
【エンタメ総合】
『ばけばけ』佐野史郎、朝ドラに縁なく「もう出ないんだろうな」 出演オファーに大喜び
俳優の高石あかり(※高=はしごだか)主演を務める、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土 前8:00 NHK総合 ※土曜日は1週間の振り返り/月~金 前 7:30 NHK BS、BSプレミアム4K)。江藤安宗役の佐野史郎がコメントを寄せた。
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――今回、初の朝ドラ出演になります。決まったときの感想を教えてください。
島根県・松江市出身で、これまでも『だんだん』や『ゲゲゲの女房』など島根を舞台にした朝ドラは何本かありましたが声がかからなかったので、「もう朝ドラには出ないんだろうな」と思っていました(笑)。でも、今回『ばけばけ』のお話をいただき、このためにこれまで出演することがなかったんだと思いましたね。
僕は小泉八雲のひ孫の小泉凡さんの監修のもと、奥様の祥子さんのプロデュースで小泉八雲の朗読を18年続けているのですが、昔から小泉八雲とセツのドラマをいつかやりたいという話をNHK松江局でもしていたので、今回『ばけばけ』の制作発表があった時は、みんなも喜んでいましたし、僕もお声がけいただけてうれしかったです。
――演じられる江藤安宗は、どんな役ですか?
江藤の直接のモデルではありませんが、小泉八雲を教師として招聘(しょうへい)した籠手田安定さんは、滋賀・新潟・島根の知事を務められた立派な方で、武術の達人でもあり、質実剛健のイメージを持っていました。だから、台本で最初に江藤という役を読んだ時は、えらくとぼけた人だなと(笑)。でも、島根をこよなく愛し、西洋近代文明をいち早く取り入れるところは、ちゃんと押さえられていますね。
実は当時の知事は国から遣わされていて、籠手田さんも長崎出身。出雲ことばはほとんど話さなかったと思います。ですが、松江の人間である僕が知事役を務めることもあり、ドラマでは松江出身の島根愛の強い人物像の設定となりました。地元の人に「変な出雲ことばだ」と言われるのは嫌なので、実は相当プレッシャーを感じています。
近代化を促していきたいんだけど、異国の人に思いを寄せる娘のリヨのことは心配という、混迷していた時代の中で近代化推進と伝統を重んじる価値観を同時に持つ人物だとも思います。僕にも娘がいるので心情がわからなくはないし、フィクションと現実が重なるような気持ちになったり…。小泉八雲の朗読を続けていることも含めて、『ばけばけ』というドラマを生きるだけでは収まらない、現実とフィクション、現代と明治の時代を同時に生きているような感覚でいます。
――小泉八雲を長年朗読されてきた佐野さんから見て、『ばけばけ』という作品の印象はいかがですか?
僕は研究家ではないけれど、それなりに小泉八雲に関する書籍を読んできているので、大体の流れは把握しているつもりです。それでも、知らないような深いところを掘り下げていて、すごくしっかりして筋が通っている。もちろんフィクションだから事実と違ったりデフォルメしたりしている部分もありますが、本質から逸脱することはありません。ある程度、ヘルンとセツのことを知っている人でも、このドラマを見たら、「そこまでやるんだ!」という感じは、お受けになるのではと思います。
実際のセツさんがどんな方だったのかはセツさんが記した『思ひ出の記』などから想像するしかないのですが、怪談や本を読むのが好きな、いわゆる「怪談オタク女子」的な感じがしています。もしご存命であったら、きっと仲良くなれるんじゃないかな(笑)。そんなセツをモデルにした松野トキに、高石さんのあの大らかな感じがこのドラマにおいてピッタリだなと感じています。
ヘブンを演じるトミーさんは、よく研究なさっているなと思います。実際のヘルンさんを見たことがあるわけではありませんが、たたずまいはもちろん、その気性といいますか、決して優しいだけの男ではない強面(こわもて)なところも表現されていて、流石にロックバンドFranKoを率いているだけのことはあるなあと敬服しています。
西田千太郎がモデルの錦織を演じる吉沢亮さんは、芝居を交わすたびに、その正直で真っすぐな姿勢に惹(ひ)き込まれてしまいます。錦織が抱える後ろめたさや引き裂かれるような思いは、実は影の主役というか、近現代の日本が抱えてきた歴史の闇を代弁しているようにも感じています。
――『ばけばけ』の見どころ・視聴者の方へのメッセージをお願いします。
『ばけばけ』の登場人物は、みんなが誰かを思いやっています。今、自分の権利や立場を主張してばかりで、相手を攻撃するようなことが増えているように感じることも少なくありませんが、価値観が変化していく中で、人にとって大切なものとは何かということを改めて問いかけている二人の物語であり、二人を取り巻く登場人物たちも葛藤しています。その答えは簡単には出せないものかもしれないけれど、現実を「怪談」というフィクションとして捉えることができれば、救われることもあると思います。
今回のテーマは、価値観の違う者同士がどうやったら一緒に共存できるのかということを諦めずに生きていきませんか?という問いかけだと思います。江藤を演じながら、役柄と自分自身という葛藤とも重ねて、常にそのことを問われ続けているように感じています。そのことを視聴者の方々とも共感できたらと思っています。
松江出身の俳優として、また江藤知事としても、視聴者の皆さんに古(いにしえ)よりの歴史の残る松江に興味を持っていただき、松江を訪れていただけたるようになったらうれしいですね。












