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さだまさし、『風に立つライオン基金』の設立10周年にしみじみ 地震のあった能登半島へ1億円以上の寄付
『風に立つライオン オブ・ザ・イヤー2025』の贈賞式が12日、都内で開催。運営する『風に立つライオン基金』の理事長を務めるシンガー・ソングライターのさだまさし(73)が登壇した。
【集合ショット】めっちゃ嬉しそう!いい笑顔を浮かべるさだまさし&受賞者ら
さだが設立した公益財団法人『風に立つライオン基金』は、設立10周年を迎えた。顕彰事業は、設立から毎年夏に開催している『高校生ボランティア・アワード』と、2023年度から新設された『風に立つライオン オブ・ザ・イヤ―』を両輪としている。『風に立つライオン オブ・ザ・イヤ―』で贈られる賞は、主に海外で活動する団体・個人を表彰する「柴田紘一郎賞」と、国内で活動する団体・個人を表彰する「鎌田實賞」の2つの賞となる。今年の「柴田紘一郎賞」はNPO法人Piece of Syria(ピース・オブ・シリア)、「鎌田實賞」は岐阜県総合医療センター新生児内科医師の寺澤大祐氏が受賞した。
さだは冒頭にあいさつし、「まだ力不足のところが多々あるんですが、それでももう10年経つのかなという思いと、まだ10年しか経っていないんだなという思いがあります」としみじみ。設立当初の思い出も。2015年8月に立ち上げ、9月には茨城県などで豪雨災害があった。「海外で頑張っている日本人の医療関係者や教育者を応援しようという思いで立ち上げた」こともあり、国内での災害の場合にどうするか悩んだという。それでも「とにかく行こう」と現地に赴いた。当時あったのは100万円。同行した泉谷しげるからは「お前、屋根のひさしすら直せねぇじゃねぇか」と怒られたというが、避難所で遠慮しがちな被災者と「ステーキを食べましょう」と提案。「我々なりの支援の仕方が、もしかしたらあるんじゃないか、と。巨額な規模ではできなくても、手で渡すような支援ができたらいいんじゃないか、と。ここで腹をくりました」と振り返った。
現在はボランティアグループが支援を行い、その後に「必要なものは後でライオンが補填する」という流れになっているという。「公益財団法人になって、もう長い。公益は責任も大きいですけども、信頼があるもんで。能登の震災だけでたくさんの方々からの義援金、寄付金を合わせまして、私共の小さな財団で能登におそらく1億円以上の支援はさせていただいています」と語った。「我々がいなくなっても、この思いと活動が続いてくれるように」と『高校生ボランティア・アワード』で表彰している若き世代に期待していた。
贈賞式後にさだは取材に応対。「我々の力は、まだ小さい。小さいなりにやれることはやってきた実感を持った10年だったと思います」と述懐。「やっぱり頑張っている人へ『あなたは素晴らしい』と褒めたい、というのが我々の財団の仕事。シリアで頑張っている、岐阜で小さな子どもたちのために頑張っている人がいることを伝えたい」と熱い思いを語った。そして「これがつながって10年先、20年先が楽しみ。僕らももう晩年に差し掛かっている。どうにか次にバトンをもらってくれる人を探して、この運動がずっと続くようにしたい。その礎をどうやったら作れるのかに心を砕いています」と次世代の旗振り役の登場を楽しみにしていた。
■風に立つライオンオブ・ザ・イヤー
2023年度から日本国内外で公共の利益のために奉仕し、社会に貢献した個人・団体を表彰する「風に立つライオンオブ・ザ・イヤー」を新設。同賞は、国内外で命や平和を守るために献身的に活動している日本人や日本の団体を表彰するもので、永久名誉顧問である柴田紘一郎医師の名を冠した「柴田紘一郎賞」と、同法人の評議員で精神的な支柱とも言える鎌田實医師の名を冠した「鎌田實賞」。前者は主に海外で活動する個人や団体に、後者は日本国内で活動する個人や団体に贈られる。
柴田紘一郎賞:NPO法人Piece of Syria(ピース・オブ・シリア)
代表理事は中野貴行氏。1981年8月18日生まれ。Piece of Syriaは「シリアをまた行きたい国にする」ことを目標に、平和構築・復興の土台となるシリアの子どもたちへの教育支援と、シリアの文化的な魅力を伝えることを通して平和教育を行う団体。創設者の中野貴行氏は、青年海外協力隊として平和な頃のシリアで活動し、現地の人々の暮らしに溶け込みながら生活する中で、シリアの人たちの美しい生き方に感銘を受けた。活動先の村で、中野氏の存在によって「夢が持てるようになった」と語る少女に出会い、その少女は「将来、子どもたちの夢をかなえられる学校を作りたい」と夢を語った。しかし、2011年に内戦が始まり、少女の住む村が過激派に占領され、小学校の校庭が処刑場になったことを知る。中野氏は2015年に中東・欧州10カ国でシリアの人々や支援団体に話を聞き、「子どもたちの夢をかなえる学校を作る」と語る青年と出会ったことをきっかけに、2016年にPiece of Syriaを設立。青年と協働で教育支援活動を開始した。現在、シリア国内外で幼稚園の運営、補習校の運営、小学校の校舎修復、教師研修、心のケアセンター運営を行い、これまでに5万人以上の子どもたちに教育の機会を届けている。
鎌田實賞:寺澤大祐氏
岐阜県総合医療センターの新生児内科医師。1979年11月4日生まれ。重い病気を抱えて生まれた弟が長期間保育器で治療を受ける姿を見守った経験から、「赤ちゃんを治す医者になる」という思いを抱き、新生児医療の道へ進む。現在も多くの新生児の救命に携わっている。また、日本国内でありながら生まれた場所で生じる医療の不平等、障害児者とその家族を支える制度の不備、成長過程における支援の不足、災害弱者となる妊産婦や小児への対応能力の弱さなど、子どもを守るべき社会に存在するさまざまな“壁”を実感してきた。小児科医としての専門性と、障害者家族としての当事者視点を生かし、新生児のドクターヘリ搬送体制構築、在宅障害児者の支援体制構築、子どもたちへの命の教育など、医療福祉教育を横断した取り組みを実践し、国内にその理念や仕組みが広がっている。活動のモットーは「救ったいのちを、救いっぱなしにしない社会をつくる」こと。救命だけでなく、その後の人生を支え続ける仕組みづくりに力を注いでいる。この原点と使命感は、弟の存在、そして「君には未来を変えていく力がある」と励ましを寄せ続けた恩師・柴田紘一郎氏からの言葉に支えられている。











