【エンタメ総合】
「発達が遅れてるって 誰基準なの?」特性のある息子と向き合い葛藤する母を描くリアルコミックエッセイが話題 「“比べる育児”から“理解する育児”へ」

『発達障害、認められない親 わが子の正解がわからない』(ネコ山著/KADOKAWA)


 少し手がかかる息子…と思ってきたけど、もしかして発達障害かもしれない。しかし発達障害と認めることは、息子にとって本当にいいことなんだろうか…。「息子にとって」なにが大切なのか、悩み、葛藤する母を描くリアルコミックエッセイ『発達障害、認められない親 わが子の正解がわからない』(KADOKAWA)が共感を呼んでいる。SNSからスタートした作品制作のきっかけ、デリケートなテーマを扱う上での気遣い、そして作品を通じて読者に届けたい想いについて作者のネコ山さんに聞いた。



【漫画】「遅れてるって、誰基準なの?」夫の言葉に反論できず…



■『発達障害、認められない親 わが子の正解がわからない』著者・ネコ山さんインタビュー【PART2】



――子育てを通して、さくら自身はどのように成長したのでしょうか。変わった部分や変わらない部分を教えてください。



【ネコ山】さくらが一番変わったのは、「正しさよりも、わが子の目線に立とう」と思えるようになったところだと思います。

子育ての初期は、「普通にできるようになってほしい」「みんなと同じように過ごしてほしい」という思いが強く、夫の顔色を気にして、自分の本音を飲み込むことも多くありました。支援や診断を受け入れることにも、時間がかかりました。

でも、シュウと向き合い続ける中で、「この子が何に困っているのか」「どんな気持ちでいるのか」に自然と目が向くようになり、少しずつ“比べる育児”から“理解する育児”へと視点が変わっていきました。

変わらないのは、「シュウにとって味方でありたい」という気持ちです。



――夫の子育て、子育てサポートに関して、さくらはどのように感じていたのでしょうか。そして、離婚の危機を乗り越えてからの夫の姿勢についてはどう思っているのでしょうか。



【ネコ山】さくらは、夫の“子育て”というものに対するスタンスに、寂しさと物足りなさを感じていました。

オムツを替えたり、ごはんを食べさせたりといった“作業”は手伝ってくれていたけれど、まるで「やるべきことをやっている」というだけのように感じて、そこに“私と同じ方向を見ている感じ”がなかったんです。

シュウに特性があるとわかってからは、なおさら「私の悩みを一緒に理解してほしい」という想いが強くなったのに、夫はと取り合わず…「一番わかってほしい人が、わかってくれない」という孤独が、さくらを深く追い込んでいきました。

離婚の危機を経てからの夫は、もしかしたら大きくは変わっていないんだと思います。夫の「よく考えてから答えたい」という特性などをさくらが理解したことによって、夫が安心して話せるようになったのかもしれません。

そして「夫が一緒に悩んでくれるようになった」と思えたことで、さくらにとって夫は何よりの支えになりました。



――物語の中で特に印象に残っているところ、エピソードを教えてください。



【ネコ山】「シュウの発達が遅れている…」とさくらが夫に相談したときに、夫が「遅れてるって、誰基準なの」「大人はいうことをきく子どもが好き」と答えたエピソードが印象に残っています。

何かの基準と比べること自体を否定する気持ちはないですが、「比べるってなんだろう」そして「大人の都合のいい解釈をしてはいないか」、という視点を夫の言葉から突きつけられたように感じました。

「正しさ」や「普通」の枠に子どもを当てはめようとするのではなく、その子のままを見つめることの難しさと大切さを、あのやりとりを通して改めて考えさせられました。



――この作品をお読みになる同じような境遇にある親たちにどのような声をかけてあげたいですか?



【ネコ山】周囲と比べて焦ったり、悩んだりすることは、決しておかしいことではないと思います。

子どもの特性を受け入れるまでの過程は、夫婦共に時間がかかることもありますが、投げ出さずに我が子のために一歩一歩進んでいけたらいいんじゃないかなと思います。

この作品が、少しでもその過程を共に歩んでいると感じてもらえるような一冊になればと思っています。



――この作品を通じて伝えたかったことを教えてください。



【ネコ山】“わが子を理解しようとすること”は、思っている以上に苦しくて、孤独で、ときに自分自身を責めてしまうような体験でもあります。

それでも、親が「どうしたらこの子にとって生きやすくなるか」と悩み、戸惑いながらも手を伸ばし続けることで、少しずつ見えてくる光や、変化があります。

「困っている子ども」を描くことはもちろんですが、それ以上に、「困っている子どものとなりで、どうしたらいいのか分からずに立ち尽くす親」の姿を丁寧に見つめることで、

同じように悩んでいる誰かが、「ひとりじゃない」と思えるきっかけになればと願っています。

世の中に少しでも理解が広がってくれたら、、そんな思いを込めて描きました。



――最後に、「発達障害、認められない親 わが子の正解がわからない」を手に取る読者のみなさんへ、メッセージをお願いいたします。



【ネコ山】育児をするなかで「これでいいのかな」と不安になっていたり、パートナーとの間で気持ちがすれ違っていたり、あるいは子どもの特性を前に、どう接すればいいか分からなくなっていたり…

そんなとき、この作品のどこかに読む人の気持ちと重なる場面がひとつでもあればうれしいです。

特に読んでいただきたいのは、さくらのパート先でのシーンです。夫の意外なラストも見どころです!

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