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“隠す部位”から“大切にする場所”へ…デリケートゾーンケア、30年の軌跡

ベタつかないクリームタイプのフェミニーナ軟膏(画像提供:小林製薬)


 女性器の悩みや症状があったとしても、それを公に言うのは「恥ずかしい」「隠すべきもの」とする風潮がまだまだ根強かった1995年、日本初のデリケートゾーン用かゆみ止め薬「フェミニーナ」が発売された。“陰部”と呼ばれ、タブー視されていたその部位に「デリケートゾーン」という新たな呼称を与え、ケアの必要性を訴えてきた存在でもある。発売から30年、女性特有の悩みへの向き合い方は、“隠すべき部位”から“大切にしなければならない場所“へと変わりつつある。時代背景やターゲット世代の価値観の変化など、デリケートゾーンケアの30年の変遷について、小林製薬の担当者に話を聞いた。



【写真】汗や蒸れ、乾燥からのかゆみ、尿かぶれまで…全世代をケアするフェミニーナ3種ラインアップ



■タブー視されていた“陰部”の悩み、「そんな薬は使いません」建前の裏にあった声なきニーズ



 1995年当時、女性の体に関する話題は、家庭でも学校でも公の場では語られにくく、特に性器やその周辺については“隠すべきもの”という意識が根強かった。医学的には「外陰部」と表現される部位も、日常では「陰部」と呼ばれ、あからさまに口にすること自体がはばかられる空気があった。



 今では、多少口にしやすくなった生理や性交痛といった話題もタブー視されがちで、かゆみや痛みといった悩みを抱えていたとしても、それを誰かに相談するのは“恥ずかしいこと”とされていた。



 そんな中、小林製薬の担当者が注目したのが、アメリカで既に普及していたデリケートゾーン用の医薬品。アメリカで多くの女性が使っているのなら、日本でも同じように悩んでいる女性がいるはずと考え、日本女性に対して「陰部にかゆみがありますか?」というアンケート調査を行った。しかし、返ってきたのは意外な結果だったという。



「皆さん口を揃えて、『そんな悩みはありません』とか『そういった薬があっても使いません』と回答されたんです。ニーズは絶対にあるはずなのに、なぜ「悩みはない」との回答ばかりなのか。そのギャップに当時はすごく驚いたと聞いています」(フェミニーナブランドマネージャー 孫さん/以下同)



 疑問に思った担当者は、約100店舗の薬局を回り、聞き取り調査を行った。すると、女性が店長を務めている薬局で、ようやくその実態が見えてきた。



「女性店長さんは、『お客様から陰部がかゆいという相談を受けることはあります。ですが、皆さんすごく恥ずかしそうで、自分だけが悩んでいると思っていらっしゃる様子なんです』と話をしてくれたと言います。このお話から、悩みがあったとしても、悩んでいることすらも言いたくない状況であることがわかりました」



 そこから、改めて調査をしてみたところ、半数くらいの女性が「デリケートゾーンにかゆみがある」と回答。そこで、「あなただけじゃない」「みんな悩んでいる」というメッセージを、商品を通して届けるとの想いとともに、1995年に「フェミニーナ」が誕生した。



■「陰部」から「デリケートゾーン」へ 商標を独占せずに言葉を広げたワケ



 潜在的なニーズはあったため、「フェミニーナ」の発売後の売れ行きは好調だったという。



 タレントを起用したテレビCMでは、「恥ずかしくない」「いやらしくない」世界観を徹底。さらに、ピンクと白を基調とした化粧品のようなパッケージにすることで、“あのCMの商品”と指名すれば、悩みを明かさずに買えるようになったという。



 「フェミニーナ」の象徴的な功績のひとつともいえるのが、「デリケートゾーン」という言葉を生み出したこと。当時使われていた「陰部」という言葉にはポジティブなイメージがなく、隠すべき場所といったニュアンスがあった。



「この商品を発売するにあたり、隠したり恥ずかしがったりするのではなく“ケアすべき大切な場所”ということをしっかりと伝えていきたいと考えました。たくさんの言葉や造語を出して何回も議論をして、デリケートに扱わないといけないけど、もっとオープンにもしていくべきというニュアンスが伝わる『デリケートゾーン』という言葉を選定しました」



 「デリケートゾーン」の商標は取得したが、あえて独占はしなかった。誰でも使えるようにして、むしろみんなでこの世界観を作っていきたいとの想いがそこにはあったという。



「“デリケートゾーン”という言葉を広げていきたいのに、弊社しか使えませんとなると、なかなか言葉も考え方も伝わらないと思いました。まずはこの言葉を広げていかないと、当たり前にはなっていかないと感じたので、制約などは一切設けずに今日までやってきました」



■認知度が高まったこその課題も…若年層に残る“恥ずかしさ”という壁



 しかし、“デリケートゾーン”という言葉が広まり、「フェミニーナ」の認知度も高まるにつれて、思わぬ課題が浮かび上がってきた。



「当初はチューブにも大きく『フェミニーナ軟膏』と書いていたのですが、認知度が上がるにつれて、そのチューブがポーチに入っていると『デリケートゾーンにかゆみがあるんだと思われて恥ずかしい』との声をいただくようになりました。そのため、チューブの表記をカタカナから英語の筆記体に変更し、何の薬かわかりづらくする工夫をしました」



 パッケージの変更もあり、30代以降の女性にはポーチに入れていても使用しやすく、デリケートゾーンを当たり前にケアするという認識が広がりつつある。一方で、皮脂分泌が多く蒸れやすいため、かゆみの起こりやすい10代後半〜20代の若年層には、まだ「恥ずかしい」という気持ちが根強く残っているという。



「家庭でも差が出ていて、親子間で健全に デリケートゾーンの話ができる家庭もあれば、恥ずかしくて全く会話ができないという家庭もあります。学校のカリキュラムでも、避妊や生理といったワードは入ってきていますが、デリケートゾーンのケアはまだ入っていないんです」



 若い頃から適切なケアをしていかないと、年齢を重ねても悩みが続いてしまうことがあるというデリケートゾーン。SNSで何でも可視化される現代であっても、10代後半から20代の若年層こそ、自身の悩みを同世代と共有しづらい環境にあるのが現状だ。



 こうした状況を同社は課題と捉え、デリケートゾーンの基礎知識やケア方法、トラブル時の対処法を教える啓発授業の開催にも取り組んでいる。



■言葉だけが先行する“フェムケア”に警鐘「性別問わずにデリケートゾーンに向き合う意識を」



 ここ数年、“フェムケア”という言葉が急速に広がりを見せており、生理やデリケートゾーン、女性ホルモンといった、従来“語られなかったもの”に光が当たるようになり、ケア商品の選択肢も一気に増えた。



 一方で、「フェムケア」という言葉だけが独り歩きし、曖昧なエビデンスや根拠の乏しい情報をもとにした商品・サービスが乱立。中には、高額なケア商品を売りつける詐欺まがいのビジネスも報告されるなど、過熱するトレンドの裏で、消費者が混乱し、疑念を抱くような事例も少なくない。



 小林製薬が懸念しているのは、フェムケアが“一過性のトレンド”として消費されてしまうことだという。



「自分の体を正しく理解し、選択肢を持つためのきっかけとして、フェムケアを当たり前の習慣として捉えてほしいと思っています。生理については男性の理解も進んでいる一方で、デリケートゾーンのケアについてはパートナー間でもまだ話しにくい現状があると思います。最近はメンズ脱毛をする方も増えているので、性別問わずにデリケートゾーンに向き合う意識が広がればいいなと考えています」



 また、“デリケート”という言葉が、かえって「触れてはいけない」というイメージを強めてしまうため、“プライベートゾーン”といった表現を推すような声も一部では見られるという。



「様々な考え方があるとは思いますが、弊社としては“デリケート”という言葉の意味合いとして、その部位を過剰に特別視をしたり、腫れ物として扱うニュアンスを持たせたいわけでは決してないんです。デリケートゾーンの皮膚はまぶたよりも薄いと言われているので、とても丁寧なケアが必要。そういう大切な場所なんだということをこれからも伝え続けていきたいです」



 10代後半~20代の皮脂分泌が活発な時期の汗や蒸れから、40代の更年期やホルモンバランスの変化による乾燥からのかゆみ、さらに60~80代の尿もれによる尿かぶれまで、いまや、全世代をケアする商品となっている「フェミニーナ」。年齢や性別を問わず、誰もが当たり前にケアできる時代に向けて、これからこの分野はどう進化していくのだろうか。



「デリケートゾーンのケアやかゆみケアが、顔や髪を洗うのと同じくらい定番化・習慣化していくことを目指してい

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