【エンタメ総合】
漫画家・江口寿史氏、自身のイラストめぐる騒動に謝罪 「トレース」についても私見

江口寿史氏 (C)ORICON NewS inc.


 漫画家・江口寿史氏が30日、自身のXを更新し、自身が手掛けたイラストをめぐる騒動に言及した。



【画像】対応追われた企業…江口寿史の過去イラスト



 長文の文書を公開し、騒動のいきさつをつづった。



 「今年10月3日の自身の私の投稿に端を発したSNS上での一連の混乱と騒動につきまして」とし、「各所との調整が長引き、自分の言葉でお伝えするのにここまで時間を要してしまいました。この間ご心配をおかけした皆様には誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。



 事の発端について「この秋の『ルミネ荻窪中央線文化祭』のポスター制作に際し、金井球さんのInstagramへ投稿されたご自身の横顔の写真を、ご本人に対する配慮なく無断で参考にしてしまった事につきましては、ポスター発表直後にご本人からの指摘がルミネに届きまして、ただちに DMにてご本人に連絡を取って謝罪し、その後弁護士を通じて双方合意の上、和解しております」と説明した。



 続けて「この件でご迷惑をおかけした金井球さん、ルミネ、関係者の皆さま、イベントを楽しみにしてくださっていた皆様に改めて深くお詫びいたします。また、この件をきっかけとして過去の作品にも飛び火してしまい、ご迷惑をおかけしてしまった各企業の皆様、関係者の皆様にもお詫びいたします」と関係者に向けても謝罪した。



 なお、この件を発端に起きた騒動について「トレース、トレパク問題の方に拡がり、更に大きなものになっていきました」と説明。「雑誌の写真やネットの画像を参考にしたり、トレースと呼ばれる表現手法自体を『悪』だとする声やご意見も多数ありました」とし、「ここでこのトレースというものに対する私の思うところを少し書かせてください」とつづった。



 改めて“トレース”について「絵を描く上での正当な段階のひとつであり、『トレース=盗用行為すなわち悪』、『トレース=すべてトレパク』という一面的なものでもありません」と言及。「私の場合は下描きの最初期の第一段階と考えています」とした。



 続けて「雑誌の写真でも自分で撮った写真でも絵にする時にまずトレースはしますが、それはあくまで「アタリ」程度のものです。アタリというのは紙の中でどの位置に絵がくるかのレイアウトやトリミングを決める作業で、トレースという第一段階はそこまでです」と説明。「そのアタリの上にさらに下描きを何重にも重ねていきます。それは参考にした写真から人物の構図、輪郭などを修正して自分の絵に変換していく作業です」とし、「写真の上に薄い紙を置いて最初から最後までなぞって描くことをトレースだと思っている人が多数いらっしゃるようですが、絵を描いたことのある人なら誰でもおわかりだと思いますが、それでは決して自分の絵にはなりません」と伝えた。



 また、江口氏のイラストについてSNS等で「パソコンのトレース機能を使えば誰でも描ける」「AIで写真から線画を抽出し、色をつけてるだけ」との声が挙がっていたとし、「極端な意見もありましたが、私はそういったツールは一切使っていません。アナログの手描きであれば問題ないというつもりはありませんが、私の場合、下描きからペン入れはすべてアナログの手描きです。着色作業にのみPhotoshopを使っています」と説明した。



 自身の作品について「『描くというより作るもの』とは常々公言してきた事でありますが、この下描きの段階はまさにイラストの設計図を作るような作業です。下描きが完璧に出来れば、ペン入れは全作画工程の中で私にとっては一番楽しい『描く』時間です」と思いを説明。改めて「線の走りやゆらぎ、思いがけない偶然の線はその時々の自分にしか出せないものであり、線あってこそ『江口寿史のイラスト』になるのだと思っております」と伝えた。



 また、写真を参考に描くことについても、「イラストよりも漫画を多く描いていた頃からやってきたことで、業界的にも過去から現在にかけて普通に行われてきたという認識です」と説明。「もちろん作品集、写真集として出版された写真から描く事は当時からアウトだと考えていましたが、雑誌の写真は情報であり自分で撮った写真と同じく、絵を描くための『資料』という認識が長くありました。正直なところ、それが問題にされるという認識は持てていませんでした」と伝えた。



 さらに「しかし、世の規範や価値観、道徳観などは時代によって変わっていくものです。今回の一件の最大の問題は私にその事への認識と配慮ができていなかったことです。40年以上も前のおおらかな時代の、20代の頃の自分の未熟な認識のまま無自覚に変わらぬ方法で製作を続けていました」とつづった。



 法的な話は“素人の身”として避けるとしつつ、今回の件については、「専門の弁護士にも相談させていただき、たとえば、ポージングやファッションのルック・スタイリングを参考にするだけでは写真の著作権を侵害することはありませんし、イラストに変換されていることなどにより、当該イラストを見た人がご本人であることを特定できない場合には肖像権・パブリシティ権といった権利を侵害することもないようです」と説明。「もちろん、ケースパイケースで判断されるものですので、権利侵害になるトレースも、ならないトレースもあると思いますが」「しかし、仮に法的に問題ないとしても、参考にした写真には被写体の方がいて、知らないところで自分の姿や輪郭に似た絵が描かれたら、不安を感じたり、気分を害されたりする方もいる。ある意味、そんな当たり前のことにも十分な配慮ができていませんでした」と吐露した。



 この約20年を振り返り、「私はイラストの仕事をし過ぎたのかもしれません。そこに慣れや、怠慢や、何を元に描いても『江口寿史の絵』になっていればいいのだという驕りも生まれていたのかもしれません。そこは大いに自戒を込めて認識を改めていかねばなりません」と反省。「今回の件では改めて自らの表現手法を振り返り考える機会をいただきました。皆様からいただいた厳しいご意見も真摯に受け止め教訓とし、これからの活動に生かしていきたいと思っています」と伝えた。



 最後に「私はこれからも絵を描いていきます。まだ何一つ成し得ていないからです。私の絵は今後もまだまだ変わっていくでしょう。皆様、どうか良いお年をお迎えください」と締めくくった。



 江口氏が手掛けたイラストの騒動については、今年10月上旬、ルミネ荻窪『中央線文化祭2025』(10月18日・19日開催)の告知ビジュアルが発端。その後、いわゆる“トレパク”騒動がもちあがり、デニーズ、Zoff、セゾンカード、熊本ワインファームなど、関わった企業が対応に追われていた。

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