
【アニメ】
マンガとスポーツの強い親和性、世界では“まだまだ”でも「10年先を見据えて届ける」LINEマンガと土居美咲の共通の思い

電子コミックサービス「LINEマンガ」を運営するLINE Digital Frontier株式会社が、18日より開催される女子テニスの国際大会『東レ パン パシフィック オープンテニストーナメント 2025』に初めて協賛。それを記念し、同社代表取締役社長CEO・高橋将峰氏(高=はしごだか)と、同大会のアンバサダーを務める元女子プロテニス選手・土居美咲氏が対談。マンガとスポーツの親和性から、経営や未来に向かうマインドにも意外な接点が見えてきた。
【写真】大会を盛り上げる!アンバサダーの奈良くるみ&土居美咲
■“キャプ翼”や“テニプリ”に憧れた過去、現役時代の土居選手は「桜木花道」だった?
――スポーツ競技は、マンガやアニメとの親和性がすごく高いですよね。テニスなら『エースをねらえ!』(集英社/1973~)や『テニスの王子様』(集英社/1998年~)といったヒット作があり、それをきっかけにラケットを手にする人も多いと思います。土居さんは6歳からテニスを始めたそうですが、きっかけは?
【土居美咲】テニスが趣味だった両親にくっついて行って、近くの壁でポンポン打っていたのが最初です。当時は子ども用でしたけど、ラケットでボールを打つことが単純にすごく楽しくて。
【高橋将峰】僕は『キャプテン翼』(集英社/1981~)のブームに乗っかって、小学生の時にサッカーを始めたんです。結局芽が出なくて、高校でテニスに鞍替えしたんですけど(笑)。当時、小学生はみんな“キャプ翼”を観ていた。翼くんのドライブシュートや小次郎のタイガーショットがすごくカッコよくて、自分でも打てるんじゃないかと。
【土居美咲】私の時代も、周りでは『テニスの王子様』がすごく流行っていました。“キャプ翼”と同じで、リアルではとうてい体現できない異次元のショットが連発されていて(笑)。
【高橋将峰】「これ本当に打てるかな?」って、やってみました?
【土居美咲】波動球を受けてラケットが弾き飛ばされるシーンを再現するという、謎の遊びをやっていました(笑)。でも、個人競技のテニスよりも、団体スポーツのほうがドラマが生まれやすい印象です。だから私の中では、スポーツマンガと言ったら、『SLAM DUNK』(集英社/1990~)や『MAJOR』(小学館/1994~)なんです。マンガを読みながら、団体スポーツならではの熱いドラマに憧れていました。
【高橋将峰】ドラマというのは、いわゆる“努力・友情・勝利”からなる不文律だと思うんですけど、個人競技ではチームメイトとの友情が描きづらいですからね。
【土居美咲】仲間とハイタッチするような熱さは、『SLAM DUNK』など団体スポーツならではだと思いますね。
――とはいえ、土居さんが現役時代にダブルスを組んだ奈良くるみさんとのペアは、ジュニア時代にウィンブルドン選手権の決勝に進むなど、まさにドラマを生みましたね。
【土居美咲】そうですね。奈良くるみちゃんは同期ですが、組んだ時はすでにスーパースターだったんです。天才少女・奈良くるみ、その隣にいる土居美咲(笑)。全日本ジュニアの大会で彼女は4度日本一になっているけど、私は一回も獲っていないですから。
【高橋将峰】まさに流川楓と桜木花道のような関係じゃないですか!
【土居美咲】私、桜木花道になれるかな!(笑)。
――ドラマは挫折を乗り越える過程で生まれるものでもあり、学ぶことも多い。お2人とも挫折とは縁遠いように思いますが、実際に挫折を経験したことは?
【土居美咲】私の場合は20歳が最初の挫折でした。10代はウィンブルドンジュニアで準優勝、全仏オープンで本戦に勝ち上がり、全日本選手権で優勝…と、すごく頑張って日本で3番手くらいまでになった。そんな時に、それまで一緒にやっていたコーチと離れることになったんです。それを契機にいろいろな歯車がかみ合わなくなってしまって…。コーチもいないまま、練習相手や場所も大学にお世話になったりしながらも、すごく孤独を感じていました。
【高橋将峰】そんな大変な時期があったんですね。
【土居美咲】はい。それで誰に次のコーチをお願いするか考えた時、英語もしゃべれないのに外国人のコーチについてもらうことにしたんです。いま振り返ると、そこで外国人コーチについてもらったことはすごく大きかった。気持ちの面でポジティブになりやすいし、世界に挑戦しやすい。あの時は極端な選択だったかもしれないけれど、勇気を持って日本を飛び出して、違う世界を見てみようと切り替えることができた。「ピンチはチャンス」とよく言うけど、本当にそう思います。
【高橋将峰】決断するのに時間はかかりましたか?
【土居美咲】結構かかりました。それが30歳くらいの出来事ならもっと違った決断になったと思いますが、まだ20歳で若かったし、後ろを向きたくはなかったから。
【高橋将峰】僕は、挫折した経験と聞かれてもパッと思いつかなかった。でも世間一般で言うところの失敗はたくさん経験しているんです。そもそも大学受験に失敗して行きたい大学に行けなかったし、就職も全然決まらずに大学から紹介してもらったくらいで、決して順風満帆ではなかったんです。
【土居美咲】意外ですね。
【高橋将峰】でも考えてみると、あの時にもし希望した企業に入っていたら、一生そのまま同じ会社にいて、今の自分はいなかったと思うんです。それを思えば、時代もどんどん変わっているわけだから、何が挫折だったかなんて今となってはわからない。その時は挫折だと思っても、振り返ると大したことはない、僕はそういうマインドです。あと土居さんのお話を聞いて思ったのは、失敗にしがみつかないことが大事なんだということ。失敗に固執すると、どんどん視野が狭くなってしまう。土居さんが日本のコーチに固執せず、世界に目を向けたことが正解だったと思います。
――お2人は、気持ちをポジティブに変換するのが非常に上手だったのだと思います。でも誰もができるわけではないですよね。悩んでしまう人にアドバイスをおくるとしたら?
【高橋将峰】とことん落ち込んで、引きずりまくればいいと思います。僕も大学受験に失敗した時は、「人生終わった…」と落ち込みました。でも時間が経つうちに、時代のほうがどんどん変わって、評価も変わっていくものです。少し話がそれますが、製造業が始まる前の時代は体力がある人が勝ちだった。手紙を運ぶのは足の速い人、ピラミッドを作るのは重い物が持てる人…みたいに、肉体勝負だったと思います。でも製造業が始まると、設計できる人が重宝されるようになり、体力から知力に変わった。
――時代が変わることで人の価値基準も変化する。
【高橋将峰】それが今はAIの時代になり、知力をAIが担うようになって。そこで求められるのは、のび太くんのように願望が強い人だと言われています。「ドラえもん助けて! ジャイアンにいじめられるから、〇〇を出してほしい!」と、希望を言える人が中心になっていくのではないかと。そもそもドラえもん自体がAIみたいなものなので、AIを最も使いこなしていたのがのび太くんだったわけですけど(笑)。
【土居美咲】なるほど〜! 面白い!
【高橋将峰】そういう時代になっている中で、人の幸せはより実体験にシフトして行くのだろうと思います。スポーツもそう。実際に試合を観戦すると、そこにはストーリーや感動がある。マンガも同じで、読むことでそれを疑似体験することができる。それに付随したマーケットが、きっとどんどん大きくなっていく。そういう意味で土居さんの得難い経験は、最高のコンテンツになり得ると思うんです。
■「人と比べるといい結果は生まない」、“ライバル”の捉え方に意外な共通点
――感動やドラマには、ライバルの存在が必要不可欠。土居さんにとってのライバルは、やはり奈良くるみさんですか?
【土居美咲】お互いを指しているのではなく、互いに“世界”という同じ方向を向いた矢印というイメージです。ライバルというより戦友のような、「2人で世界に行ってやってやるぜ!」という。
【高橋将峰】最高じゃないですか! 目指すベクトルが同じなんですね。
――「この人には絶対負けたくない!」という人はいませんでしたか?
【土居美咲】「この人に負けたくない」と思うこと自体が守りに入っているイメージなので、いなかったですね。結局自分の中の問題なので、相手というよりも、自分がどれだけいいプレーをするか。人と比べてしまうと何事もいい結果は生まないので、どれだけ自分を高められるかにいつもフォーカスしていました。なりたい自分の理想像とか、自分が立ちたい場