
【アニメ】
漫画表現、キャラの表情は手が大事 『カグラバチ』作者が学んだ『ヒロアカ』の魅力【堀越耕平×外薗健の特別対談】
漫画『僕のヒーローアカデミア』作者・堀越耕平氏と『カグラバチ』作者・外薗健氏の特別対談【後編】。「キャラクターの手を描くのが嫌いだったんですけど、『キャラクターの表情が一番よく表れるのは手』といったお話をされていたインタビューを読んでから、手の描写にもこだわり始めて。今では手を描くのが好きになりました」と語る外薗氏に堀越氏は「めちゃくちゃ上手に描けていると思う」と応じた。
【画像】ヒロアカ作者絶賛した『カグラバチ』戦闘ページ
堀越氏は1986年生まれの愛知県出身。2006年に『ヌケガラ』で第72回手塚賞佳作を受賞、2007年に「赤マルジャンプ」に『テンコ』が掲載されて読切デビューを果たす。翌2008年同誌に『僕のヒーロー』掲載。2010年に『逢魔ヶ刻動物園』で「週刊少年ジャンプ」連載デビュー。2012年に『戦星のバルジ』を連載後、2014年より『僕のヒーローアカデミア』の連載をスタートさせ、2024年に完結させた。
外薗氏は2000年生まれの大阪府出身。2020年に『炎天』で第100回手塚賞準入選。「ジャンプ GIGA 2021 SPRING」に『さらば!チェリーボーイ!』、「ジャンプ GIGA 2021 SUMMER」に『CHAIN』、「週刊少年ジャンプ」で2022年に『まどぎわで編む』、『ロクの冥約』を掲載。初の連載作品『カグラバチ』を「週刊少年ジャンプ」にて2023年よりスタートさせ、2024年8月に「次にくるマンガ大賞2024」コミックス部門1位などを受賞した。
■外薗健『ヒロアカ』で学んだ漫画表現「キャラクターの表情が一番よく表れるのは手」
――外薗先生は初めて『ヒロアカ』を読んだ時、どのような感想を持ちましたか。
外薗:初めて『ヒロアカ』を読んだのは高校生の頃で、勧めてくれた友達に「おもろいわぁ」って言った記憶があります。
堀越:良かったー(笑)。
外薗:ちょうど雄英体育祭が終了する頃のお話でした。当時は漫画を描いていたわけでもないので、純粋にお話や絵の上手さを楽しんでいましたね。僕は漫画をそんなに読んできたわけではないんですけど、『僕のヒーローアカデミア』や『NARUTO-ナルト-』、『呪術廻戦』は単行本が出るたびに買っていました。
堀越:嬉しいです。でも『カグラバチ』は、作風的には『NARUTO-ナルト-』の影響が強いから、全然ジャンルの違う『ヒロアカ』がそんなに好きだなんて思えない(笑)。
外薗:『ヒロアカ』の話をするたびに、堀越先生からは「君が『ヒロアカ』を好きなわけないじゃん」みたいなことを言われますよね(笑)。たしかに『NARUTO-ナルト-』の影響は大きいですけど、『ヒロアカ』も大好きです。
――漫画家になられてからは、『ヒロアカ』の見方が変わってきたところはありますか。
外薗:キャラクターの性格や特徴を表現する手法はもちろん、絵の描き方もめっちゃ勉強させてもらっています。僕は最初、キャラクターの手を描くのが嫌いだったんですけど、「キャラクターの表情が一番よく表れるのは手」といったお話をされていたインタビューを読んでから、手の描写にもこだわり始めて。今では手を描くのが好きになりました。
堀越:めちゃくちゃ上手に描けていると思う。『カグラバチ』の手で一番好きなのは、「居合白禊流」を構えた時の座村の手。千鉱が構えた時もそうだけど。
外薗:ほんとですか。ありがとうございます。細かい機微はめっちゃ大事にしています。
■『ヒロアカ』の魅力は「読者の感情に沿った演出の描き方」
――外薗先生が考える、『ヒロアカ』の一番の魅力は何だと思いますか。
外薗:僕が一番すごいなと思うのは、読者の感情に沿った演出の描き方ですね。例えば雄英高校を飛び出したデクをA組のみんなが引き戻そうとするシーンがあるじゃないですか。飯田君がデクに追いついて、その手を掴むシーン。コマ割りやセリフなど、全ての要素を駆使してどのキャラクターも取りこぼさずにあのシーンを描き切ったのはすごいなって思います。登場キャラクターたちの感情と読者の感情が、一緒に「グワッ」って高ぶるようになってますよね。
お茶子が校舎の上から叫ぶシーンも、モノローグや各キャラクターの視線・動きで読者の感情を高めつつ、大きな縦のコマを使って、叫ぶ前のお茶子の振りかぶりをしっかり見せる。そしてめくりでお茶子に叫ばせてうずくまるデクを描いている。読者を置き去りにしないような見せ方に、漫画家としての上手さが詰まってるなって思います。
――外薗先生は『ヒロアカ』のどのキャラクターが一番好きですか。
外薗:ミリオかな。治崎とのバトルがめちゃくちゃ心に残っています。敵の幹部を一瞬で倒すんですが、その後に個性を消されてしまっても足掻き続けて……その展開がかっこよすぎて最高っす。いい漫画って、コミックスで読んでいると「あの作品のあの巻が最高!」って巻があるじゃないですか。『ヒロアカ』の17巻はまさにそれですね。
――好きなシーンもミリオの戦闘シーンですか?
外薗:そうですね。でも他にも好きな回があって。僕は堀越先生の表情の描き方もよく参考にさせていただいてるんですけど、物語終盤でお茶子が泣くシーンがあって。あの表情にはかなり衝撃を受けました。顔がくしゃくしゃになっているけど、可愛さも残ってるという、絶妙なバランス。キャラクターの感情ってだいたい眉間のしわとかで表現しがちなんですけど、この時のお茶子はまぶたの微妙なシワとかもリアルに描かれているんです。『ヒロアカ』って、どちらかといえば漫画的な表現が多いじゃないですか。そのバランスを崩さずに、本当にリアルな表情を描き出していて、すげえって思いました。
■堀越耕平『カグラバチ』魅力は「かっこいい」の追求 毎週の見せ場は「良い所でもあり、弱点でもある」
――堀越先生は『カグラバチ』の第1話を読んでどんな感想を持ちましたか。
堀越:『カグラバチ』は自分の中の「かっこいい」を追求して、ちゃんと漫画として出力できているな、と思いました。普通、最初の連載作品は「連載会議を通す」っていう目的が優先されて、自分の中のこだわりみたいなものを後回しにしがちなんです。そうすると、どんどん「自分が思っている原初のかっこよさ」が置き去りになっちゃう。
でも『カグラバチ』は、「自分の中のかっこよさ」を一番前に据えたまんまの作品だったから、すごいなって思いました。千鉱がテーブルの上にのって敵を斬るシーンを、真上から映すコマがあるんですけど、ストーリーを語るだけなら必要ないんですよ(笑)。でもそこを省かず、「ここがかっこいいんだよ!」って読者に伝えることを大切にしている。この人はちゃんと自分がある人だと思いました。僕にはできないな(笑)。
――『カグラバチ』と言えば決めゴマの構図が特徴的ですが、構図はどのように生み出しているのでしょうか。
外薗:あまり構図についてロジカルに考えたことがないので、説明するのが難しいんですが……決めゴマの構図を決める時は、まずはその場面のロケーションを決めて、「この状況で面白く見せるにはどうしたらいいんだろう」と考えていると思います。それから自分の中でビビッとくるまで何パターンかラフを作りますね。あと、映画が好きなので、自然と構図にも映画の影響が出ていると思います。
堀越:天才ですね。見せ場となるコマの構図には、「これはほかの漫画ではやってないぞ」っていう、企みがあったりするんですか。
外薗:それはあります。「漫画では見たことないぞ」っていう映画などの映像のイメージを、漫画に落とし込む感じですかね。
――堀越先生から見た『カグラバチ』の魅力とはなんでしょうか。
堀越:やっぱり見せ場となるカットの画面作りと、シチュエーションですかね。例えば、最近掲載された第86話は落ち着いた内容だったのですが、その中で唐突に斉廷戦争の様子が見開きで描かれていて、「ただ大人しいだけの回にはしないぞ」っていう意思を感じました。
外薗:見せ場がないと、自分の中で「大丈夫かな」って怖さが出るんですよね。『カグラバチ』は物語の展開が早いので、大人しい回をやっちゃうと一気に盛り下がっちゃうかなって……。読者が『カグラバチ』に期待しているのも、刺激のある見せ場だと思っているので、どこかにそういったカットを入れたいなと思っていました。
堀越:これは『カグラバチ』の良い所でもあり、弱点でもあると思ってるんですけど、毎週毎週、フリからオチまでしっかり組み立てるんですよ。すごく丁寧で読みやすいんですけど、前の週の最後の引きでめちゃくちゃ盛り上がっていたところが、次の週の頭の「フリ」の部分でリセットされ、もったいなく感じることもあ












