
【映画】
二宮和也×河内大和:インタビュー映画『8番出口』 ――再共演で挑んだ“異変だらけ”の撮影現場

世界中で大ヒットしている異変探しゲームを実写化した映画『8番出口』。俳優・二宮和也が演じる主人公“迷う男”と、何度もすれ違う“歩く男”を演じるのは、ドラマ『VIVANT』で二宮と共演した河内大和だ。それぞれ強烈な存在感を放つ2人が再び顔を合わせた。
【画像】映画『8番出口』場面写真
本作は、無機質な地下通路を舞台に、異変があれば引き返し、なければ前へ進む――正しければ「8番出口」に近づき、見落とせば「0番出口」に戻される。そんな無限ループの迷宮に入り込む、95分間(上映時間:1時間35分)の劇場サバイバル体験を提供する。
――再共演の感想は?
【二宮】登場人物が少ない中で、以前共演していて“知らない仲ではない”河内さんと一緒にできたのは大きかったです。初めましての方だったら…正直、難しかったかもしれないですね。
【河内】多分成立しなかったと思います(笑)。会話もないし、本当に初対面だったら変な感じで終わっていたかもしれない。
【二宮】撮影期間も短かったので、すでにできていた関係性にすごく助けられましたね。
――知らない人とすれ違い続ける作品だから、逆に“初対面の方が合う”のかなと思っていたんですが、そうではなかったんですね。
【河内】いや、むしろ関係性がなかったら成立しなかった気がします。僕は表情を変えずに同じ速度で歩いているように見えると思いますが、実際は二宮さんの芝居に合わせてスピードをかなり変えているんです。すれ違う位置を正確に合わせなければいけないから。毎回無表情で受けてますけど、二宮さんが一度も同じ芝居をしなかったので、それが面白くて。思わず笑いそうになった瞬間もありました。
――まるで別撮りした“歩く男”の映像をCG合成しているようなループ感でした。不気味の谷(フルCGやAIの人間を観た時に生身の人間に近づきすぎると、逆に不気味に感じられる心理現象)を感じました。
【二宮】そう言ってもらえるのはうれしいですね。(川村元気)監督も喜ぶと思います。
――監督は河内さんに「能のような動き」を求めていたようですね。
【河内】監督からは「2次元と3次元のはざまを表現してほしい」と言われたんですよね。どうやって表現するんだろう?って(笑)。だから僕は“無”であり続けることを意識しました。余計なものを持つとブレるので、ただ無心で歩き、速度だけ調整する。結果的に画面で浮き立って見えたのは良かったと思います。僕自身、能の習い事や能楽堂でシェイクスピア劇をやった経験があったので、うまく合致したんだと思います。
【二宮】初日のテストで河内さんが初めて角を曲がって現れた時、スタッフが「本物だ!」ってどよめきましたよ。完成度が高すぎて、逆に引いちゃうくらい(笑)。
【河内】その時の映像を見て「CGみたいだな」と思えたので、ああ、これでいいんだと安心しました。実はすごく緊張していたんです。歩き方が定まらなかったら撮影が大幅に遅れるので。それが1発でOKだったのは本当に良かったです。
――地下通路での撮影はいかがでしたか?
【河内】今回、長回しの撮影が多かったんですよ。地下通路の途中で異変に気付いた二宮さんが引き返して、また地下通路へ入っていく。僕は二宮さんが角を曲がった瞬間に通路を戻って、再び通路に何事もなかったように現れなければならない。裏では猛ダッシュしていました(笑)。
【二宮】それで顔が真っ赤になってしまってNGになったり、息を整えようとしてちょっと出遅れたり、僕の方でもスピード調整したり。そういう話はたくさんありますよね(笑)。
――俳優デビュー以来、数々のシェイクスピア作品に出演されてきた“シェイクスピア俳優”としても知られる河内さんですが、映画は初出演ですね。
【河内】そうなんですよ。だから映画の撮影現場がどういうものなのか分からなかったんです。でもこの作品は作り方自体がすごく演劇的で、いろんなことを試しては繰り返して、「ここはこうなったから、じゃあ次はこうしてみようか」と修正していく。試行錯誤しながら撮影していく現場は、僕が普段舞台で稽古している感覚とすごく通じるものがありました。だから僕自身は全然違和感がなかったんです。
【二宮】本当、舞台っぽいですよね。ただ、今回の現場を“映画の当たり前”と思わないでほしい(笑)。撮影現場も“異変”だらけ。美術スタッフも大変でした。僕が戻ってきたら、「出口0→」の看板が「出口1→」に変わってないといけないシーンで、僕を撮っているカメラの背後で、ギリギリまで作業しているスタッフさんが見えていましたから。本当に舞台のようなライブ感で撮影していました。
――映画館はどんなに大きなスクリーンがあっても閉鎖された空間であることに違いはないですよね。自分も地下通路に閉じ込められているような感覚になりました。
【二宮】本当に一度体験してもらわないと伝わらない作品です。普段誰もが使う地下通路での“異変”だからこそ、身近に感じられると思いますし、閉塞感というか、出口が見えないストレスも含めて楽しんでもらえるといいなと思います。
【河内】絶対に劇場で観るべき作品だと思います。撮影に参加して結末も知っていたはずなのに、完成した映画を観終わった後に受け取ったものがまったく違っていて、本当に感動したんです。大体のことは知っていたのに、それでも面白い。きっと何度も観たくなる作品だと思います。観ながらつい“一緒に異変探し”をしてしまうんですよね。それがまた楽しかったです。
【二宮】原作ゲームを知っている人は「どの異変が採用されているのか」を探すのも楽しいと思います。
撮影:コウ ユウシエン
スタイリスト:福田春美
ヘアメイク:浅津陽介