
【エンタメ総合】
仲村トオル「皆さんが火をつけてくれた」 『イグナイト』で感じた“熱量”

俳優の間宮祥太朗が主演を務める、TBS系金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』(毎週金曜 後10:00)。今回は、宇崎凌(間宮)が在籍するピース法律事務所の代表・轟謙二郎役の仲村トオルにインタビュー。第9話で、5年前に起こったバス事故で轟の娘・佳奈(藤崎ゆみあ)がどんな経緯で巻き込まれたのかが明らかになった。ここから、いよいよ最終章。事故の黒幕との対決が描かれるのを前に、轟を演じての感想や、本作を通して焚きつけられたことなどを聞いた。
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■リアルとスタイリッシュの狭間で演じた轟謙二郎
――ドラマの反響はいかがですか?
うちの家族が毎週すごく楽しみにしてくれていて、それが何よりうれしいですね。「面白かった」とか、感情がそのまま声になって出てくることもあって。
――共演者の方たちから「轟という役は仲村さんしかいない」との声がありました。演じる上で意識されたことは?
僕自身も「宇崎は間宮くんしかいない」「伊野尾(麻里)は(上白石)萌歌ちゃんしかいない」「高井戸(斗真)は(三山)凌輝しかいない」と、感じています。それは衣装やヘアメイク、美術など、全員でこの『イグナイト』のキャラクターを作っているからこそだと思います。
印象的だったのは、第2話。ある大学の強豪ラグビー部で起こった自殺未遂事件で、大学側の弁護士と学長たちの前で轟が両親の委任を受けているとうそをついた後に、宇崎と廊下で会話するシーン。実際には廊下のシーンのほうが先の撮影で、クランクインしてわりと早い段階だったのですが、監督の指示もあって、肩を組んで歩くというノリノリな感じになったんです。その乾いた明るさのある雰囲気を、撮影は後からになった学長室のシーンに逆につなげられるように意識しました。このシーンだけではなく、現場で生まれた空気の積み重ねで、僕以外のメンバーも「この人しかいない」とみなさんにも思っていただけているのかなと。
轟というキャラクターの描き方については、プロデューサーや原廣利監督と話していて、轟が抱えている過去をリアルに考えればとても重いのですが。でも、その重さを前面に出すのではなく、スタイリッシュさや少しふざけたような一面も大切にしたいという思いを感じ取りました。リアリティだけではなく、映像的な“かっこよさ”のさじ加減を気にしながら演じていました。
――轟の好きなところはどこでしょうか?
第2話でも描かれたように、裁判に勝つことよりも、若者の未来を守ることを優先するところ。表立っては描かれていませんが、大学側から示談金のようなものを受け取っている可能性も考えながら演じていました。轟がお金にこだわってきた理由も最終的には明かされますが、正義感を持っているキャラクターなので大切に演じなければと思いました。
■第1話がくれた作品の手応え
――仲村さんが特に印象に残っているシーンを教えてください。
このシーンが、というより、第1話ですね。完成した映像を見た翌日、撮影現場に行った時に「みんな、素晴らしい仕事をしている。この調子で頑張ろう」と大きな声で言いたくなるくらい感動しました。ただその日の撮影は、(第6話の)娘を亡くしたご両親とのシーンだったので、現場の空気的にそれはできず…。ですが原監督から「見ましたか?」と声をかけられて、「控えめに言って、素晴らしかったよ」なんて、こっそり話しました。
――映画的な魅力を持つ本作の映像面についてはいかがでしたか?
原監督とは3作目、撮影監督の佐藤匡さんとも映画「帰ってきた あぶない刑事」(2024年)でご一緒していたので、きっと今回も素晴らしい映像を撮ってくれるだろうと期待していましたが、それを上回る出来でした。ただ、撮影方法は決して楽ではなく、ゲストの方が「全カット、最初から最後までやるんですか!?」と驚いていたほどハードでした(笑)。それでも、その撮り方だったからこそ、登場人物の感情の動きにうそが無く見えたのだと思います。
■仲村が共演者に心を動かされた瞬間
――共演者の方々について、「この瞬間、この人の演技がすごい」と思ったエピソードはありますか?
間宮くんは、膨大なセリフを力強く、鮮明に投げ続ける精神力がすごい。法廷シーンでは使い慣れていない専門用語だらけの長セリフの後に、傍聴席にいるエキストラの方々から拍手が起こることもありました。僕も同業者であるにもかかわらず、何度も拍手したくなるほど、素晴らしいものを見せてもらいました。
萌歌ちゃんは、撮影現場のムードを自然と和ませてくれる存在でした。本人は無意識だと思うのですが、持って生まれた雰囲気や人との距離の縮め方がうまい。ちょっとポンコツな発言をして、自分でフォローしてさらに面白くなるようなこともありましたね(笑)。いい空気を作ってくれていました。
凌輝は、最小限の表情や声で大きな感情を伝えることがうまいと思いました。最初は「表現が小さすぎないか?」と感じていたのですが、映像で見ると驚くほど伝わってくる。彼とはジェネレーションも俳優として育った環境も違うのですが、彼の俳優としての生い立ちが、そうさせているのかもしれません。
――5年前のバス事故について、轟と共に真相を明らかにしようとする桐石拓磨役の及川光博さん、浅見涼子役のりょうさんは?
ミッチー(及川)は役者としてとにかく器用で面白いですね。スタイリストさんがミッチーに何を着せようかって燃えるような存在だなと。本人も「こういうのはどう?」と提案している様子を横で聞いていましたけど、“カメレオン桐石”ぶりが見事だなと思いますね。
りょうちゃんは、声も雰囲気も素晴らしい。第7話で3世代の女性が登場した時にも、大人の女性としてしっかり立っていました。第2話のカラオケボックスのシーンでは、撮影時にはエコーはかからなかったのですが、「絶対エコーがかかる」と信じて、僕がマイクを持って「いつも悪いな、俺のために」というセリフを言ったら、りょうちゃんも同じことをやろうとして、監督に止められていました(笑)。
■焚きつけられた日々と、俳優として刻んだ一作
――作品にかけて、撮影現場で「焚きつけられた」瞬間はありましたか?
全部です。第1話を見て「素晴らしい仕事でした」と大きな声で言いたくなったこと。間宮くんの芝居に拍手したくなったこと。萌歌ちゃん、凌輝、ミッチー、りょうちゃん、そして藤田朋子さん(宇崎の母・純子役)、皆さんがそれぞれの方法で、僕に火をつけてくれました。
――本作は仲村さんにとってどんな作品になりそうですか?
とても大切なタイトルと役になりました。原監督、企画・脚本の畑中翔太さんの名前を見て「やりたい」と思いましたが、自分にやれるかどうか不安もあって。でも、実際にこうやって出演できて本当に良かったです。「(この作品とめぐり合わせてくれて)神様、ありがとうございます」と思うくらい大好きな作品になりました。
――最終章に向けて、視聴者へのメッセージをお願いします。
第9話では、第1話より前の出来事など多くの新情報が明かされました。この作品は回想シーンの入れ方も、カードゲームで重要なカードをいいタイミングで出すように絶妙で。特に第10話、第11話は時間軸が複雑で行ったり来たりしますが、そこを丁寧に見ていただければ、より楽しんでもらえると思います。