
【映画】
「もしも――を想像することで、人はもっと愛をもって生きられる」 韓国映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』公開
                     
									 次世代の韓国映画界を担う若手俳優たちが集結した映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』が、10月31日より東京・シネ・リーブル池袋ほか全国で順次公開される。
【動画】予告映像
 不仲な両親や学校でいじめられる日々に鬱憤を募らせていたドンジュンは、カリスマ性あふれる男友達のカンヒャンに恋をした。しかし、彼との穏やかな日常は思いがけない事件で終わりを迎え、カンヒャンは大邱(テグ)を去ってしまう。想いを言葉にできず、後悔を抱えたまま大人になったドンジュンは、不幸で惨めだと感じる人生を消化しながら、ふと思う。「もしあの時、別の選択をしていれば…?」 
 テグで高校教師になる人生、ソウルで大学教授になる人生、プサンで父親になる人生。3つの異なる2020年秋を生きるドンジュンは、足りない何かを探し続け、やがて本当の自分を見つけて行く。
 3つの人生を生きる男を演じたのは、『パンドラ 小さな神の子供たち』のシム・ヒソブ。繊細で脆く複雑な心情を、確かな演技力で示した。その青年時代を、『このろくでもない世界で』でソン・ジュンギと共演し、注目を集めた新進気鋭の俳優ホン・サビンが好演。さらに、『イカゲーム』『涙の女王』のキム・ジュリョンなどのほか、『かくれんぼ』『オレのことスキでしょ。』のソン・チャンウィが特別出演している。
 監督・脚本を務めたのは、韓国映画アカデミー出身のペク・スンビン。長編デビュー作『葬式のメンバー(原題)』が第59回ベルリン国際映画祭やエディンバラ国際映画祭に正式招待され、韓国インディペンデント映画界を代表する気鋭として知られる。
 本作では、全米図書賞を受賞したウィリアム・マクスウェルの小説『So Long, See You Tomorrow』に着想を得て、監督自身が10代を過ごしたテグでの記憶を重ねて脚本を書き上げた。
 ペク・スンビン監督はインタビューで、知人の映画監督からかけられた言葉を明かした。「題材はパラレルワールドなのに、こんな語り口の韓国映画はあっただろうか。同じテーマでも、アメリカで10代を過ごした監督は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のような映画を撮るだろう。しかし、韓国でもっとも保守的な土地・大邱(テグ)で10代を過ごした君は、パラレルワールドをこんなふうに考えるんだな」と。
 監督自身は“パラレルワールド”という概念について、次のように話す。「主人公ドンジュンが憧れるカンヒョンは、いつも高い場所に登って歩きます。危険なのに。ドンジュンが『なぜ危ないことをするのか』と聞くと、『うんざりする人生に自分なりの反抗をしているんだ』と答える。足を一歩踏み外せば落ちるように、手を少し伸ばせば別の世界へ行ける――私はそれがパラレルワールドだと思っています。大きな決心をして行く場所ではなく、ほんの小さな選択の違いが別の人生の道筋を作る、そんなものです」。
 2021年のソウル国際プライド映画祭で初公開された際に、「後悔と悔恨の映画であり、パラレルワールドのもうひとりの自分の物語から生まれる温かな共感の映画」と説明していたペク・スンビン監督。
 「主人公ドンジュンは、当時の自分の姿が嫌で、いつも違う自分を夢見ていた10代の少年。別の宇宙にもう一人の自分がいて、自分を支えてくれた友人がいる。そんな時、その友人に大きな出来事が起こり、助けられなかった後悔が、それぞれ異なる運命を生みます。映画ではその運命を3つのパラレルワールドとして描きます。後悔をどうにかして正そうとするひとりの物語であり、若い頃にはできなかったことを、年を重ねてからやっとその友人のためにする物語でもあります。最終的に、自分の後悔の底にいるのは“あの人”であり、この長い旅の終わりは、“あの人”に会うための旅路でもあるのです」と話している。
 観客に向けては、「映画を観たあと、自分が別の選択をしたらどんな人生だったかを考えてみてほしい。その想像が、これからをもっと懸命に、そして愛をもって生きられるきっかけになると思うからです。観客のみなさんにも、それを感じてもらえたらうれしいです」とメッセージを送っている。
 
                    
 
                                            
 
                         
                        









