【映画】
阪神・平田二軍監督が語る横田慎太郎の“生き様”と奇跡の真実「奇跡じゃない、努力の結晶」――『栄光のバックホーム』特別座談会

阪神タイガース二軍監督平田勝男氏、鈴木京香、松谷鷹也、秋山純監督(C)2025「栄光のバックホーム」製作委員会


 元阪神タイガースの横田慎太郎選手の自著「奇跡のバックホーム」と、彼が病と闘いながら生き抜いた軌跡を描いたノンフィクション「栄光のバックホーム」を原作に、彼の人生を描いた感動のヒューマンドラマ『栄光のバックホーム』(11月28日公開)。



【動画】『栄光のバックホーム』特別座談会



 このたび、入団時から横田慎太郎選手を指導した阪神タイガース二軍監督・平田勝男氏、横田慎太郎役の松谷鷹也、母・横田まなみ役の鈴木京香、そして秋山純監督による特別座談会映像が解禁された。撮影は、阪神タイガース二軍の本拠地である日鉄鋼板 SGLスタジアム尼崎にて行われ、現場は笑いあり涙ありの温かい雰囲気に包まれた。



 映像で平田阪神タイガース二軍監督は「ファーム監督の大森南朋です」と映画のキャスティングに準えたジョークを飛ばしその場を沸かせた後、「平田勝男です。(僕の役を演じてるのは)大森南朋さんですもんね」とにんまり。秋山監督が平田氏について「本当に温かくて、怖くて、熱くて優しい監督。横田選手が入団された時からすべて教えられた方」と紹介した。



 横田選手との出会いについて、平田氏は「鹿児島実業から入ってきて、僕も長崎出身だから訛りも似てた。最初は緊張しすぎて挨拶もできないぐらい純粋な子でね。だけど野球が大好きで、練習を誰よりも頑張っていた」「体つきも松谷さんと似ていて、まさに大型外野手。足も速くて肩も強かった。バッティングをやらせると、ガンガン柵越えしてましたので、将来はタイガースの中心選手になる逸材と確信していた」と当時を振り返る。



 さらに、平田氏は、横田選手の人柄について「みんなから愛される男だった」と即答。「野球馬鹿というか、本当に野球が大好きで。先輩から食事に誘われた時に『監督が練習しろと言ってる』と言って、断ってもいいですか?」と真面目な顔をして聞いてくるんですよ。だから、『うん、いいぞ。その代わり、部屋で腹筋とか背筋やるのか?』って聞くと、『やります!』って。それぐらい野球に対する情熱があったからこそ、こうやって皆から愛されたんだと思います」と愛されキャラだった横田さんのエピソードを披露。それを聞いた鈴木が「すごく頑張り屋さんだったんですね」と話すと、平田氏は「トスを上げるのがお上手でしたね」と、劇中の鈴木のトスを称賛し、野球に携わる監督ならではの感想を語った。



 また、病気発覚の瞬間も振り返り、「キャンプ中にフライを落としたり空振りばっかりしたりおかしいと思って検査を勧めたら、ちょうど金本知憲監督の元レギュラーを掴みかけている時で本人は行きたくないと。それでも絶対行ってこいと言ったら、翌日『脳腫瘍と診断されました』と。本当に限界だったと思うけど、それだけ我慢強かった」と当時の様子を語った。



 病気が寛解して、育成選手として背番号124番で戻ってきてからも孤独なトレーニングが続いた横田選手。「そこはもう映画の通りですよ」と平田は話す。続けて、「もう見えてないんですよ。だから、必死になってボールを探すんです」と明かし、「バッティングでも、皆は当てさせようとして軽く投げるんですけど、僕は空振りしても、普通の選手と同じように投げました」と涙をこらえきれず、「思い出すとダメだね」と苦笑いする場面も。集中して話に耳を傾けていた松谷も両頬を濡らしていた。



 そんな平田氏の言葉を受けた秋山が「彼の頑張りは、とんでもないことだと思うので、1人でも多くの人に知ってほしいというのが僕らの願いです」と作品に込めた思いを明かすと、平田は「この映画を見て、横田という人間の生き様もそうですが、お母さんや周りで支えた人たちの愛情を感じてほしい、こういう時代にすごくいいタイミングで素晴らしい映画ができたなと僕は思うんです」と作品を称賛。



 さらに、横田選手の引退試合の際、平田監督が横田選手に「センターに入れ」と言ったことを秋山が明かすと、平田は「『どこを守りたいんや』って聞いたら、気を遣って『ライト』って言ったんです。センターはボールが見えなかったら迷惑かけると思ったんでしょうね。『ライトを守らせてください』って言うから、『バカたれ!お前はセンターやろ!』って。そこから2、3日しかなかったけど、『センターで練習しとけ。センター以外のポジションはせんでいい!』と言った」と裏側を明かした。



 実は、球団とは、「ボールが見えないから、9回の2アウト、あと1人の時に出すという話だった」そうだが、平田は「9回の1イニング守らせます」と主張し、球団もOKしたそう。しかし、「8回、2対1で勝ってて、2アウト2塁になったんです。僕は横田が打つ姿や守ってる姿も好きなんですけど、自分のポジションまで全力疾走で走ってる姿を若い選手たちに見せたいと思って。『ヨコ、ちょっとキャッチボールしろ』と。9回に皆でポジションにつくより、横田が1人で行った方が目に焼き付くやろと思って。ヨコはびっくりしてましたよ。ヨコが走っていく姿は今でも思い出します」と、あの日に思いを馳せていた。



 続けて横田選手の“奇跡のバックホーム”について、平田氏は強い口調でこう語った。「『奇跡のバックホーム』が横田の本のタイトルになってますが、あれは奇跡じゃないんです。彼は毎日練習してましたから、これこそ彼の努力の結晶なんです。奇跡でもなんでもない。バックホームの前に、左中間に飛んだボールを、カットマンにバチっと投げたんです。しっかり投げられるし、ボールが見えてるんかと思って。2対2に追いつかれた後に、センター前に打たれて、それをヨコがとって、ノーバウンドのバックホームですよ。未だに、あの時いた選手たちの目に焼き付いてます。ベンチの前に出て、全員号泣ですよ」と、あのバックホームは横田選手の努力の証だと熱弁。「9回には横田慎太郎のところには打球が飛んでこなかったので、今考えると、いろんな運が凝縮された1イニングでした」と振り返った。



 さらに鈴木は「入団時の色紙の“日々成長”という言葉を甲子園歴史館で見て、私たちにとっても大事な言葉だから自分もその言葉を胸に仕事をしようと思った」と目を潤ませ、横田選手の生き方が今も多くの人に影響を与え続けていることを明かしていた。



 2023年の阪神優勝を振り返り、平田氏は「横田が勝たせてくれた優勝」と語る。「亡くなったことを7月のオールスター休みの時に聞いて、涙が止まりませんでしたけど、その年に優勝できて、日本一になって。皆で横田のユニホームを掲げて。あんなことないよね…。横田が勝たせてくれた優勝じゃないですかね」と思い出し、涙がこらえきれなくなる場面も。



 その言葉を受けて秋山監督は「岩崎さんがマウンドに上がる時の甲子園の空気はすごかったです」と振り返ると、平田氏も「『栄光の架橋』は、僕らは涙が止まりませんでした」と思い返し、「チーム全体が慎太郎に届けと思ってたからだと思います。日本シリーズでも横田のユニホームを飾ってくれてましたから」と裏話を明かした。



 秋山監督が「鈴木京香さんは、あのシーンをテレビで見てたそうなんです」と明かすと、鈴木さんは「そうなんです。だから、秋山監督から『母親役をやっていただけないか』とお話をいただいた時に、あまり健康状態に自信がない時だったので、できないかもしれないと思いながらも、あのシーンを見ていたものですから、監督にお会いしてお話を伺ってるうちに、『私の体調も万全じゃないんだけれど、ぜひやらせていただきます』とお返事したんです。やらせていただかなきゃいけないと思うぐらい胸を打つシーンでした」と本作への出演秘話を明かした。



 その言葉を受けて平田氏は「ファンの方たちも横田のことを忘れてませんでしたし、2023年の優勝は慎太郎が僕らにくれたご褒美じゃないけど、見守ってますよってね、ちょっと九州弁が効いたようななまりで言ってくれてるようでした。こういう映画を作っていただいて、僕らは改めて野球できる幸せをかみしめなきゃいけない」と思いを語った。



 秋山監督は「生きる勇気を持ってもらいたいという僕らの祈りを込めて作った作品なので」と作品への熱い思いを語り、平田氏が「皆さん悩みがあると思うので、その時は前向きに頑張ってる姿を描いた、この映画をぜひ見ていただきたいですね。慎太郎も喜びますよ」と期待を込めて本作を応援していた。



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