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「W洗顔不要ってホント?」「お土産のパックは使って大丈夫?」美容の素朴なギモンに皮膚科医が回答

ドラッグストアに続々と入荷されるスキンケアの新商品。SNSなどの影響で美容への意識はどんどん高まっていますが、「これって本当に必要なの?」「効果は?」「リスクは?」など、意外に知らないことも多いのでは。今さら聞けない美容の基本について、クリニックフォア監修医兼ナチュラルスキンクリニック院長の圓山尚(えんやまたかし)先生に、皮膚科医の観点から話を聞きました。
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■結局「W洗顔」は必要なの? 洗浄力の高さによる注意点も
──「W洗顔不要」をうたったクレンジング剤が増えています。一般のクレンジング剤や洗顔料とはどんな違いがありますか?
「クレンジング剤はメイクや日焼け止めといった油脂性の汚れを落とすもの。洗顔料は毛穴の汚れや皮脂、余分な角質を落とすものであり、それぞれ役割が異なります。“W洗顔不要”のクレンジング剤はその両方を兼ねます。そのため洗浄成分がやや高めで、敏感肌の方には合わないかもしれません。中には肌への優しさをうたった商品もありますが、その場合は洗い残しの心配もあります」
──やはりW洗顔は必須なのでしょうか。
「メイクの濃さによって使い分けるといいと思いますね。ナチュラルメイクであればW洗顔不要のクレンジング剤で、あまり擦りすぎないように洗うこと。洗顔の回数が多くなればなるほど必要な皮脂や角質まで洗い流してしまい、肌が突っ張ったり、摩擦刺激による色素沈着が起こったりするリスクがあります。一方、アイメイクなどをしていたら、クレンジング剤でしっかりメイクオフした後に、洗顔料を使ったほうがいいと思います」
■「クレンジング忘れた!」乳液やベビーオイルでも化粧を落とせる?
──クレンジング剤の代わりに、乳液やベビーオイル、ワセリンなどでもメイクオフができるという情報もありますが、本当ですか?
「基本的にはあまりおすすめはしません。乳液やベビーオイル、ワセリンなどは油脂性ですので、メイクを溶かすことはできますが、洗浄力はないんです。つまり肌の上でメイクを薄めて伸ばすだけになってしまうんですね。特にワセリンなどテクスチャーが固めのものは、メイクを毛穴に押し込む形になり、ニキビの原因にもなります。どうしてもクレンジング剤が手元にない場合は乳液やベビーオイルなどの柔らかめのものでメイクを浮かせ、洗顔料でしっかりと洗顔するのがいいでしょう」
──とくに韓国などが多いですが、シートマスクが海外旅行のお土産の定番になっています。日本語の成分表示がないのですが、使っても大丈夫ですか?
「肌質は個人差もありますのでなんとも言い切れないですが、心配であれば避けたほうがいいでしょう。実際、『お土産のシートマスクで肌が真っ赤にかぶれた』と受診される方は少なくありません。ヒリつきなどの刺激を感じたら、すぐに外してください」
──お土産に限らず、自分の肌に合うものであれば、シートマスクやフェイスパックは毎日してもいいですか?
「個人的には、お肌に合っていると感じるのであれば毎日使ってもいいと思います。本当に様々な種類のパックがあって選ぶ楽しみもあると思いますので、ご自身のお肌に合うものを楽しんで使ってもらうのが良いかと。もちろんパックのほかにも、さまざまな美容ケアを組み合わせることもおすすめです」
──パックを使う上での注意点はありますか?
「基本的にパックの主成分は水溶性です。肌に浸透させた水分を逃さないように、パックをした後は必ず乳液やオイル、クリームといった油分でフタをしましょう。最近はスキンケアも複雑化していて、メーカーも“化粧水の前に使うブースターオイル”などさまざまな商品を展開しています。そのため例外を挙げればキリがないのですが、基本は“水分→油分”の順番を守れば間違いはありません」
■「まつ毛美容液」実はある症状の副作用を活用したものだった
──まつ毛美容液で「伸びた」という口コミを見ますが、本当に効果はあるのでしょうか。
「市販品に関しては何がキー成分になっているのかわからないものも多いのですが、医療機関で処方するルミガンやビマトプロストは効果が期待できます。この2つは緑内障の治療点眼薬として開発されたのですが、まつ毛が濃くなる、伸びるといった“副作用”が臨床で確認されたことから、まつ毛貧毛症の治療やまつ毛育毛にも使われるようになりました」
──“副作用”と聞くとちょっと怖くなりますが、まつ毛を伸ばす目的で使っても問題はないですか?
「まつ毛育毛剤としてもかなり一般的になっているので、それほど心配する必要はないと思います。まつ毛を伸ばす目的で使用する場合は、点眼ではなく、まつ毛の生え際に塗るのですが、正しく使わないと皮膚の色素沈着を起こすこともあります。必ず医師の説明に従ってください」
──まつ毛ダニがいると、まつ毛が抜けると聞きました。まつ毛ダニはどのように防げばいいのですか?
「まつ毛ダニに限らず、人間の皮膚にはニキビダニなどの常在菌がいます。通常は余分な皮脂を食べてくれるなど共生関係にありますが、異常繁殖をすると炎症を起こしたり、まつ毛が抜けやすくなる原因となることもあります。その場合は皮膚科を受診していただければと思いますが、それほど神経質になる必要はありません。正しい洗顔で肌を清潔に保つなど、基本的なスキンケアを日常から心がけてください」
【監修】
圓山 尚(えんやまたかし)
ナチュラルスキンクリニック院長兼クリニックフォア監修医。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。現在はクリニックフォア監修医と永福スキンクリニック(現ナチュラルスキンクリニック)の院長を務め、”美のかかりつけ医”として活動している。
(文:児玉澄子)