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もっとも建設的なキャラクターの活用法? 平成を一世風靡したPostPetモモの今
まだインターネットやメールが普及していなかった1990年代後半、電子メール用ソフト「PostPet(ポストペット)」のキャラクター「モモ」が登場し、一世を風靡した。ブームが一旦落ち着いた後、2015年にはソニー銀行のキャラクターとして起用。2025年には新バージョン「感動モモ」が「So-net 光 10ギガ」のCMに登場し、またも注目を集めている。まさに30年という長きに渡り活躍する長寿キャラクターとなっているモモ。その立ち位置や変遷をどのようにたどってきたのか。同社にとってのモモの存在意義について、担当者に話を聞いた。
【写真】おやつ「せんべい」をあげた直後のモモ
■インターネット黎明期に登場 コミュニケーションの楽しさを伝えて大ヒット
ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(現:ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)が販売するポストペットが登場したのは1997年。当時のインターネット環境は、現在のそれと大きく異なっていた。当時を知る菊池大さんによると、「当時はパソコンの一般家庭普及率が30%、インターネットの一般家庭普及率が9%」だったという。
「10人に1人しかインターネットをやっておらず、多くの人たちが『インターネットって何なの? 便利なの?』というような時代でした。まずはインターネットの楽しさ、面白さを多くの人たちに伝えないことには普及しないだろうと思い、当時ソネットはインターネットの楽しさを伝えるための取り組みをたくさんやっていました。そうした中、『電子メールをもっと楽しくする』という取り組みとして生まれたのがポストペットでした」(菊池さん/以下同)
ポストペットとして最初に登場したのは、ピンクのクマのキャラクター「モモ」。これはポストペットの開発メンバーにより設立された会社・ペットワークスとソネットとの共同で開発されたという。
「ペットワークスの開発者の方が『テディベアがメールを運ぶ夢』を見たことがアイデアの元となっていて、そこからデザイナーが『メインキャラだからピンクにしよう』と。そこに愛情を込める意味で、”ペット”というワードを使いました」
モモはユーザーにメールを配達してくれる「電子メールクライアント」の役割を担っていたが、それだけでなく、ユーザーはモモにおやつをあげたり、部屋の模様替えをしたりと様々なコミュニケーションを取ることも可能だった。また今では当たり前となっている”課金”をすることもできた。
「ポストペットパークという場所に行くと、そこでおやつが配られたり、ペット同士の運動会も行われていました。サービス利用の加速度を上げたのが、ソフトを2枚組で売り出したことです。1枚は自分に、もう1枚はパートナーや友達に渡すなどして、カップルや家族など複数人で楽しめるよう設計していました」
当時としては画期的なサービスで「ここまでヒットするとは思っていなかった」(菊池さん)というほど予想外の大ヒットに。様々な楽しみ方がある中、最も人々に受けたポイントは「コミュニケーションが楽しかったこと」だと言う。
「ペットが『ひみつ日記』を書くんですよ。『今日は○○ちゃんのところに行った。すごく撫でられた。気持ち良かった』とか。当時、僕は彼女のポストペットを撫でるつもりが、操作を間違えて叩いていたようで。そしたらペットが彼女の家に帰って『今日菊池さんのところに行った。すごく叩かれた。悲しかった』と、ひみつ日記に書くわけです。すると彼女から電話がかかってきて『私のペットに何してくれるの!?』って(笑)。そういうコミュニケーションが楽しかったんだと思います。社内でも『うちのペットは、○○ちゃんのところで美味しいおやつをもらったみたい』『インターネットって楽しいね』なんて盛り上がっていると、別の人が『何の話?』と加わってきて、どんどんポストペットが広がるという。人と人の心がつながっていく、ホットなコミュニケーションだったと思います。モモは人の想いを届ける存在であり、インターネットが普及するための最初の役割を担うことができて良かったと思います」
■キャラクターが伝えた親しみやすさ「私たちはずっとモモと一緒に歩んできた感覚」
ポストペットのモモが一世を風靡した後、「たまごっち」などの育成ゲームや他の電子ペット系コンテンツなどが台頭。ポストペットブームは一旦落ち着きを見せたが、モモの存在が消えたわけではなかった。
「キャラクターとしてのモモを終わらせることは考えてなくて、ソネットの大事なキャラクターとしてずっと使い続けていました。今でも使っていますが、家庭量販店などに(モモの描かれた)のぼりやバルーンを置いておくと、子どもたちが『ピンクのクマだ。可愛い!』と寄ってきてくれます。ソネットの強みである親しみやすさ、楽しさ、信頼性を伝えられるという点で、私たちはずっとモモと一緒に歩んできた感覚です」
2015年、ポストペットのモモは、同じソニーグループであるソニー銀行に転職したと当時の取材記事などで話題に。ユーザーのお金を管理するキャラクターとして登場した。
「『MONEYKit』はインターネットバンキングの先駆けで、画期的なサービスでしたが、当時の人々は『インターネットで銀行? それ、便利なの?』といった反応でした。やはりインターネットを伝える際の役割としてキャラクターが必要だと思ったので、うちとしてもぜひモモを使ってくださいと。結局、当時のソニー銀行のみなさんも、みんなモモのことが好きだったんです(笑)。ポストペットは時代に合わせて少しずつデザインが変わっていますが、”インターネットを通じて人の想いを伝える存在”であるという根っこの部分は変えてはいけないと思っています」
■キャラクターを長く育てるには「愛をもって使い続けていく覚悟」が必要
同社は2024年10月より「So-net 光 10ギガ」のサービスを提供開始。その数ヵ月後、2025年2月に”感動モモ”というキャラクターが登場した。これは従来のモモに”感動して涙を流す”という要素が加わった、新スタイルとなっている。
「10ギガの超高速通信によってソニーグループの感動を届けたいという思いがあり、その象徴的な存在として”感動モモ”というキャラクターが誕生しました。ソネットがサービス開始から30周年を迎え、より感動を届ける存在でありたいという思いから、引き続き感動モモを活用していきます。ソニーグループは映画やゲーム、アニメ、音楽などのエンタメで感動を届ける存在であり、その象徴として、涙を流すキャラクターという形でやっていきたいと思います」(ソネット・高雄みづほさん)
昨年9~10月には感動モモと乃木坂46とのコラボCMが放送されたが、その頃から「またモモが出てきた」とファンの反響が見られたという。
「20~30年前にポストペットを楽しんでいらっしゃった方から『モモちゃん、まだ元気なんだ』というリアクションをいただけて、やはり愛していただけている存在なんだと思いました。私たちは感動モモで、Xを中心にSNSで運用していますが、そこで『このペット飼ったことある?』『モモの書いた文字とか見たことある?』といった投稿がかなりリアクションをいただいています。中には『ポストペットきっかけで結婚しました』というリアクションも。そのような投稿を見て、多くの方々が大切な人とのコミュニケーションでモモを使われていて、思い出として刻まれている部分も大きいんだなと、改めて思いました」(高尾さん)
「ポストペットはとても温かいコミュニケーションだったと思いますし、そうしたコミュニケーションが良かったなと今再認識されていると思います。初めてモモを見た人たちも『可愛い』と言ってくれますし、世代に関わらず幅広く受け入れられていると感じています」(菊池さん)
キャラクターを長く育てる上で、最も重要だと考えることは「キャラクターへの愛を社内でいかに持つことができるか」だと菊池さん。
「愛がないとダメだと思います。それと、やはり使い続けていく覚悟ですね。インターネットを通じて人の想いを伝える、ソニーグループの感動を伝える、といった軸をブラさず、ちゃんと時代の変化に対応し続けることが大事だと思います」(菊池さん)











