【映画】
“推し活”が動かすアニメ映画市場 それでもオリジナルが必要な理由【TAAF シンポジウム】

「東京アニメアワードフェスティバル2026」のシンポジウムに登壇した(左から)竹崎忠氏、伊藤智彦氏、飯塚寿雄氏、杉本穂高氏 (C)ORICON NewS inc.


 先日、都内で開催された「東京アニメアワードフェスティバル2026」(3月13日~16日)で、「オリジナル長編アニメーションを取り巻く環境の変化と未来」と題したシンポジウムが行われた。世界的ヒットが相次ぎ、アニメ映画市場が活況を呈する一方で、オリジナル企画の長編作品は苦戦も目立つ。配信の普及、観客動向の変化、映画館の役割の変容、そして業界の持続可能性まで、多角的な議論が交わされた。



【画像】2025年に100億円以上のヒットを記録した作品



 登壇したのは、トムス・エンタテインメントの竹崎忠氏(代表取締役社長執行役員)、アニメーション監督の伊藤智彦氏(『クスノキの番人』ほか)、松竹の飯塚寿雄氏(アニメ事業部長)映画ライターの杉本穂高氏(WEBメディア「Blanc」編集長)。司会はアニメ評論家の藤津亮太氏が務めた。



■配信時代が変えた“劇場版アニメ”の見られ方



 オリジナル長編アニメーションを取り巻く現状について、藤津氏は2025年に世界興収2000億円を突破した『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』などを例に挙げ、「アニメ映画のヒットが大型化する一方で、オリジナル作品は興収2〜3億円台にとどまるケースが多い」と指摘した。



 トムス・エンタテインメントの竹崎氏も、現在の映画市場は「二極化」が進んでいると分析した。



 「売れるものはものすごく売れるし、売れないものはまったく届かない。これはアニメ映画だけの話ではなく、映画全体、本や番組でも同じ傾向がある」



 その上で、日本アニメの劇場版が世界的に広がっている背景として、配信環境の整備を挙げた。



 「今は配信でシリーズをすべて予習できる。だから途中から始まって途中で終わるような劇場版でも、観客が自然に受け入れられる。好きな作品の続きを、メディアを問わず追いかける時代になっている」



 かつてはテレビシリーズの知識がなければ入り込みにくかった作品も、配信が前提知識を補完するようになった。その結果、劇場版アニメは“テレビの延長”ではなく、シリーズ体験の一部として定着してきたという。



■クオリティ競争の激化 “アクセルを踏まないと低いと言われる”



 また、竹崎氏は、『鬼滅の刃』以降、作品のクオリティ基準が急激に上がったと苦笑い。



 「観客は他作品にも同じレベルを求める。アクセルを踏まないと“クオリティが低い”と言われる状況になっている」



 原作者からも高水準の映像化を望まれるケースが増え、制作費と期待値の上昇が同時に進んでいるという。



 これに対し、伊藤監督は、そもそも映画館で求められる価値そのものが変化しているのではないかと語った。



 「テレビシリーズの一部を劇場で上映する形も含め、大画面と音響、共有体験があればそれが“映画”になっている。従来の形式にこだわっていると、取り残される感覚はある」



 その一方で、「クオリティのチキンレースには乗りたくない」とも率直に話し、「別の戦い方があってもいいのではないか」と問題提起した。



■『名探偵コナン』が象徴する“客層に合わせた進化”



 議論の中で象徴的な事例として挙がったのが、『名探偵コナン』シリーズの変化だった。



 藤津氏は、ここ10年ほどで洋画大作が落ち込む一方、日本のアニメ映画がそれに代わるエンターテインメントを提供する存在になってきたのではないかと指摘。なかでも『名探偵コナン』は、洋画大作並みのアクションやスケール感を取り入れながら、興行成績を右肩上がりで伸ばしてきた代表例だと語った。



 『名探偵コナン』を制作・プロデュースするトムス・エンタテインメントの竹崎氏は、シリーズ初期の劇場版が子ども向け、ファミリー向けの色合いが強かったが、シリーズを継続する中で、観客が成長し、大人になっていったことが大きな転機だったと説明する。



 「最初から見ていた観客が15年、20年と経つ中で大人になっていた。にもかかわらず映画の作りはやや低年齢層寄りのままで、そこに少しずれが生まれていた」



 そこでプロデューサー陣の若返りを図り、「一年に一度、スクリーンで体験するお祭り」としての劇場版へと舵を切った。脚本や演出も大人向けにシフトし、ハリウッド大作のような派手なアクション、音響、映像の迫力を強化。その結果、シリーズは再び大きく伸長した。



 さらに竹崎氏は、『コナン』の成功要因について、ミステリーだけでなく新一と蘭の関係を軸とするラブコメ的な魅力も大きいと分析。「この二人の関係が最後どうなるのか見届けたいという思いが、長期的な支持につながっている」と語った。



■映画館は“作品を観る場所”から“推しに会いに行く場所”へ



 観客の行動変化についても、興味深い議論が交わされた。



 松竹の飯塚氏は、自社の配給作品での経験を踏まえ、近年のアニメ映画では女性客の存在感が一段と大きくなっていると話した。とりわけ重要なのは、単なる“女性向け”ではなく、“推し活”の対象になるかどうかだという。



 「今のアニメ好きの女性客は、“推し活”の対象にならないとなかなか映画館まで来てくれない」



 杉本氏は、こうした状況をより踏み込んで表現した。



 「観客が映画作品そのものを観に来ているのか、それとも“推し”のキャラクターの晴れ舞台を祝いに来ているのか。その境界はかなり曖昧になっているのではないか」。



 その例として挙げたのが、「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズなどのライブ映画だ。物語の展開を追うというより、好きなキャラクターがステージで輝く姿を大スクリーンで体験すること自体が鑑賞動機となり、多くのリピーターを生み出してきた。杉本氏は、「好きなキャラクターに会いに行くことが日常の支えになっている観客も多い」と語り、映画館は今や“推しの晴れ舞台”、すなわち“推し活の最前線”とも言える場所になっていると分析した。



 藤津氏は、この変化を音楽業界のビジネス構造の転換と重ね合わせた。かつてCD中心だった音楽市場がライブ中心へと移行したように、映像分野でも“体験としての映画鑑賞”の重要性が高まっているという。特に応援上映が一般化したことで、「映画館がライブ会場のように受け止められる状況が生まれた」と指摘した。



 杉本氏もこれに同意し、応援上映の有無にかかわらず、キャラクターに“会いに行く”という動機は非常に強いと語る。その象徴的な例として『名探偵コナン』シリーズを挙げ、劇場での印象的な体験を紹介した。



 「初日に観に行った際、上映後に隣の女性客が『あと5回は絶対観る』とつぶやいていたんです。ミステリー作品であれば通常は一度観れば物語の結末はわかります。それでも繰り返し観たくなるのは、ストーリーではなくキャラクターに再び会いたいという気持ちが大きいからではないかと思いました」



 藤津氏はさらに、観客参加型のインタラクティブ映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』にも触れた。劇場内でスマートフォンによる観客投票でラップバトルの勝敗が決まり、48通りの展開と7つのエンディングが楽しめる仕組みがリピーターを生んだという。「キャラクターへの愛着を軸にした新しい映画体験が、映画市場の一つの柱になりつつある」と語った。



■オリジナル映画の難しさ “当てになるものが何もない”



 こうした状況の中で、オリジナル長編アニメーションは新たな難しさに直面している。



 伊藤監督は「原作がない作品は当てになるものが何もない」と語り、企画段階の不確実性と認知の広がりにくさを痛感しているという。



 「CMも流れていたのに、公開後に“伊藤さんが監督されたんですね”と言われることも多かった。アニメ業界の中ですら知られていないことがある。何より作品自体が知られにくいのが一番つらい」



 杉本氏は、「オリジナル映画の記事は読まれにくい。メディアもIPに乗っかりたいところがある」とメディア側もIP作品に依存しがちな“悪循環”を認めつつ、「映画祭など新たな評価の回路を整える必要がある」と語った。



■オリジナル映画は“すべて難しい” それでもヒットは生まれる



 飯塚氏は、オリジナル作品が跳ねる条件として、『超かぐや姫!』や『ルックバック』のタイトルに挙げながら、「何かしらのオンリーワンな価値観」が必要だと語った。



 「何かの模倣や劣化版ではだめで、新しい価値を感じられるものが必要。ただ、それが何なのかを見つけるの

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