
【映画】
福島の避難家族を記録したドキュメンタリー『三角屋の交差点で』4月公開決定 99歳の母と息子夫婦の3年間を描く
東日本大震災と福島第一原発事故を経て、災害公営住宅で暮らすことになった99歳の母と、その息子夫婦の3年間(2018~21年)を記録したドキュメンタリー映画『三角屋の交差点で』が、4月4日より東京・ポレポレ東中野を皮切りに、福島ほか全国で順次公開されることが決定した。
【動画】ドキュメンタリー映画『三角屋の交差点で』予告編
監督は、2011年以降、福島を拠点に映像制作を続けてきた山田徹。「山形国際ドキュメンタリー映画祭 ヤマガタラフカット!2019」および「山形ドキュメンタリー道場7」に参加。道場7で出会ったベトナム人映画作家・PHAM Thi Haoと共同編集を行い、プログラム終了後にはベトナム・ハノイにて編集作業を重ね、本作を完成させた。
昨年、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2025」でジャパン・プレミアを迎え、「第17回座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」コンペティション部門正式出品。さらに、渋谷ユーロスペースで一夜限定開催された「山形ドキュメンタリー道場 in 東京」では満席を記録し、8年以上の制作期間を経て劇場公開が実現した。
物語の舞台は、震災から7年後の福島。浪江町から避難を余儀なくされた一家は長年暮らした家と仕事を手放し、いわき市の災害公営住宅で新たな生活を送っている。記憶が薄れゆく中でも故郷・大熊町への想いを抱き続ける99歳の母・テツ。母を敬いながらも介護の多くを妻に委ねる息子・タケマサ。そして、家族の中で当然とされてきた役割を担い続けてきた妻・シゲコは、自身の生き方と向き合い始める。
本作が見つめるのは、震災や原発事故そのものではなく、その後の時間の中で続いていく暮らしの手触りだ。土地を離れ、制度に支えられながら生きることになった一家の暮らしは、安定と引き換えに、これまで当然だった役割や価値観を静かに揺るがしていく。本作は、その戸惑いや葛藤を、結論づけることなく記録し続けたものだ。
山田監督は撮影を振り返り、「東京で育った私は、家族や土地との距離を比較的自由に選び取ってきた立場から、この一家の撮影を始めました」と語る。当初は、息子の姿を「母を気遣う誠実な一家の主人」として捉えていたというが、撮影を重ねる中でその印象は変化していったという。
「介護の偏りや、家の中に漂う沈黙。外では穏やかに振る舞いながらも、役割から逃れられない姿は、地方社会に根づく家父長制や男社会のあり方とも重なって見えました」と語り、同時にその息子自身もまた、役割に縛られ葛藤する存在として浮かび上がってきたという。
さらに、「震災によって土地や制度が崩れたあと、人はどこへ行けばよいのか。自由はどこまで祝福で、どこから不安に変わるのか。撮る側である私自身もまた、その問いを引き受ける3年間でした」とコメントしている。
震災から15年を迎える2026年。土地を失ったあと、家族はどこへ向かうのか。役割が揺らいだとき、人は何を拠り所に生きていくのか。本作は「家」とは何か、「私」とは何かという普遍的な問いを観る者に投げかける。











