
【映画】
細田守監督『果てしなきスカーレット』は“復讐と赦し”の物語 芦田愛菜&岡田将生とベネチアで語る

イタリアで開催中の「第82回ベネチア国際映画祭」アウト・オブ・コンペティション部門に選出され、現地時間4日に公式上映された細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット(英題:Scarlet)』(11月21日公開)。ワールドプレミアとなる上映チケットは、発売開始後わずか20分間で完売する異例の事態に。上映前に行われたプレスカンファレンス(公式記者会見)にも、世界各国から100人以上の記者や報道関係者が集まり、本作への国際的な注目度の高さがうかがえた。
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特に海外でも高い人気を誇る細田監督への質問が集中し、作品のテーマやメッセージなど幅広い話題が飛び交った。
制作のきっかけを問われた細田監督は「“復讐劇”の映画を作りたいと思いました。世界中の人が“復讐劇”(が描かれた作品)が好きだと思ったので、皆が見たいと思ってもらえる作品を作ろうと思ったんです。ただ“復讐”だけではなく、もう一つの要素として“赦し”という部分を同時に含めて、今までにない映画を作ろうと思いました」とコメント。本作の重要な要素を明かした。
さらに特に難しかった点を聞かれると「主人公のスカーレット(芦田愛菜)と聖(岡田将生)をどんな風に設定し、魅力的な人物にしていくのかという部分が難しかったです。“対比”ということに重きを置いて考えました。一人は王女、一人は看護師。その立場の違いを描くことによって、どちらも魅力的(な人物)に見えるように作っていきました」と答えた。
今回の主人公像については「これまでのプリンセス像のような、王子様に守られるプリンセスではなく、もっと新しい、自分自身で道を切り開いていくようなプリンセス像をこの映画では表現しました」と説明。
世界情勢を踏まえたメッセージについては「今、この瞬間でも苦しい思いをしている子どもが世界中にたくさんいると思います。そういう子どもたちに、この世界に絶望しないでいてもらいたい。この世界が希望に満ちた世界であってほしいという願いが、一人の親として、一人の社会を構成する大人としてあります。子どもたちを勇気づけるような世界になってほしいという願いを込めました」と語り、親として、また大人としての切実な思いをにじませた。
アニメーションの未来について問われると、「アニメーションの世界は非常に自由で何を表現してもいいと思います。今回“シェイクスピア”や“ダンテ”の作品を(モチーフに)映画を作るとは思っていませんでしたが、そのくらいアニメーション映画というのは新しい可能性があるということです。可能性が無限大なので、これからも面白い作品ができると思います」と展望を示した。
役作りについて芦田は「スカーレットは中世の王女という役なので、王女として生きる使命感だったり、心構えをどう表現するか悩みました。中世の動乱の時代を生きたジャンヌダルクやエリザベス1世などの作品や映像を見て、イメージを膨らませていきました」と回答。
岡田は「(過去に)演劇でシェイクスピアをやったり、看護師の役を演じていたので、“聖”という役に関しては、自分の体に染み込んでいる状態でした。スカーレットに対する気持ちであったり、時間であったり、そういう部分を大切にしようと演じました」と話した。
観客への思いについて芦田は「スカーレットは、混沌とした世界を一生懸命生き抜こうとし、そして、自分の想いを遂げようとする女の子なので、その一生懸命さが現代を生きる(この作品を観た)皆さんの生きる活力になっていただければいいなと思います」とコメントした。
フォトコールでは多くのフラッシュが焚かれる中、3人は笑顔で手を振り、和やかに撮影に応じた。会見を終えた細田監督は「(会見に集まってくださった)プレスの皆さんがこの映画を気に入ってくださって、すごくいい質問を情熱的にたくさん投げかけてもらえて、この映画についてたくさん話すことが出来ましたし、芦田さんと岡田さんが、スカーレットとして、聖として、いい回答をしてくれているのを横で聞いていて、とても感激しました」と手応えを語った。
芦田も「少し緊張しましたが、監督の素敵なお話を横で聞かせていただき、「そうだったんだ!」という気付きがあり、楽しい時間を過ごせました」と振り返り、岡田も「映画を気に入ってくださったからこその愛のある質問が多かったと思いましたし、監督のお話を聞けて僕も嬉しかったです。とてもいい時間だったと思います」と海外メディアの熱量に喜びを示した。