【映画】
75歳で夢の映画監督デビュー “シニア・ノワール”『枯れ木に銃弾』全国順次公開へ

映画『枯れ木に銃弾』2026年2月20日よりシモキタ - エキマエ - シネマ K2ほか全国順次公開(C)ビジョンワン


 75歳の司慎一郎監督による長編映画監督デビュー作『枯れ木に銃弾』が、2026年2月20日より東京・シモキタ - エキマエ - シネマK2ほか全国で順次公開されることが決定した。



【画像】自転車の二人乗りも、銃を所持していることも違反ですが



 司監督は、かつて映画監督を志しながらも家庭の事情で夢を断念し、一般企業に就職。その後、数々の試練を乗り越え経営者として成功を収め、人生の終盤に差し掛かった今、「本当にやり残したことは何か?」という問いに立ち返ったという。



 その答えとして浮かび上がったのが、自分を支えてきた家族や仲間への感謝、そして、がむしゃらに働いてきたにもかかわらず排除されていく社会への怒りだった。自身の人生と真正面から向き合い、75歳にして初めてメガホンを取ることに。



 商業長編映画として完成させた本作は、“老人たちの視点”でフィルムノワールを現代に更新する新ジャンル〈シニア・ノワール〉に挑んだ意欲作。



 東京の下町で暮らす山西喜一郎を演じるのは鷲田五郎、妻・あかね役には田所ちさ。ふたりは、長く“普通に生きてきた”夫婦として、静かな老後を送っていた。解禁されたメインビジュアルには、返り血を浴びた夫婦が並び立ち、喜一郎が拳銃を構える姿が写し出されている。



 画面を横切るように走る“ひび割れ”の表現とともに添えられたコピーは、「普通に生きてきた――昨日までは」。それは、平凡な日常がある瞬間を境に崩れ去ること、そして“普通”であることさえ許されなくなった人々の現実を、象徴的に突きつける。



 高度経済成長を支えてきた世代が「老害」「コスパが悪い」と切り捨てられ、現金主義も通用しない機械化された社会の中で居場所を失っていく現実。「自分たちは、もう価値のない存在なのか?」――その問いを抱えながら、ふたりは“最後の反抗”へと踏み出していく。



 司監督は本作を、単なる犯罪劇ではなく、“老人のためのノワール映画”として位置づけ、「シニア・ノワール」と名付けた。体力も衰え、社会からも遠ざけられた老人たちが、それでもなお人生と向き合い、“花を咲かせようともがく姿”を、フィルムノワールの文法で描き出す。70代で初の長編映画に挑むという監督自身の歩みが、この物語に確かなリアリティを与えている。



 70代で初の長編映画に挑むという監督自身の歩みが、物語に確かなリアリティと説得力を与えている。年齢に夢の限界はない――『枯れ木に銃弾』は、そのことを声高に主張するのではなく、ひとつの映像と物語として静かに差し出す作品だ。

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