【エンタメ総合】
令和のシンデレラストーリーは“心の回復”とともに?『その天才様は偽装彼女に執着する』作者が語るキャラの魅せ方

『その天才様は偽装彼女に執着する』第2巻


 累計470万DL突破し、電子コミックランキング1位も獲得した話題作『その天才様は偽装彼女に執着する』。偽装関係から始まる“溺愛×ドロドロ”の温度差、こじらせ天才・郁が見せるギャップ、アラサーのリアルな悩みを抱えた女性の“再生物語”が、多くの読者を惹きつけている。SNSでは「天才様沼」「心が救われる」といった声も続出。今回は作画・村山犬先生と原作・ちかふじ先生に、キャラ設計のこだわり、漫画になる過程での創作協業、そして“スマホ世代に刺さる物語”を生み出すための工夫など、制作の舞台裏について話を聞いた。



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■「溺愛とドロドロが同じくらいの配分の作品を作りたい」 読者の心を掴むストーリーが独自性に



 『その天才様は偽装彼女に執着する』は、彼氏の浮気と職場トラブルで、30歳目前に彼氏ナシ・職ナシとなったヒロイン・星野凛が、婚活中に出会った無神経な男・若槻郁の家事代行をするところからストーリーが始まる。ひょんなことから“偽装恋人”の契約を結んだ二人は、仕事として始まった関係のはずが、郁の強い独占欲と溺愛、そして凛の低い自己肯定感が絡み合い、偽りの恋が次第に本物へと変わっていく…という展開。“天才様”を体現する男性・郁の言動や行動は、不器用と言わざるを得ないが、愛情表現だけは異常にストレートで重め。「君には価値がある」とストレートに伝え、守り支えようとする姿にヒロインの心も回復していくことがストーリーの肝となっている。



ーー“偽装彼女”という設定の中で、どのような感情の化学反応を描きたかったのでしょうか?



【ちかふじ】恋愛感情を抱いていなかった男女が、偽物の恋人を演じたり、ひとつ屋根の下で過ごしたりすることで、お互いへの想いに変化が起こっていく…といった部分を描きたくて、この題材を取り入れました。



ーー物語の一側面を見ると、不憫女子のシンデレラストーリーという構図で、古くから恋愛漫画として人気のジャンルだと感じます。過去に有名な作品もある中で、いかに独自性を持たせていったのですか?



【ちかふじ】近年、ドロドロとした人間関係を描いた作品が流行っているので、溺愛とドロドロが同じくらいの配分の作品を作ってみようと制作を始めました。それが結果として独自性につながったのかもしれません。



ーー凛や郁のキャラクター性では、どういった部分にこだわりましたか?



【ちかふじ】私自身がギャップのあるキャラに魅力を感じるので、郁に関しては、「イラっとする言動をしてくるけど意外とやさしい」や「ひねくれているのに素直」など、とにかくギャップがたくさん出せるキャラという部分にこだわって制作しました。



ーー凛のほうは?



【ちかふじ】読者さんに感情移入をしてもらえるように、「30代前後の女性に降りかかりがちなリアルな悩みを持ちつつも、好感が持てる女の子」を意識して制作しました。



ーー「郁さんの凜だけに見せる溺愛ぶりがたまらん」という声が多いですが、キャラクターの“ギャップ描写”で意識していることは?



【ちかふじ】パッションで書いている部分もあるので、自分の中でこれという明確なルールはないのですが、突拍子のない行動を取らせたり、マイナスな行動をさせたりした後に、それを覆す挽回ムーブをさせることで落差をつける、などは意識することが多いかもしれません。



■「心の動きを丁寧に表現する」 原作を絵にしていく際に最も強く意識していること



ーー原作・ちかふじ先生、作画・村山犬先生というコンビでの制作プロセスは、どのように進めているのでしょうか?



【ちかふじ】オンライン中心でやり取りをしています。お互いの認識がずれないように、基本的にはお渡ししたシナリオで村山先生が疑問に感じた箇所は必ずご質問いただくようにしています。ネームに関しては、シナリオと少しイメージが違った場合でも、「ネームの温度感のほうがいいな」と思った場合は、それに合わせてセリフを変更したりもしています。



【村山】基本的にはオンラインです。ネーム制作時は、シナリオの中でどこが重要なシーンなのか、また、シーンごとの温度感(例えば、ギャグなのかシリアスなのか)を正確に把握できるように気をつけています。



ーーちかふじ先生は「自分の物語が漫画になっていく過程を一読者として楽しんでいる」とコメントされています。村山先生は、原作を“絵にする”上で、どういったことを最も意識していますか?



【村山】キャラクターの表情や仕草などで、セリフの感情がより伝わるように描くことを重視しています。特に、心の動きを丁寧に表現することは、常に意識したいと思っています。



ーー「キャラの魅せ方」や「感情表現」など、特に印象に残っている意見交換やこだわりを教えてください。



【ちかふじ】表情を意識したいシーンに関しては、「捨てられた子犬っぽい顔で…」や「恋に落ちた顔で!」という謎のオーダーをすることもあります。村山先生にはご迷惑をおかけしていますが、いつも応えてくださるので助かっています…。



【村山】個人的な好みなのですが、男性キャラが悩むシーンで顔を隠す構図が好きで…。ネームの際に、郁に顔を手で覆うポージングを無意識にさせてしまうことが多く、その度にやんわりと「顔を見せてほしいな…」という相談を受けます。気をつけようと思ってはいます…。



■「漫画を読んでいない層にもアプローチができる」 電子発でコミックを作ることのメリット



ーー本作は電子配信から火がつき、年間ランキング1位を獲得しました。スマホ世代の読者に刺さった“読み心地”や“テンポ感”は、どう意識していますか?



【ちかふじ】近年は、動画やさまざまなコンテンツを倍速で見る方が多いと聞きます。なので、時代に合わせて、やや早送りに感じるくらいのテンポを意識するようにしています。



【村山】いろいろな電子マンガをもともとよく読んでいたので、その中でも自分が特にお気に入りの作品のテンポ感を参考にしたりして制作にあたっていることが多いです。



ーー昨今は「電子コミック先行→紙単行本化」という流れが定番化しています。電子発の漫画づくりには、どういった可能性を感じていますか?



【ちかふじ】電子媒体で作品を発表することで、ネットを使用している不特定多数のユーザーさんに作品を届けられるのかなと。また、気軽に読めるので、普段漫画を読んでいなかった層にもアプローチができるといった点にも可能性を感じています。



ーー紙の単行本に対しては、どういった想いがありますか?



【ちかふじ】近年は電子がメインになり、紙単行本化のハードルが上がっている時代なので、こうしてみなさまの手元に形として残る紙媒体を出していただいたことはとてもありがたいと思っています。「電子で読んだけど手元に残る形で置いておきたい」と思っていただけるように、今後もいい作品を作っていけたらと思います。



ーー“地雷系男子”“執着愛”“年上年下”など、女性向け恋愛漫画のトレンドも多様化する中で、本作はどんな立ち位置を目指していますか?



【ちかふじ】タイトルにも入っているので、やはり「執着もの」ですかね…!



ーー今の恋愛漫画読者は、単なる“恋愛”よりも“自己肯定”“心の回復”を求めているという分析もあります。本作はまさに“再生型ヒロイン”作品として読まれていますが、その点についてはどう感じますか?



【ちかふじ】自身の周りでも、30代前後に人生の問題が起きて悩んだり傷ついたりした方が多い印象だったので、ヒロインにはその要素を取り込みつつ、話の展開は「もしこういった希望がある展開になっていたら…」という夢を詰め込めば楽しんでもらえるかなと考えていました。今作を読んで心の回復を感じてくださっているのならばうれしく思います。



ーーSNS上では「郁さん沼」「凛ちゃんが尊い」などとファンの熱量が高いです。読者の反応で印象に残っているものは?



【ちかふじ】郁がトリッキーなキャラなので、「ヒーローの変人ぶりが面白い」という感想をいただけたときは、とても安心しました。また、漫画からしばらく離れていた方が、「この作品をきっかけに再び読むようになった」と言ってくださっていたのは印象に残っています。



【村山】郁の表情はこだわって時間をかけて描くことが多いので、「男キャラの顔がいい!」というコメントは、個人的にもとてもうれしく印象に残っています。



ーーコメント欄などで読者同士の考察や共感も盛り上がっていますが、そういったことはどのように見てい

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