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“トイレの芳香剤”イメージをいかに払拭するか? サワデー50周年、“暮らしを整える香り”へのシフトと勝算

ホームフレグランスとして室内で使える「Sawaday 香るStick」


 1975年に日本初の“トイレ用芳香剤”として誕生した「サワデー」。発売から50年が経った現在、香りは単にニオイを消すためのものではなく、心身を整え、暮らしを彩る存在へと役割を広げている。無香料志向の高まり、香りの多様化など、「香り迷子」とも言われる現代。いい香りの定義とは、どのようなものなのか? 日本人と香りの関係性の変遷、そしてこれからの香りの価値について「サワデー」担当者に話を聞いた。



【写真】トイレの芳香剤だった「サワデー」、懐かしいレトロなデザイン



■「香りの価値をまだまだ届けきれていない」 香りにおいて重要なポイントとなった“機能性”



 今回50周年の節目を迎えたが「まだまだ“香りの価値”をお客様に届けきれてない課題がある」と話す「サワデー」ブランドマネージャーの馬場さん。



「皆さまのおかげで、『サワデー』は50周年を迎えることができました。一方で、香りの価値をお客様に届けきれていないことが、50周年を迎えた現在でも課題だと感じています。香りって、どうしても嗅がないことには分からないですし、市場には多くの香りが溢れているので、単なる“いい香り”という印象で終わってしまう方が多くて。その香りがある先で、“暮らしがこんなに良くなるんだ、生活に彩りが生まれるんだ”という部分まで、今までコミュニケーションできていなかったので、その価値を多くの人に届けたいと考えました」(小林製薬・サワデーブランドマネジャー馬場さん)



 『サワデー』はトイレの芳香剤として1975年に発売された。当時の香りは、レモン、金木犀、ラベンダーなど。当時は室内での喫煙が当たり前で、まだ汲み取り式トイレの家庭も存在していた時代。生活空間には、今よりもはるかに多くのニオイがあふれていた。



「当時はトイレのニオイがかなりきつい時代だったので、それをしっかり消臭できる強めの香りで、なおかつ爽やかな香りを意識していました。強めの香りで生活臭を包み込むような設計でしたね」(馬場さん)



 強い香りを被せて悪臭を目立たなくするというのは、当時の価値観としてはとても合理的な選択だったといえる。だが、時代が進むにつれ、人々の香りとの向き合い方にも変化が訪れる。シンプルな生活を求める人が増え、いらないものは置かないという考えを持つようになっていった。その考えに伴って「香りもいらない」ニーズが増えていき、無香料を好む層も生まれた。



 ただ、無香料を好む人は、香りがあるものを嫌っているというわけではなく、実際のところはシーンごとに柔軟に活用している人が多いという。



「無香料が時代によってトレンドになる時期があります。無香料が流行る時期と、香りが流行る時期が交互に来るイメージです。今はどの部屋でも使える無香の商材が増え、市場も伸びてきている。そして無香料の消臭剤を使っている人でも、同時に香りがする芳香剤を使っているという方が多いです。場所や自分のいる空間など、シーンに合わせて使い分けることが一般的になっています」(馬場さん)



■トイレ芳香剤のイメージを脱する”ホームフレグランス宣言”、「お部屋で使えるように形を変えた」



 2015年には「Sawaday香るStickパルファム」が発売された。このタイミングで、“スティック型”の芳香剤が急速に広まり始める。長らくトイレの芳香剤として活用されてきた同ブランドだが、ここで芳香剤だけのイメージから脱したい意図があったという。



「2015年の40周年を機に「ホームフレグランス宣言」を行い、ブランドの名前も「サワデー」から「Sawaday」に刷新し、新たなスタートを切りました。平成では、華やかでおしゃれな香りのニーズが高かったのですが、令和ではリラックスするために芳香剤を使う人が増えていることもわかり、より香りに「癒し」が求められるようになってきています。角がない、丸みのある香りの印象のことを我々は“ラウンド感”と呼ぶのですが、そういったリラックスや癒しを提供できる香りを、お部屋で使えるように形を変えていきました」(馬場さん)



 香りの作り方も以前と比べると、“作品を作るような感覚”に変わってきているという。香水の作り方をより意識し、トップ・ミドル・ラストと時間の経過によって香りの段階を楽しめるよう設計。香りづくりの過程では泥臭い作業も多く、例えばフルーツをテーマとした香りを作る際には、まずはその果実をスーパーで購入し、実際に食べてリアルな味や香りを知るところから始めるという。



 そして近年は、香りに“機能性”を求めるところまで、技術革新が進んでいる。同ブランドが今年新しく発売した新商品「Sawaday+ Woman's Aroma(ウーマンズアロマ)」は、気持ちのゆらぎを考えた香料配合となっており、サンプリングでも圧倒的な人気を集めていた。



 「50周年のイベントでサンプリングをした際、最初にサンプルがなくなったのが『ウーマンズアロマ』でした。このシリーズは“機能性芳香剤”として打ち出していて、業界でも新しい動きだと思っています。香水でも研究されているホットなテーマです。『ウーマンズアロマ』は、冷えに悩まされる女性も多いと思うので、“温かい印象の香り”を目指して、ハーブやスパイスなどの要素も参考にしながら香りづくりを進めました。これ以外にも、眠りにやさしい香り、心が安らぐ香りなど、研究がどんどん進められています」(小林製薬・サワデー研究担当・片岡さん)



■多様化によって選ぶことができない、“香り迷子”を生み出してしまう正体



 香りやライフスタイルはどんどん多様化していて、無香料を好む人もいれば、華やかな香りやリラックスできる香りを好む人もいる。さらには、トレンドの香りもある中で、自分が求める香りが何なのか分からない“香り迷子”になってしまう人も少なくない。そこには、脳や感覚の問題も潜んでいるという。



「五感の中で嗅覚以外の感覚は、脳で言語化処理をされて記憶や感情に変換されていくのですが、嗅覚はその言語化の部分を通らないんです。だから、香りは言語化できない情報となり、どの香りを使ったらいいのかがわからなくなってしまう人が多いんです」(馬場さん)



 では、香りとの向き合い方やライフスタイルの変化、香りの多様化などにより、香りに対する人々の考え方もさまざまな形を見せている今、「いい香り」とは一体どういったものなのだろうか。



「僕は心地よくて安心できる香りだと思います。嗅覚の役割は大きく2つあり、ひとつは危険を察知する役割、もうひとつは居心地の良さや、動物に代表されるようなマーキング的な役割があるとも言われています。自分の家に帰ってきた時に嗅ぎなじみのある香りを嗅ぐことで、居心地の良さとか、解放感とか、そういった“安心感を得られる”ところがいい香りの役割であり、定義だと考えています」(馬場さん)



 日本人は他者の目を気にする人がとても多く、“清潔さ”を重んじる文化であることが、香りの開発でも大きなポイントとなっていると、研究担当の片岡さんはこだわりを話す。



「日本は、他国に比べて清潔感と他者目線に対してすごくセンシティブな部分があると思います。私が香りづくりで大事にしているのは、あくまで“清潔感のある香り”の範囲内で、香りづくりをすることを意識しています。そういうエッセンスをどんなテーマの香りであれ、入れるように意識しています。香りを嗅いで清潔感があると感じてもらえたら、清潔な人だと他者に思わせることができる。そういった部分が、いい香りの定義にもつながってくると感じています」(片岡さん)



 50周年を迎えたサワデーは、「いい香りの、その先へ」をスローガンに掲げている。だが現在のところ、芳香剤の使用率は約46%。まだ半分以上の人が、“香り”を生活に取り入れていない現状がある。



「今のストレス社会を過ごす人々には、日々精神的なストレスがあり、不安を抱えている方も多くいらっしゃいます。そういった時代の変化もあって、芳香剤をはじめとした香り製品は、リラックスや落ち着くために使われてるようになっています。今までのコミュニケーションでは、あくまでいい香りであることを限定して伝えてしまっていて、その先の可能性を多くの人に届けきれてなかったという課題があると思っています。



 機能性芳香剤に代表されるように、香りによってこんなに生活が彩るんだということを、コミュニケーションや製品そのものを通じて多くの方々により具体的に伝えていきたいです。今の使用率は約半数が未使用という状況ですので、そこを少しでも引き上げていくことを目指して取り組みたいと思います」(馬場さん)

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