
【映画】
舘ひろし「挫折はジャンプの準備」富山刑務所で笹野高史と熱い講話 映画『港のひかり』ロケ地から感謝状
映画『港のひかり』(公開中)に出演する舘ひろし(主演)と笹野高史が19日、富山市の富山刑務所を訪れ、受刑者を対象に講話を行った。同作は2023年11~12月に石川・富山両県で撮影が行われ、富山刑務所もロケ地として使用された。同刑務所の招きにより、出演者による異例の講話が実現した。
【あ増】富山刑務所から感謝状を受け取った舘ひろしと笹野高史
講話の冒頭、舘は「映画『港のひかり』の撮影でここ富山刑務所をお借りし撮影させていただきました。撮影にお邪魔したのは、2023年の12月、雪の降る日でした。私は普段刑事役が多いのですが、今回は皆さんと同じ立場を演じさせていただきました。本当に印象的だったのは皆さんの所内での歩き方です。当初台本に所内を歩くシーンは無かったのですが、皆さんの姿を見て急遽シーンを追加しました。今日は本当に貴重な機会であると感じております」と、撮影当時を振り返った。
笹野も「とてもとても恐縮しているのですが…皆さんが何かを感じていただければ良いなと思っています」とあいさつした。
俳優として長く活躍してきた舘・笹野。2人は俳優としての歩みや挫折、支えとなった人物について語った。
舘は「私は今75歳です。俳優デビューしてから50年になります。本当にあっという間だと感じています。映画は1人でできるものではなく、さまざまな人が力を合わせて作り上げるものです。皆様の支えがあってこそ、今の私がいると痛感しています」と感謝の思いをとともに、「長く俳優を続けられたのは、いつも自分が100%できたという記憶がなく、今度はもっとうまくできる気がするという気持ちでい続けることができたからだと感じます」と語った。
さらに、師である故・渡哲也さんから「お前には華がある」と励まされた経験を紹介した。
「私が俳優としてこれからやっていけるかどうかというときに、TVドラマ『西部警察』で渡さんと初めてご一緒しました。撮影が始まってしばらくしたときに渡さんが『ひろし、お前には華がある』と言ってくれました。本当に大きな自信となりましたし、その言葉を頼りに今までやってきたような気がします。『西部警察』の撮影中、私が何度NGを出そうが怒ることはなく見守ってくれましたし、『ひろし、芝居なんて上手くならなくていい。お前自身でやれ』と言葉をかけてくれたんです。今私がこうしているのは全て渡さんのおかげだと思います」
笹野は「俳優はオファーが無いと続けることができない仕事なんです。それはつまり自分1人じゃ何もできないということ。もちろん家族にも助けられてきました。もう77歳になりましたが、せりふが覚えられなくなるまでは続けたいと思います」と意欲。
俳優という仕事のやりがいを聞かれると、「“人の人生を変えてしまうこと”です。以前ジャズトランぺッター役を演じたのですが、その作品を見たある方が実際にジャズを仕事にしているんです。映画に触れた人の人生を変えてしまう可能性がある、影響を与えてしまう仕事なんだと感じる出来事でした。俳優という職業にプレッシャーを感じましたし、逆にやりがいを感じました」と語った。
挫折について問われると、舘は医師一家の長男に生まれ、医学部受験に二度挑戦して失敗した経験を明かし、「家族の期待に応えられなかった挫折感は大きかった。ただ、挫折というのは次にジャンプするための準備だと思うんです。ただ立っているだけでは高く飛べませんが、一度沈み込んでジャンプすることでより高く飛べる。挫折を糧により高く飛ぶことができると考えています」と受刑者にエールを送った。
笹野は俳優として主役を演じることを目標に懸命に努力していた時に演出家から「脇で光るタイプだ」と言われ、落ち込んだことを告白。「ショックと悲しみから涙で一晩枕を濡らしました。やっぱり役者をする以上は主役を演じたいですから。でも決めたんです。考え方を変えて、日本一の脇役になろうと。カメレオンのようなどんな役でも演じることができる俳優になろうと決意を新たに頑張ることにしました」と話した。
本作で舘が演じた三浦は、裏の世界で生きてきたかつての人生を捨て、ひっそりと孤独に漁師として暮らしていた中、盲目の少年と出会って変化していく人物。笹野は孤独な三浦を見守る荒川役を演じた。
舘は「自分のために生きることは素晴らしいことです。ただ、自分ではない他の誰かのために生きることはもっと素晴らしいことであり、美しいことです」と作品に重ね、「男っていうのは弱いものだと思います。弱い男が、それでも強くあろうとする男がそこにいることが、すごく大事なことなんだと思います。私は強くあろうとする男でいたいと考えています」と熱を持って語った。
作品にちなみ2人に光を与えてくれた人物について問われると、舘は「やっぱり渡哲也さんですね。とにかく渡さんと出会えたことが私の人生の全てのような気がします」 と大先輩に感謝を伝えた。笹野は「渥美清さんです。まだ俳優として駆け出しの頃に渥美さんが声をかけてくれて、芝居をほめてくれました。そこから一緒に芝居を見て、食事に行くようにもなりました。心の師匠のような存在です」と親交があったことを明かした。
講話の最後に、2人は受刑者へ激励の言葉を贈った。舘は「強くなくていいんです。強くなろうとしてください」と語り、笹野は「待っている方のためにも、どうかお身体を大事にしてくだい」と呼びかけた。
講話終了後、舘と笹野は富山刑務所から感謝状を受け取った。












