
【音楽】
CEIPA×トヨタグループ、音楽業界のグローバル化を目指す『MUSIC WAY PROJECT』始動 1st Editionは“韓国編”

一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)とトヨタグループによる共創プロジェクト『MUSIC WAY PROJECT』の一環として、『Professional Seminar Public Series 1st Edition(韓国編)』が7月22日、東京・トヨタ自動車東京本社B1F大ホールにて開催された。
【写真あり】あの人が消えた…ネット衝撃の相関図
このプロジェクトは、日本のコンテンツを世界に発信するため、音楽業界の若手育成とグローバル展開を支援するもの。今年5月に京都で開催された『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』公式カクテルパーティーでキックオフされ、バークリー音楽大学とのパートナーシップも発表されていた。
■“想いを届ける言葉”の重要性を語る
冒頭ではCEIPA専務理事・栗田秀一氏が「音楽業界のグローバル化を目指し、情報提供と人材交流の場を」と受講者にメッセージ。続いて、YouTube Japan/Googleでディレクターを務める鬼頭武也氏が「想いを届ける『ことば』」をテーマにスモールトークセッションを行い、異文化間での言葉の使い方について語った。英語のテクニック以前に、「本当に伝えたい想いがあるか」「どんな言葉でそれを表現するか」という視点が重要であることが語られた。
■データ分析を軸にした海外進出戦略
メインセッションでは、バークリー音楽大学バレンシア校のアレクサンドル・ペリン教授による事前収録の講義を上映。音楽とデータの関係や、アーティストが海外で活動するために必要なメタデータの活用法を、The Orchard Japanの増田雅子氏によるインタビュー形式で解説した。
ストリーミング時代において「どこで・誰が・どのように楽曲を聴いているか」を可視化できるようになったことを踏まえ、ファンの分布や愛着度を分析し、「どの国・都市へツアーを展開すべきか」「誰と共演すべきか」といった戦略立案が可能になったことが紹介された。ペリン氏はデータの種類や入手方法、分析手法までを具体的に解説し、独立系アーティストやスタッフでも十分実践可能な内容として示した。
■韓国市場の実情を3名のエキスパートが解説
韓国編の目玉となった「Market Deepdive #1 (韓国編)」セッションには、音楽・マーケティング・ライブの各分野で活躍する3名の専門家が登壇した。
HYPEER Inc.の共同創業者でありCEOのジェイデン・ソン氏は、「ロイヤルリスナーの10%からなるハイパーファンダムの形成」をキーワードに、K-POPにおけるファンセグメント別のアプローチや、国ごとのポジショニング/カルチャーコード/チューニングという3段階の戦略プロセスを紹介。「アーティストのブレイクとトラックのブレイクを両立させる」「ファンが“好きだ”と自慢できるアーティストに」「何を聴かせるかではなく、どう感じさせるかが重要」といった印象的なフレーズを交えつつ、実際の日本人アーティストを例に具体的なプロモーション戦略も共有した。
AXISの創業者であり、CEOのSJ氏は、日本人4人組のK-POPグループ・cosmosyのプロデューサーとして、K-POPアイドルとしての受容よりも「オタク文化を楽しむ層」への訴求に軸足を置いた戦略を紹介。韓本語(ハングルと日本語の融合)による歌詞の工夫、アニメEXPOや女子プロレス団体「SUKEBAN」でのプロモーション活動、音楽番組でのオリジナル舞台セットの制作、振付やデジタルマーケティングへの投資明細など、進行中のプロジェクトならではの実例が数多く語られた。
DMZ Peace Train Music Festivalの共同創業者であり、Artistic Directorを務めるセシリア・スジョン・イ氏は、韓国のフェスティバルにおけるキュレーションやアーティストブッキングに携わってきた経験をもとに、韓国ライブ市場の構造と、日本人アーティストが韓国でライブやフェスに出演するための実践的な手法を紹介した。宣伝にはインスタグラムのほか、韓国の音楽配信サービス「Melon」やオンライン百科事典「ナムウィキ」が有効であること、また政府運営の芸術情報統合プラットフォーム「KOPIS」からの支援の可能性にも言及した。韓国のライブシーンはインディーが主力であり、日本人アーティストの受け入れにも積極的であることが強調された。
■懇親会も実施、交流の場に
セミナー終了後には登壇者と受講者が交流できる懇親会も実施され、「出会い」「学び」「チャンス」が詰まった機会となった。登壇した3名のエキスパート全員が「国によって進出戦略は異なる」と語ったように、次回以降のセッションにも注目が集まる。
■次回は“タイ編”、8月14日に開催
次回の『Professional Seminar Public Series 2nd Edition(タイ編)』は、8月14日に同会場で開催予定。バークリー音楽大学提供の講義に加え、GMM MusicのYuthana “Ted” Boonorm氏らタイ市場の専門家によるセッションが予定されている。