクナビNEXT』編集長、『リクルートエージェント』HRプラットフォーム事業部部長、『リクルートメディカルキャリア』取締役などを歴任。2014年、リクルートを退職し、ミドル・シニア世代に特化した転職支援と、企業向け採用支援を手掛けるルーセントドアーズを設立。30年以上にわたって「人と仕事」が出会う転職市場に関わり続け、独立後は特に数多くのミドル世代のキャリア相談を受けている。著書に『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』(クロスメディア・パブリッシング)、『35歳からの後悔しない転職ノート』(大和書房)など。